Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ジョン・F・ドノヴァンの死と生

2024-01-21 | 映画(さ行)


◾️「ジョン・F・ドノヴァンの死と生/ The Death and Life of John F. Donovan」(2018年・カナダ=イギリス)

監督=グザヴィエ・ドラン
主演=キット・ハリントン ナタリー・ポートマン スーザン・サランドン ジェイコブ・トレンブレイ

どこからこの映画の感想を書こう。正直迷っている。グザヴィエ・ドラン監督作を観るのはこれが2本目。だから偉そうなことは言えない。だけどこの物語で、あれこれ考えさせられた。それを思いつくままに綴らせていただく。

家族にも誰にも言い出せずに抱えている気持ち。それを遠慮なく打ち明けられる人がいるなら、それは大切な存在だ。僕は絶対に失いたくない。ジョンが11歳の子役少年と続けた文通は、周りに理解されない孤独を抱えていた二人にとっては何事にも代え難いものだったに違いない。ジョンの死後10年経って、少年だったルパートがそのやり取りを出版することがこの映画の始まりだが、本編ではその手紙の内容で全てを明らかにすることはない。

そんじょそこらの映画なら、ジョンの素顔に観客だけは迫ることができ、結論めいたものを示してくれる。だが「僕らは理解されない」という台詞にもあるように、二人のやり取りを明らかにしたところで、万人に分かってもらえることはできなかったかもしれない。この映画は批評家に酷評されたと聞いた。感想を読んでると好意的な感想も共感する声も多い。分かってもらえなかったのはグザヴィエ・ドラン監督自身でもある。

ルパート少年が、大人たちからまるで嘘つきの狼少年みたいに扱われる場面は観ていて辛かった。さらに憧れのジョンにも裏切られるようなことになる。ジェイコブ・トレンブレイ君の叫びは耳に残っている。さらに大人たちが嘘だと罵ったジョンとの文通を、今度はマスコミが騒ぎ立てる。ジョンに同性愛の相手がいると騒がれたから?小児性愛と勘ぐった?それとも美談にしたかった?誰も本当のことを分かっちゃいないのに。

この映画は、母と息子の物語でもある。ナタリー・ポートマンが演ずるルパート少年の母は、女優のキャリアを捨てたシングルマザー。宿題の作文で息子の気持ちを知った母が、少年を追う場面は胸に迫る場面だった。また、スーザン・サランドンが演じたジョンの母親も出番が少ないが、最後には理解者であろうとしている気持ちを示す。浴室で家族で話し、ラジオの音楽で歌う場面も印象的だった。

僕自身も、分かってくれない、分かり合えない人々に日々苛立っていて、一方で分かってくれる誰かがいることを大切に思っている。だからこの映画で、ハートに刺さった場面や台詞がいくつもある。「"秘密の存在"は望むものじゃない」とか、いい表現だよな。だけど映画の感想としてうまく言葉にできない。

それはこの映画が、尺の割りに様々なテーマを織り込んでいるからかもしれない。元々はもっと長尺だったと聞くから、編集で言葉足らずになってしまったとも思える。しかし、それでも共感を呼んでいるのは、気持ちに向き合う真摯な映画だからだ。ポスタービジュアルと同じく、真正面から登場人物を捉えたショットが心に残っているのも、その理由なのかも。




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劇場版SPY×FAMILY CODE:White

2023-12-24 | 映画(さ行)

◼️「劇場版SPY×FAMILY CODE:White」(2023年・日本)

監督=片桐崇
声の出演=江口拓也 種崎敦美 早見沙織

テレビシリーズを長女と毎回キャアキャア言いながら楽しんでいる「SPY×FAMILY」。アニメの劇場版は所詮ファンサービスなのだから、楽しんだが勝ちだ😆。とは言え、テレビ見てないのに子供や孫に映画館に連れて来られる大人たちも確実にいる。オープニングで疑似家族フォージャー家の面々の素性を、きちんと説明してくれるので、初めての大人もおそらく大丈夫。

