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Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

白雪姫

2025-03-29 | 映画(さ行)


◼️「白雪姫/Snow White」(2025年・アメリカ)

監督=マーク・ウェブ
主演=レイチェル・レグラー ガル・ガドット アンドリュー・バーナップ

グリム童話の白雪姫は一般に知られている白雪姫のストーリーよりもずっと怖いものだと言われる。心も美しい白雪姫を妬んだ継母が魔手を伸ばす。そして白馬の王子様が彼女を救う。このストーリーをスタンダードとして定着させたのは、言うまでもなく1937年のディズニーアニメ版だ。

その実写版として製作された本作。ポリコレ配慮のキャスティング、主演女優のオリジナルをディスるような発言が世間を騒がせている。何に感動して育ったかは人それぞれだから仕方ないかもしれないけどねぇ。完成した作品にも批判的な意見、感想を多々見かける。世間が望む白雪姫のイメージとはかけ離れている、ということなんだろう。

近頃のディズニー作品を敬遠していたのだが、本作についてはあんまり世間が騒ぐから逆に興味が出てきた。監督は大好きな「(500)日のサマー」のマーク・ウェブだし。グレタ・ガーウィグが脚本…あれ?クレジットされてないやん🫤?

思いっきりミュージカルにシフトした演出のアレンジはなかなか。映画冒頭から舞台となる国とヒロインの両親の考え方、これまでの状況を歌で示す演出は、簡潔だけどしっかり観客に伝わる。この手際の良さは上手い。

そんな冒頭の好印象は先に進めば進むほど「あれ?」という空気に変わっていく。"吹雪の夜に生まれたから白雪姫"というナレーションに、まず唖然😮。この国が豊かであるのは、ダイヤモンドが採掘されているから。常春の国マリネラかよ(例えが悪いw)。冒頭の楽曲でも小人たちの鉱山での仕事でもギラギラした宝石たちが輝いている。庶民の豊かさの象徴までもが宝石で示されているように見える。分かち合う心が素敵な愛のある場所、みたいな歌が流れるのにそれでいいのかな。

白雪姫を森に連れて行って殺せとの命を受けた狩人。それまで質素な服装だった白雪姫が突然お馴染みの配色のドレスで登場する。作業の邪魔でしょ、それ。でもこの服装でないと白雪姫のお話にならない。CGで作られた動物たちの緻密さはすごいなと思うけど、7人の小人は妙に生々しくてちょっと怖い印象すらある。毒りんごを口にするまでの流れも、「食べると願いが叶う」ではなく「腹ごしらえをしな」だもの。そのりんごである必然性がないではないか。

そして白馬の王子様は登場しない。だから名曲「いつか王子様が」は流れない😩。これがいちばん残念。老婆が現れる場面の直前に、白雪姫が一瞬ハミングしてるようにも聴こえたが、エンドクレジットに曲名が出てないから僕の聴き間違いだろう。今の時代に、王子様を待つ受け身のヒロインは観客にウケないってことなのだろうか。姫が幸せになるという結末ではなく、王国を取り戻すために女王に立ち向かうのがクライマックス。

人の名前を覚えておくことは大切なことだな、という教訓は素晴らしいと思った。そこは大きな学び。うん。

自分を取り戻す物語が現代風だと言われればそれまでだけど、それは多くの観客が期待した白雪姫なんだろうか。そこは大きく異なっているように思えた。シアターを後にして、グッズ売り場を見渡す。白雪姫関連のグッズは、本作の肌の色をしたものはほんのわずか。並んでいるのは従来の色白でふっくらしたお顔の白雪姫がデザインされたグッズばかり。ほーらね。これも世間が求めるものとの違いがハッキリ出ている結果では。

改めてポスターを見る。コピーはこうだ。
"ディズニーの「白雪姫」から生まれた
 最高のファンタジー・ミュージカル"
そうか。ディズニーの「白雪姫」とは別物です、って宣言してるのだ。
じゃあ仕方ないのかなw🤨



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シビル・ウォー アメリカ最後の日

2025-02-17 | 映画(さ行)


◼️「シビル・ウォー アメリカ最後の日/Civil War」(2024年・アメリカ)

