1967年・香港 獨臂刀(One-Armed Swordsman)
監督=チャン・チェ
主演=ジミー・ウォング チァオ・チァオ ヤン・チーチン
「キル・ビル」の影響でショウ・ブラザース映画が再評価され、こうした香港映画の秀作(珍作も・・)が観られるようになったのは実に嬉しい。2005年の香港映画賞で選出された中国映画オールタイムベストなるものがあるのだが、この「獨臂刀」はなんと15位。上位にはウォン・カーウェイやホウ・シャオシェン、キン・フー、アン・リーが上位に並ぶ中での選出だ。それもそのはず、古典的ながらストーリーが実にしっかりとした秀作なのである。ツイ・ハーク監督で1995年にリメイクされているが、刀鍛冶の弟子の確執・・という設定にしっくりこないものを感じていた。リメイクが派手なアクションを中心に据えているのに対し、オリジナルはあくまでもドラマ重視。師匠と弟子の義理、勧善懲悪に徹した物語でリメイク版の納得できなかった部分がきちんと意味あるものになっていた。こりゃベスト20に入るのも納得だ。
この映画が優れているのは、単に復讐劇・活劇としての面白さだけでない。そこに武闘家であることの厳しさ、悲しみ、宿命がきちんと描かれている。従来の武侠映画や功夫映画は、悪を討ち、正義を貫くことに徹した娯楽作だった。復讐劇が多いのもそのためだ。この映画も同様に敵は徹底的に悪として描かれている。だが、武闘家として名をあげることで失ってしまうもの(幸福な家庭や家族)がこれほどにまでに切なく描かれた映画を僕はこれまでに観たことがない。ラストで刀を折って地に叩きつける師匠。その苦渋に満ちた表情は忘れることができない。そして何よりもジミー・ウォングの禁欲的なヒーロー像。それはますますこの映画の悲壮感を高めてくれる。
タランティーノもこの「獨臂刀」三部作はお気に入りの模様。ビルの秘書ソフィーが青葉屋で腕を斬り落される場面に影響がある、と単純に見ることもできる。まぁ、彼女は片腕で済まなかったが。それよりも「Vol.2」のラストシーン、復讐の為とはいえ、かつては愛した男と戦ったヒロインの泣き笑う忘れ得ぬ場面にこそ、この「獨臂刀」に通ずるスピリットは感じられないだろうか。戦う宿命をもった悲しみ。人並みの幸せを得られない戦う者の悲しみ。その悲壮感は、「獨臂刀」から受け継がれたものに思えてならない。
監督=チャン・チェ
主演=ジミー・ウォング チァオ・チァオ ヤン・チーチン
「キル・ビル」の影響でショウ・ブラザース映画が再評価され、こうした香港映画の秀作(珍作も・・)が観られるようになったのは実に嬉しい。2005年の香港映画賞で選出された中国映画オールタイムベストなるものがあるのだが、この「獨臂刀」はなんと15位。上位にはウォン・カーウェイやホウ・シャオシェン、キン・フー、アン・リーが上位に並ぶ中での選出だ。それもそのはず、古典的ながらストーリーが実にしっかりとした秀作なのである。ツイ・ハーク監督で1995年にリメイクされているが、刀鍛冶の弟子の確執・・という設定にしっくりこないものを感じていた。リメイクが派手なアクションを中心に据えているのに対し、オリジナルはあくまでもドラマ重視。師匠と弟子の義理、勧善懲悪に徹した物語でリメイク版の納得できなかった部分がきちんと意味あるものになっていた。こりゃベスト20に入るのも納得だ。
この映画が優れているのは、単に復讐劇・活劇としての面白さだけでない。そこに武闘家であることの厳しさ、悲しみ、宿命がきちんと描かれている。従来の武侠映画や功夫映画は、悪を討ち、正義を貫くことに徹した娯楽作だった。復讐劇が多いのもそのためだ。この映画も同様に敵は徹底的に悪として描かれている。だが、武闘家として名をあげることで失ってしまうもの(幸福な家庭や家族)がこれほどにまでに切なく描かれた映画を僕はこれまでに観たことがない。ラストで刀を折って地に叩きつける師匠。その苦渋に満ちた表情は忘れることができない。そして何よりもジミー・ウォングの禁欲的なヒーロー像。それはますますこの映画の悲壮感を高めてくれる。
タランティーノもこの「獨臂刀」三部作はお気に入りの模様。ビルの秘書ソフィーが青葉屋で腕を斬り落される場面に影響がある、と単純に見ることもできる。まぁ、彼女は片腕で済まなかったが。それよりも「Vol.2」のラストシーン、復讐の為とはいえ、かつては愛した男と戦ったヒロインの泣き笑う忘れ得ぬ場面にこそ、この「獨臂刀」に通ずるスピリットは感じられないだろうか。戦う宿命をもった悲しみ。人並みの幸せを得られない戦う者の悲しみ。その悲壮感は、「獨臂刀」から受け継がれたものに思えてならない。
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