調理実習でお菓子を作ることになったアーニャ。1等になると星(ステラ)がもらえるらしい。審査員となる校長が好きなお菓子を作ることに決めた一家は、校長の出身地にお菓子メレメレを食べる為に家族旅行に行くことになる。一方で緊急の重大ミッションが発生。ロイドを従来の任務から外して、その任務に就かせる話も持ちあがる。そのミッションに関わる悪事にアーニャが巻き込まれてしまう。疑似家族の運命は?東西対立の行方は?…と凝ったストーリー。

複数のハラハラ要素が併存する脚本は確かに面白い。これでもロイドがスパイだってバレない荒唐無稽なクライマックスは笑うしかないが、それがこのシリーズの魅力でしょ😂。堅いこと言わずに楽しむべし。

スパイ、殺し屋、超能力者それぞれの得意が発揮される場面を用意するのはなかなかの難題。テレビシリーズでは、それぞれが活躍する回はあっても、今回のように3人と1匹の活躍が凝縮される舞台が用意されているのは素敵なことだ。まぁ多少の無理矢理感はあるけれど。特にいつもはコメディリリーフになりがちなヨルさんが、サイボーグ兵士を相手に華麗なバトルを展開するクライマックスは最高🤩。惚れ直します♡。そして疑似家族の関係をそれぞれが大事に思う、いつもの展開にもほっこり。

それにしても今年は種崎敦美大活躍の年だったな。「青ブタ」双葉理央の頼りになる落ち着いた喋り、「フリーレン」の淡々と聞こえるのに力強くてお茶目な役柄。この劇場版のアーニャでは×××を連呼する!NOT エレガントォォォ!でもお子ちゃま大喜びだろうな💧。千葉繁大先輩の神様、素晴らしい🤣。






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1640日の家族

2023-12-21 | 映画(さ行)

◼️「1640日の家族/La vraie famille」(2021年・フランス)

監督=ファビアン・ゴルジュアール
主演=メラニー・ティエリー リエ・サレム フェリックス・モアティ ガブリエル・パビ

アンナとドリスの夫婦は里親として、生後18ヶ月だったシモンを4年半育ててきた。自分の子供たちとも良好な関係で、幸せな日々を過ごしていた。ソーシャルワーカーからシモンの実父が子供と暮らすことを希望しているとの連絡が入り、まずは週末だけ実父と過ごすことになった。それはアンナを"ママ"と慕うシモンだけでなく、アンナと家族の気持ちを揺るがすことになっていく。

育てる子供を愛すること、
その一方で愛しすぎてはいけない。

規則だからとドライに割り切ることも難しい。幸福そうな家族の様子から始まる映画は、だんだん葛藤のドラマに変わっていく。クリスマスは実父の元で過ごさなければならないが、父親は仕事で忙しそうだ。シモン自身は、雪山に行くアンナ一家について行きたい。アンナはソーシャルワーカーに相談せずに、山に連れて行くことを選ぶ。里子の先々の自立や親子関係と、子供自身の気持ち。そしてシモンを離したくないアンナの気持ちが交錯して、観ていて切なくなる。

フランス語の原題はLa vraie famille(本当の家族)、英題はThe Family。どちらもタイトルから"家族"の姿について考えさせる意図が感じられる。血のつながり、育ての親という関係だけでなく、愛し愛されて共に暮らすことが"家族"のカタチだと伝えたかったと思うのだ。

ところが邦題は「1640日の家族」。本編では一緒に暮らす4年半という期間を殊更に強調してはいなかったのに、無駄に情報量を増やした、言わばお節介な邦題だ。観客の受け止め方は様々だと思うけれど、1640日とわざわざ"終わり"を示すことでシモンとアンナ一家が期間限定の疑似家族でした、という残念な印象につながってしまう。愛し愛されてる関係は変わらないのに、タイトルで感じた先入観が鑑賞の邪魔になってしまう。

実の父親であるエディが、妻の死から立ち直って息子と暮らしたいと前向きな意思を示しているのに、映画での印象は身勝手な人物とも受け取れる。里親が主人公だから致し方ないのかもしれないけれど、エディのシモンに対する気持ちや、彼の願う"家族"をもっと知りたかった。また、アンナがシモンに対する正直な気持ちを示すことで、プロの里親(フランスでは里親は国家資格で、報酬も日本の倍だとか。)として不適格と扱われる様子は観ていて辛い。人を思う気持ちに嘘はないのに。