監督=アレックス・ガーランド
主演=キルステン・ダンスト ケイリー・スピーニー ワグネル・モウラ スティーブン・ヘンダーソン

アメリカ大統領選の度に、支持政党や人種をめぐる対立や分断が極めて激しくなる。海を挟んだわが国にいても心配になるくらいだ。そんな大統領選の年に向けて映画人も様々な作品を発表してきた。2024年に製作されたのは「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランド監督による本作。アメリカで内戦が勃発する物語だ。選挙対立もヒートアップする中、11月の一般投票前に日本公開された。アメリカ社会の分断が深刻に伝えられる中、話題性もタイミングも絶妙だったと言えるだろう。外国映画不振と言われる中でそれなりにヒットしたようだし。

ワシントン陥落との情勢も聞かれる中、大統領に歴史的なインタビューを目論んだジャーナリストのジョエルと女性写真家リー。リーの師匠とも言える老ジャーナリストのサミーと父のフィルムカメラを手にしたジェシーと共に、彼らは一路ワシントンを目指す。

道中で様々な危機に直面するのだが、中でも強烈な印象を残すのが、死体の山を前に赤いサングラスの兵士が銃をブッ放す場面。
「どこの種類のアメリカ人だ?」
国内で対立する州の出身だけでなく、アジア出身というだけで銃弾が飛ぶ。個人の好みだけの問題でだ。対立が人を狂わせる。

クライマックスは戦場カメラマンが最前線に立つ過酷な現場。銃弾が飛び交うあの場所に、武装もなくカメラだけを持って飛び込む。ジョエルが戦場を前にして興奮する気持ちを口にする映画前半。その気持ちが憑依したかのように、ジェシーが自ら最前線に飛び込んでいくのが映画後半。これはジェシーの成長物語とも言える。クライマックスで彼女が向き合った被写体は、エンドクレジットで浮かび上がってくる。死体を前に笑う人々。分断がもたらす恐ろしさ。

キルステン・ダンストが修羅場をくぐり抜けてきたカメラマンを見事に演じる。疲れ果てた表情と厳しい口調の中に見せる優しさ。吸血鬼映画の子役時代から注目してきた僕ら世代には、キルステンの力演も見どころ。彼女が言うひと言が心に残る。
戦場で生き延びて写真を撮ることで、政府に訴えているつもりだった彼女。
「こんなことはやめなさい、って。」
報道の力。それが無力となる戦争という狂気。

映画として惜しいのは、こんな激しい対立が生まれた背景を示してくれないこと。テキサスとカリフォルニアが組んでるという設定からも、二大政党の政治的対立が原因ということではなさそうだ。でもエンドクレジットを見ながら思った。こじれるだけこじれたこの場面では、もう理屈じゃないんだろうなって。




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35年目のラブレター

2025-01-28 | 映画(さ行)


◼️「35年目のラブレター」(2025年・日本)

監督=塚本連平
主演=笑福亭鶴瓶 原田知世 重岡大毅 上白石萌音

久々の試写会。いち早く観る機会を与えていただき感謝です。

幼い頃の家庭環境が原因で学校にも通えず、文字の読み書きができない保。寿司職人として働いていたが退職後、夜間学校に通う決心をする。長年連れ添った妻に感謝を伝えるために、読み書きを学んでラブレターを書く。それが彼の目的だった。しかし学習する経験がない保には多くの時間が必要だった。

夜間学校が舞台の感動作か。松竹が得意そうな題材だよね、と思っていたら東映のマークがどーーーん(波🌊)。教育映像の製作も手掛けている東映だから、もしかしたらちょっとお堅い描写が入ってきたりして。確かに識字率に関する説明過多なセリフこそあったけれど、全体としては観客の多くが期待するまっすぐな愛情物語。結末は期待を裏切らない。

でもね。だからって、予定調和とか意地悪な言葉でこの映画を評するのはやめて欲しい。この映画が素晴らしいのは、結末に至るまでに積み重ねられた小さなエピソードのひとつひとつなのだ。結婚を決断するまでの葛藤、妻から渡された手紙を読めない悔しさ、夫を支える決心。夜間学校に通う決心、今まで関わってこなかった人々との出会い、主人公がつなぐ人と人。そのひとつひとつが愛おしいと素直に思える。

それらのエピソードには、印象的で素敵な台詞がたくさん散りばめられている。特に好きなのは、「嫌いなものでも、いいところを3つ挙げると好きになる」という妻の台詞。クライマックスでも泣かせどころになる言葉だけど、これは実生活でも使えるかも!と思った。くわばたりえが回覧板持ってくる時の挨拶も好きw。

