北九州市立美術館分館で開催中の「森村泰昌モリエンナーレ・まねぶ美術史」に行ってきた。森村氏は絵画だけでなく様々な表現技法で自分を表現してきたアーティスト。今回の展示が面白いのは森村氏の美術史ということ。学生時代から、様々な芸術家の技法や表現方法に憧れ、模倣してきた過程を、インスパイアされた作品と森村氏が真似た作品を並べて展示しているところだ。学生時代に使っていたプラスティック下敷きにペイントしたもの、藁半紙、ノートに技法を真似て様々な試みをしている。ときに岡本太郎や横尾忠則にインスパイアされた大作を手がけ、曼荼羅の世界観に憧れ、ディートリッヒやモンローに扮した自画像を撮る。
ピカソだった最初からあんな絵じゃなかった訳で、年齢を重ねると共に作風が変化するのは当たり前。でも森村氏が試みた手法や真似た画家は数知れず。取り組むうちに自分の内面に籠もってしまったという細密画を前にしたとき、ここまでやったらオレなら気が狂う・・・とマジで思った。でもこうした実験的な表現方法の試みをやってこそ、いつか自分のやり方とすることができる。「すべての芸術は模倣から始まる。本日はようこそいらっしゃいモホー。」と言ったのは、清水ミチコ大先生だが、”真似て、学んで”自分を表現することは誰しもがすること。例えその作品が稚拙でもそれを自分の美術史として恥ずかしがらずに展示すること、実はそれこそが自己表現。
専門学校で仕事していた頃、グラフィックデザイン科の学生の作品をたくさん見てきた。この展示会、実はグラフィックを学んでいる学生こそ見るべきではなかろうか。「オレはまだまだいろんなものを見なくちゃいけない」「プロでもこんな時期があったんだよな」・・・観る人それぞれの思いはあるだろうが、これから自分が何を学ぼうか、挑むべきかという勇気をくれる展示会かもしれない。
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