シモンを演じた子役ガブリエル・パヴィ君、大人たちの間に挟まれた難しい役柄を見事にこなす。いつか成長した姿をアンナ一家に見せられる、再会の日が訪れますように。





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スタンド・バイ・ミー

2023-12-18 | 映画(さ行)

◼️「スタンド・バイ・ミー/Stand By Me」(1987年・アメリカ)

監督=ロブ・ライナー
主演=ウィル・ウィートン リバー・フェニックス コリー・フェルドマン ジェリー・オコンネル

2023年12月13-17日に開催された北九州国際映画祭。「あなたの青春の一本」とのアンケートに、多くの人が答えた作品も上映された。30-59歳の層でNo.1だったのが「スタンド・バイ・ミー」とのこと。僕も大学時代に観たっきりだ。久々に観たくなって北九州芸術劇場にて再鑑賞。

この映画を公開当時に観た頃、街の映画館では子供を主人公に据えた映画あれこれ上映されていた印象がある。ウディ・アレンは「ラジオ・デイズ」、スピルバーグ は「太陽の帝国」、おどろおどろしい作品のイメージがあるジョン・ブアマン監督までもが「戦場の小さな天使たち」、みんな子供の話。どれも世間の評価も高い映画だったけれど、どの作品よりも僕らの心に強く心に残ったのは、間違いなく「スタンド・バイ・ミー」だった。

登場する4人の少年たちに共感できるポイントが観る人それぞれにある。亡くなった兄への劣等感、家庭環境のせいで不良扱い、憧れである父親から受ける虐待、臆病な自分への苛立ち。自分を肯定できない気持ちを抱える4人は、この短い旅の中で新たな面を発揮したり、本音を口にしたり、感情を露わにしたり。それは小さいけれど確かな成長につながっていく。

ゴーディとクリス、その後も信頼関係が続いたと語られるラスト。大学時代に観た時は、そういう友達との関係を今でも自分は大事にできているだろうか、と半ば反省するような気持ちになったっけ。今回改めて観ると、作家になったゴーディが訃報を知って過去を振り返る様子が胸にしみる。それをリチャード・ドレイファスが演じているのもいいキャスティング。ゴーディの亡くなった兄はジョン・キューザックだったのか😳。フットボールでの活躍を鼻にかけることなく、弟に優しく接してくれるいい兄貴。今観ると、これもいいキャスティングだな。

そしてベン・E・キング御大のStand By Meが心に沁みる。単純だけど印象深いベースライン、シンプルな循環コードだけで、こんなに世代を超えて愛されている名曲。ジョン・レノンやモーリス・ホワイトのカバーも素敵だけれど、キング御大の"そばにいてよ"と繰り返されるフレーズを聴くと、僕ら世代はどうしてもこの映画の場面とシンクロさせてしまう。あの頃そばにいてくれた誰か。自分を励まして理解してくれる誰か。みんなわかってくれる誰かにそばにいて欲しいんだ。87年にはリバイバルヒットしたんだよな。映画祭の上映では、地元高校放送部による前説があり、このエピソードをちゃんと紹介してくれたのは嬉しかった。古い歌だけど、この映画のおかげで僕ら世代にとっては、忘れられない一曲でもあるのだから。






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ゼロの焦点

2023-12-16 | 映画(さ行)


◼️「ゼロの焦点」(1961年・日本)

監督=野村芳太郎
主演=久我美子 高千穂ひづる 有馬稲子 南原宏治 西村晃

2023年12月13〜17日の北九州国際映画祭で上映された旧作。
https://kitakyushu-kiff.jp/

映画祭では北九州出身の松本清張原作の映画が3本上映。セレクトしたのは、清張フリークでもあるみうらじゅん。そのうち1本がこの「ゼロの焦点」(1963)である。クライマックスで能登半島の断崖が登場し、緊張感ある謎解き場面となっている。現在の2時間枠サスペンスドラマの原型という意味でも観て損はない。みうらじゅんはこの作品で崖好きになって、グッとくるグッドクリフを探して(みうらじゅん「いい崖出してるツアー」歌詞より♪)、あちこち旅をすることになる。そんなきっかけとなった作品。