映画観ながら、自分の毎日に応用できるような何かを見つけるのって楽しい。僕らの日々の暮らしだって、この映画と同じく、ちょっと愛しい小さなエピソードの積み重ね。知らなかった何かを知ることは、いくつになっても少しだけ僕らを成長させてくれる。

九州出身の原田知世がこの映画で聞かせる関西弁は、勢いではなくて諭すような優しさがある。台詞をすんなりと受け止めることができたのは、そのせいもあるのかも。

あ、最後に意地悪な感想を言わせて。若い頃が上白石萌音、歳とってからが原田知世というキャスティング。タレ目のヒロインがどうしたらキリッと細目の原田知世になるのさ。若い頃を演じたティーンの俳優がきゃわゆいタレ目だったのに、大人になったら常盤貴子になってた東映映画の記憶があるもので💧。苦労している若い時代を上白石萌音が演ずると、朝ドラのイメージがあるから、観客は感動するだろうという計算ずくかも。




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劇場版 1000年女王

2024-10-30 | 映画(さ行)


◼️「劇場版 1000年女王」(1982年・日本)

監督=明比正行
声の出演=戸田恵子 潘恵子 永井一郎 野沢那智

松本零士の原作コミックは随分前に読んだが、話が理解できたという自信がない。テレビシリーズは、僕の地元では放送されなかったので見たことがない。壮大なスケール、歴史と絡めた設定は魅力的ではあるのだが、他の作品のように様々な世代に響く親しみやすさとは違う。

この劇場版はテレビシリーズの続きや再編集でもない新作。ラーメタル星が地球に衝突する!?という全地球的な危機が描かれる。しかしあまりにも危機の描写が限定的で、女王の方舟に乗せられた雨森教授ら地球人が事態をすんなり受け入れてしまうのも説得力が薄い。まぁただでさえ分かりにくい話を2時間の尺で収めるのだから無理もないとは思う。人間関係の深さを味わうには、本作の情報だけでは物足りない。

個人的に幸いだったのは、最近アニメ「メーテルレジェンド 交響詩宿命 第一楽章・第二楽章」を鑑賞していたこと。惑星ラーメタルが太陽に近づく期間がわずかしかない長大な楕円軌道であるという設定の予備知識があったので、助けになったかも。「銀河鉄道999」のスピンオフである「メーテルレジェンド」では生き延びるために機械の身体を持つ道を選んだラーメタル人。「1000年女王」では束の間の春を待つための長期人口冬眠と、生き延びる為の地球侵略を目論む者として描かれる。そんな違いはあるけれど。

クライマックスの攻防戦はなかなか見応えはある。博物館に展示されていたクラシックな兵器で戦う地球人。さっきまで地球人を見下して猿呼ばわりしていたラーメタル人が、「想像を超えた反撃」などと慌てるのはおかしいけれど、エネルギー弾でなく物理的な兵器で反撃した「ヤマトよ永遠に」(オリジナル)の例もあることだし、よしといたしませう。ヒロイン雪野弥生(プロメシューム2世)を演ずるのは潘恵子。松本零士作品と縁のある声優陣が多数出演してしている。

特筆すべきは音楽。シンセサイザー奏者の喜多郎が映画音楽を手がけた貴重な作品。エンディングで流れる主題歌Angel Queen(星空のエンジェルクィーン)を歌うのは、ニール・セダカの娘デラ・セダカ。これは隠れた名曲だ。個人的な話だが、高校時代に吹奏楽で演奏したこともある。デビッド・フォスターがプロデュースに参加しており、哀愁漂うメロディとデラ嬢のまっすぐな歌声に、AORぽい男声コーラスがからむアレンジが素晴らしい。2010年代に初CD化されてコンピレーションアルバムに収録された際に、速攻で買ったお気に入りの曲なのだ。現在はデラ・セダカ唯一のアルバムと共に配信されている。是非お試しを。いい曲です♪





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スオミの話をしよう

2024-10-16 | 映画(さ行)


◼️「スオミの話をしよう」(2024年・日本)

監督=三谷幸喜
主演=長澤まさみ 西島秀俊 瀬戸康史 遠藤憲一 宮澤エマ

突然姿を消した大富豪の妻スオミのために、歴代5人の夫が一同に集まった。しかし彼らが知るスオミはとても同一人物とは思えない相違が。スオミの行方は?本当のスオミとは?

三谷幸喜らしい舞台調の会話劇と、長澤まさみがそれぞれのキャラを演じ分けるのが楽しい。クライマックスの個別対応はNG連発してるに違いない。それもちょっと見たい気がするw。芸達者を揃えた男たちのキャスティング。マゾっ気の塊のような夫①遠藤憲一は、彼女のルーツを知るだけに実はよき理解者。西島秀俊の上司を演ずる夫③小林隆の騙されっぷりにはクスクス笑ってしまう。そして彼女にとって一番信頼できるのは夫④西島秀俊なのかも。

セスナ機の場面での上昇気流に…って、コントのようなギャグには、ここまでやる?とちょっと冷めたが、人の良さそうな瀬戸康史のキャラのせいか許せてしまったw

ともあれ、いろんな長澤まさみを見られるのがいちばんの見どころ。神出鬼没な宮澤エマの好助演も楽しませてくれた。

※以下ネタバレ含みます
相手に合わせてキャラを変えていたのは、あざとさではなくて彼女なりの生き方だった。それだけに現在の夫⑤の無関心が楽でよかった、とスオミは言う。予告編で受けるのは、ぶっ飛んだ女性に振り回された男たちの話という先入観だが、実は相手が望む女性像にスオミが合わせる苦労があった。そんな男と女の関わりの話にオチを持ってきたのは予想と違う着地点。なるほどね。

ウディ・アレンの珍作「カメレオンマン」を思い出した。あれは防衛本能から周囲の人物や環境に合わせてしまう男の物語だった。誰しも生活の場面によっては素の自分を出せず、キャラとは違う自分を演じてしまうことがあるじゃない。スオミの行動の根底にはそれがある。そこを三谷幸喜は人間喜劇に仕上げてくれた。

ラスト、突然のミュージカルシーン。あれだけヘルシンキを連呼されたら夢に出ちゃいます🤣





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先生、私の隣に座っていただけませんか?

2024-09-25 | 映画(さ行)


◼️「先生、私の隣に座っていただけませんか?」(2021年・日本)

監督=堀江貴大
主演=黒木華 柄本佑 金子大地 奈緒 風吹ジュン

大河ドラマ「光る君へ」を欠かさず見ている。ヨシタカも巧いのだが、道長(柄本佑)の二人の妻が気になる。野心をギラギラさせてきた瀧内公美。2人は「火口のふたり」で共演してたよな🔥。娘の入内に抵抗していた嫡妻が黒木華。道長とまひろ(のちの紫式部)の関係が周囲に疑われる第36回のラストでは黒木華が微妙な表情を見せ、我らがヨシタカは赤染衛門に問い詰められる。33話の「どうして殿がまひろさんをご存知なのです?」って黒木華のひと言にもハラハラした😰。そういえばこの2人が夫婦役の映画あるよね…🤔

…という訳で「先生、私の隣に座っていただけませんか?」に挑むの巻。今年は気持ちの向くままに観る映画を選んでる気がする💧

漫画家夫婦である佐和子と俊夫。俊夫は担当編集者の千佳と浮気している。佐和子の母が足を怪我したことから田舎での同居生活が始まり、佐和子はいずれ必要になるからと自動車学校に通い始める。留守中、俊夫は佐和子が机の上に置いていた新作の原稿を見てしまう。それは夫の不倫を知った漫画家の妻が自動車学校の先生に恋する物語だった。

ヤバっ。何これ。面白っ!
あー、わぁ、ええっ
テレビの前で一人でキャーキャー言いながら観ていた(恥)家族が留守でよかった💧

妻が描くのは創作なのか現実なのか。その境目が曖昧な演出もあるだけに、先がどうなるのか実にスリリング。何を考えているのかがつかめない佐和子の言動に、こっちまでハラハラさせられる。

結婚という型がある以上、世間が不倫だと騒ぐ行動は確かによろしくない。でも人を好きになることは、相手が婚姻外であろうとどうしようもない感情。それが相手に真剣に向き合わない、いわゆる浮気なら許されるべきではないだろう。この映画の俊夫はまさにどっちつかずの浮気のクチ。だから妻のマンガを見て激しく動揺することになるし、妻の様子を見るために車走らせたりする。一方で浮気相手の千佳があっけらかんとして後ろめたさを感じさせないのが対照的。男ってダメな生き物よねw