謎解き場面の回想を除いて、失踪した夫を探す新妻の姿を、カメラはとにかく捉え続ける。彼女と共に能登半島の寒空を歩いているような没入感。95分の尺で余計な情報がない映画だから、なおさら集中できる。モノクロの映像が日本海の曇った空や荒れる波をさらに冷たく感じさせ、クライマックスの崖で気持ちが高まってしまう。

物語に描かれた頃はお見合い結婚が主流だったし、駐留していた米国兵の相手を生業としていた女性たちがいた時代。過去や素性を深く知らずに結婚することはよくあることだったに違いない。ヒロインは夫の謎を追うことになるけれど、物語は女性たちの過去も紐解いていくことになる。

ラストに漂う悲壮感。やっぱり清張ものは面白い。





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青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない

2023-12-04 | 映画(さ行)

◼️「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」(2023年・日本)

監督=増井壮一
声の出演=石川界人 瀬戸麻沙美 久保ユリカ 東山奈央

青春ものにありがちなのが親の不在というシチュエーション。あだち充の「みゆき」、「エロマンガ先生」のように兄妹が二人暮らしになる背景を一応説明しているものもあれば、家計がどうなってるのか不明な「みなみけ」、最後の最後に唐突に親が現れる「けいおん!」もある。でも、あの年頃にとって親は主人公がやりたいことへの障害(例えば「俺妹」)だったり、過剰な期待を押し付ける身近な圧力(例えば「ガルパン」)だったり、大きな存在である。それは現実でも同じだ。

「青春ブタ野郎」は主人公梓川咲太を中心とした複数ヒロインものだが、いわゆるハーレムアニメではない。彼女たちのトラブル解決のために奔走する彼の活躍が、ヒロインたちを笑顔にしていく。とんでもない危機も苦労もあるけど、異性の友達があんなにいて居心地のいい世界なのは間違いない。本作は咲太自身の思春期症候群にまつわるエピソードだ。

テレビシリーズの桜島麻衣のエピソードでは、世間の誰も自分の存在を認識しない事態が描かれた。今回、その状況に陥るのは咲太自身だ。それも家族から認識されなくなり、世界から認識されなくなる。これまで本編に登場しなかった母親は、妹の世話を咲太が押し付けられた原因でもある。母親を頼ることのできない存在だと咲太が心のどこかで思っていたことが、今回のトラブルの引き金となる。そして、彼はこれまでのヒロインに囲まれた平穏な世界と、彼が認識されない世界との間をさまようことになる。そんな主人公最大の危機を救うのが…。

身近な人のことを、知ってるつもりで何も知らない。それは無関心だったり、意識の中で存在を消すことでもある。青春時代に仲間や異性といることが楽しくて、居心地がよくて、身近な存在である家族が目に入らなかったり、気が回らなかったこと。誰しもがあることだ。それを一風変わった話に仕上げた本作。でも実は普遍的なテーマでもある。親不在になりがちな青春もので、家族の再生が描かれるのは実は立派な試み。それを兄妹の劇場版2部作としたセンスがいい。

今回もヒロインたちが素敵だ。推しの桜島麻衣はやっぱりサイコー♡。皮肉混じりの二人のやり取りが好き。咲太の相談役であるリケジョ双葉理央も頼れる存在で好き。今回も落ち着いた喋りでアドバイスをくれる、淡々とした種崎敦美の台詞まわし。僕の脳髄はフリーレン様と重ねてしまったww。 




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色即ぜねれいしょん

2023-11-23 | 映画(さ行)

◼️「色即ぜねれいしょん」(2008年・日本)

監督=田口トモロヲ
主演=渡辺大知 峯田和伸 岸田繁 堀ちえみ 臼田あさ美

みうらじゅんの原作小説は既読。痛々しくも微笑ましい童貞ボーイズの物語。映画化したらどんなキャストでどんな音楽になるのにだろうと思っていたら、個性的な面々がズラリと並ぶ。これは楽しそう♪