俊夫が乗ってるVWゴルフ。昔はスポーツカーぽさもあったゴルフで、僕の周りにも熱烈ファンがいるのだけれど、映画に登場するモデルはより実用的になって、"カッコで乗る車"ではなくなった印象(個人の意見です)。漫画家としては新作が描けなくて家庭に収まっている俊夫が、実用的な車に乗ってるのはなんかいいセレクトだなと思った。

次の展開が予想できず、ラストシーンにはちょっとびっくり。ハンドルを握る佐和子の楽しそうな表情は、まさに翼を得たような嬉しさに満ちていた。

教習車の中での佐和子と新谷先生のやり取りにドキドキ。あの空間ってドラマが生まれることもあるんよね♡

教習車にある2つのバックミラーが2人の視線の交差点になる。クライマックスでは佐和子の仕事机にある鏡に俊夫が映る。鏡の使い方すっごく巧いと思ったのでした。

自分たち夫婦に起こったことをネタにマンガを描いた佐和子。「光る君へ」でもまひろが言ってたじゃない。
「わが身に起こったことは全て物語の種にござりますれば…」
昔も今も同じw



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素晴らしきヒコーキ野郎

2024-09-24 | 映画(さ行)


◼️「素晴らしきヒコーキ野郎/Those Magnificent Men in Their Flying Machines or How I Flew from London to Paris in 25 Hours and 11 Minutes」(1965年・アメリカ)

監督=ケン・アナキン
主演=スチュアート・ホイットマン ジェームズ・フォックス サラ・マイルズ 石原裕次郎

高校時代、吹奏楽部でこの映画の主題曲を演奏したことがある。日頃は主旋律少なめで、音を厚くするために下支え、時々うるさがられるのは、僕を含むトロンボーン部隊。この主題曲は、スライドを派手に動かす部分も、かっちょいい主旋律もあって、これ以上あろうかという大活躍ができるマーチの名曲。ラジオ番組で聴いて映画音楽だとは知っていたけれど、本編を観たことがなくて。あれからウン十年経って初めて映画を観た。

飛行機が誕生してまだ間もない1910年代。各国の飛行機乗りが集まって、ロンドンーパリ間の飛行を競う大会が、イギリスの新聞社主催で開催されることになった。主催者の娘と恋仲であるイギリス軍人、アリゾナからやってきたワイルドなアメリカ人、女ったらしのフランス人、子だくさんでオシャレなイタリア人、堅物ドイツ人、技術にすぐれた日本人。各国から選りすぐりの強豪が集まってくる。

レースが始まるのは上映時間の半分過ぎたあたりで、そこまでは様々な飛行機が登場して、多彩なエピソードが散りばめられ飽きさせない。しかも133分の上映時間なのに、レース場面前にはインターミッション(休憩時間)まで挟まる。ファミリーでも楽しめる娯楽作品としての配慮なのかな。近頃の長いばっかりのハリウッド映画とはえらい違いだ。今どきの製作陣に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。

物語の主軸はお転婆ヒロインがイギリス代表とアメリカ代表の間で揺れる三角関係。兄エドワードに似たイケメン英国人ジェームズ・フォックス、西部劇や戦争映画で活躍したスチュワート・ホイットマン。ちと地味な印象の主人公二人に、ヒロインは「ライアンの娘」のサラ・マイルズ。

妨害工作をする悪党がいたり、常に反目するドイツとフランスが決闘騒ぎを起こしたり、颯爽と登場するニッポンの美男子(石原裕次郎)にヨーロッパ人が騒いだり、フランス代表はレースの最中に恋にも真剣だったり。気楽に楽しめる。

ドイツ将校を演ずるのは「007/ゴールドフィンガー」の悪役ゲルト・フレーべ。当時の英米映画ではドイツは悪役として扱われがち。しかも本作では頭の堅いマニュアル野郎役で、コメディ演技を見せる奮闘ぶり。ステレオタイプに描かれることは不愉快な部分もあったに違いないが、そうした役をこの時代にこなしてくれた彼は、貴重な存在なのだと再認識。

レース場面はクライマックスこそ緊迫感があるものの、クラシックな飛行機がイギリスの田舎や海辺の古城がある風景を飛ぶ姿は切り取りたい美しさ。



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死刑台のエレベーター

2024-09-15 | 映画(さ行)


◼️「死刑台のエレベーター」(2010年・日本)

監督=緒方明
主演=吉瀬美智子 阿部寛 玉山鉄二 北川景子

「死刑台のエレベーター」邦画リメイクに挑むの巻。ルイ・マル監督のオリジナルはサスペンスの秀作。学生の頃に初めて観た時は音楽と、短い上映時間に凝縮した面白さに夢中になった。大人になって改めて再鑑賞、雨の中をさまようジャンヌ・モローに、これは愛の映画だという感想を持った(「死刑台のエレベーター」のレビュー参照)。

一方でオリジナルは、多くの方の感想にもあるように、サスペンス映画としての物足りなさや納得できない部分もあれこれ。このリメイク版の緒方明監督らスタッフも同じ思いだったのか、様々な要素を盛り込んでいる。オリジナルでモーリス・ロネが回収し損ねたロープは、本作ではちゃんと回収される。警備員に笹野高史を配したユーモラスな味付け、裏社会のダーティなエピソード、舞台となる横浜を印象づける国際色。

さらに登場人物それぞれのキャラクター描写が色濃くなっている。社長夫人と社員、若いバカップルの2組の男女。それ以外の情報が乏しくて話に集中できたオリジナルに対してかなり情報過多。阿部寛の過去は長々と語られ、北川景子演ずる美容師の純真さ、付け加えられた暴力団組長と情婦の関係性など、人間ドラマ部分が手厚くなっている。吉瀬美智子演ずるヒロインの心理描写に至っては特撮も駆使する手の混みようw

オリジナルでは出番の少ない刑事は、柄本明演ずる古参刑事に。職場のデスクには折り紙が並び、窓際族のような印象を与える。その頼りなさそうな印象がラストでキリッとして、黙って立っている吉瀬美智子の心情や、愛し合う二人が映った写真の意味まで克明に解説してくれる。あーっ柄本刑事、それよ!僕がオリジナルを愛の映画だと思った理由。よくぞ言ってくれました。でも、それをここまで語ってしまったら解釈や感想の押し付けになっちゃうのでは。

ところが、玉山鉄二演ずる警察官(バカップルの男)の行動や感情が最初から最後まで意味不明。「何にもできねぇんなら権力の犬でいりゃいいんだよ」と組長に諭される始末。組長の情婦との過去も唐突でよくわからない。

オリジナルへの愛着は感じられるが、話を盛って心理描写まで説明し尽くして、観客を受け身にしてしまったのが残念。「あの人と一緒にいないのに、私は老けていくのね」と繰り返されるラスト。その悲しい気持ちはわかるけど、吉瀬美智子の絶望した表情と、「二人の写真が欲しい」という台詞で十分ではなかろうか。

とにかく台詞が聞き取れない。テレビのボリューム上げまくって、ボソボソ喋る阿部寛の台詞を拾ったら、次の場面では平泉成が怒鳴る👂⚡️。どうにかならないもんか。

👇オリジナルはこちら

死刑台のエレベーター - Some Like It Hot

■「死刑台のエレベーター/AscenseurPourL'Echafaud」(1957年・フランス)監督=ルイ・マル主演=ジャンヌ・モロ-モーリス・ロネジョルジュ・プールジュリイリノ...

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サムライ

2024-09-10 | 映画(さ行)


◼️「サムライ/Le Samourai」(1964年・フランス)

監督=ジャン・ピエール・メルヴィル
主演=アラン・ドロン フランソワ・ペリエ ナタリー・ドロン カティ・ロジェ

アラン・ドロンの訃報で、いつか観ようと録画していた「サムライ」に手を出した。まだ若造だった頃に一度挑んでいるはずだが、冒頭の台詞なしの10分間に飽きたのか、ついて行くのに疲れたのか、親が観ていたのを断片的に観ていたのか、ともかくきちんと最後まで観るのは今回が初めて。あれ、もしかしてジャン・ピエール・メルヴィル監督作を観るのも初めてかも?

その冒頭10分間で心を掴まれた。殺風景な部屋には鳥カゴがひとつ。ベッドでタバコを吸う男が一人。彼はダブルのトレンチコートに中折れ帽を身につける。ジャケット写にある鏡の前で帽子のつばを整える。それらは武道家の型がある所作と同じように、裏社会の仕事に向かう前の儀式に見える。

かっけー😆

かつて「カサブランカ」でボギーのコート姿にイカれた過去がある僕。なんで「サムライ」を今まで観てなかったんだろ。グレーのスーツに細いタイをきちんと着こなし、映画後半は落ち着いた色調のチェスターコート。身なりをちゃんとする大人のカッコ良さ。近頃はなんちゃらビズのせいで、スーツをきちんと着る機会は少なくなったけど、こんなん観たら真似したくなる💦

一匹狼の殺し屋ジェフは、心を許せる相手がいない。「武士道」の一節とされる言葉のように言いようのない孤独だ。

クラブの経営者殺害後の取調べシーンから先、ずっと緊張が途切れない。殺害現場で鉢合わせしたジャズピアノ弾きの女性が「彼ではない」と嘘をついたことで難を逃れたジェフ。その理由が知りたかったジェフは再びクラブに向かう。警察はジェフを犯人と断定し、執拗な捜査網で追い詰めようとする。しかしパリの地下鉄を知り尽くしたジェフはその追手から逃れ続ける。この追いつ追われつだけでも面白いのに、ジェフが殺人を依頼したボスに迫ろうとする二重のサスペンス。よくできたサスペンス映画は、ただの追いかけっこでは終わらない。

メルヴィル監督作、他にも挑んでみようかな。今年はフランス映画に手が伸びるw




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スローガン

2024-09-07 | 映画(さ行)


◼️「スローガン/Slogan」(1968年・フランス)

監督=ピエール・グランブラ
主演=セルジュ・ゲンスブール ジェーン・バーキン アンドレシア・パリシー ジュリエット・ベルト

セルジュ・ゲンスブールを本格的に聴き始めたのは社会人になってから。ヨーロッパ音楽に中坊の頃から興味があったこと、初めて買ったFM雑誌の表紙がセルジュのアルバムだったこと、平成初めのシャルロット人気、などいろんなきっかけがあるが、少なくともピチカートファイブやカヒミ・カリィがゲンスブール作品を取り上げた頃には、コンプリートと題された9枚組CDセットが本棚のいちばん目立つところに鎮座していた。僕にとっては憧れの不良老人。それは今でも変わらない。

しかしながら出演作や音楽担当の映画に触れるのはその後。ジェーン・バーキンとセルジュの出会いとなった記念碑である本作、「スローガン」を初めて観たのは、1997年、WOWOWの放送だった。

感動するラブストーリーじゃない。むしろ呆れてしまいそうな話だ。CM監督セルジュが映画祭で訪れたベネチアで奔放なイギリス娘エヴリンと出会い恋をする。ギャーギャー騒ぎ立てるばっかりのエヴリンに振り回されるが困った顔するでもなく、生まれたばかりの子供と妻を放り出す無責任な中年男。

常識的に観てたらイライラしそうなものだが、二人が一緒にイチャイチャする場面の無邪気さ、現実味のなさ、小洒落たインテリアやファッションにいつの間にかワクワクしている。「あなたは素敵、私も素敵」何言ってるの?お嬢さん😓でも、なんか憎めない。そして翌1969年を"エロの年"だと歌ったお騒がせカップルが実際にこの映画で出会ったという事実が役に重なって、ゲンスブール好きにはたまらない長編PVのような作品。

映画宣材もオシャレで、90年代のリバイバル、緑色のフライヤーが大好き。もしポスター持ってたらお気に入りのゴダールのポスター剥がして代わりに部屋に貼ってる。

2024年9月に宅配レンタルDVDで再鑑賞。離婚を切り出したセルジュに妻フランソワが諭す台詞が、今の自分の年齢で観るとチクリと痛い。
「40歳なんだから33歳に見せる必要ないでしょ」
若い女といることが自分を若返らせてくれると思っている男。気持ちはそうでも実際は違う。確かにそうだよ。うん。

セルジュ・ゲンスブールが手がけた主題歌スローガンの歌。不安定なのに印象に残る不思議なメロディ。様々にアレンジを変えて本編で流れるのも楽しい。


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