仏教系男子校に通う純。ボブ・ディランを聴きオリジナルの曲を誰に聴かせるあてもなく作っている日々。仲良し3人組で隠岐島への旅行に行くことになった。彼らの目的はユースホステルでの出会いとフリーセックスw。当然目的は達せられないものの、ユースホステルで出会ったヒゲゴジラ、オリーブたちとの交流を通じて一歩成長した純。クラスのヤンキーグループのサポート演奏でなく、学園祭のステージにソロで出場することを決意する。

冒頭の法然!コールからなにが起こるのかワクワク。主人公とその仲間の立ち位置がきちんと示される。トモロヲ監督、好き勝手やってるようでツカミが上手い。オリーブが電話番号を渡す場面、ヒゲゴジラとギター弾きながら歌う場面、頼りない家庭教師との会話、「これであの人と飯食ってこい。送って帰って来い」とオトンが金を渡す場面。好きな場面がたくさんある。特に学園祭のステージ場面が素敵。エロチシズム・ブル〜♪と唸る純に笑わされ、君は君で僕は僕♪と自分らしくあることを高らかに歌う。あー、この映画好きだ。男子はこういうバカをやって大人になるんよ。

臼田あさ美と石橋杏奈の名前が並ぶだけで嬉しくなる。ウッちゃんの「LIFE」毎週見てたもんな。オカン役の堀ちえみも好助演。






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シノーラ

2023-11-06 | 映画(さ行)

◼️「シノーラ/Joe Kidd」(1972年・アメリカ)

監督=ジョン・スタージェス
主演=クリント・イーストウッド ロバート・デュバル ジョン・サクソン ドン・ストラウド

荒野の七人」などで知られるジョン・スタージェス監督とクリント・イーストウッド が組んだウエスタン。撮影は「ダーティハリー」のロバート・サーティーズ、音楽ラロ・シフリン。初見は1993年に地上波放送にて。2022年にBSPの録画で再鑑賞。

西部にも法の支配が及んできた時代。メキシコ系の人々が住んでいた土地をめぐって、開拓者としてやって来た白人が権利を主張して争いが発生していた。双方が法廷での解決を好ましく思わず、メキシコ系のチャマ(ジョン・サクソン)を追って銃で決着をつけようとする悪役ハーラン(ロバート・デュバル)の対立。保安官も何も出来ずにいる。土地勘があることからハーランに雇われたジョー(イーストウッド )だが独自で事態を解決しようと動き出す。

名の知れたスタッフ、キャストが揃っているけれど派手さはない。法による秩序がうまく機能していない時代のじれったさが全編に漂う。勧善懲悪ではあるのだがスカッとする娯楽作ではない。イーストウッドのマルパソプロダクションが手がけた西部劇は、現代にも通ずる不安やテーマが取り上げられるが、主人公の素性がよくわからないまま話が進んでしまうので、説得力が乏しい印象。

それでもクライマックスは、敵の布陣を破るために蒸気機関車を使う突然のド派手な展開から、裁判所を迷路のように使う演出が面白い。また、スナイパーと撃ち合うライフル対決シーンは、緊張感あるいい場面。後の「アメリカン・スナイパー」を思わせる。結局、イーストウッドが放つ銃弾でしか問題が解決できない結末。無力な保安官の態度に拳を振るう苛立ちが心に残る。



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シークレット・レンズ

2023-11-05 | 映画(さ行)

◼️「シークレット・レンズ/Wrong Is Right」(1982年・アメリカ)

監督=リチャード・ブルックス
主演=ショーン・コネリー キャサリン・ロス ジョージ・グリザード ロバート・コンラッド

中東を取材中のテレビキャスターが、国家ぐるみの原子爆弾取引を知ってしまった。CIAや米国大統領、国家間の裏事情、さらに大統領選挙の勝敗が複雑にからみ、アメリカが置かれた微妙な立場を浮き彫りにする。

80年代初頭に、中東とアメリカの関係をテーマにした映画はなかなかない。そうした先見性や着眼点はいいのだが、幅広くエピソードを欲張りに盛ってしまっている。娯楽に徹したいのか、社会的なメッセージを発したいのか、焦点がボケた印象を受ける。タイトルとおり「レンズ」なだけにw。

この頃、ショーン・コネリーの出演作はバラエティに富んできて、重厚な文芸大作もあればメロドラマやSFもある。本作は名前の知れた俳優がズラリと並びなかなか魅力的。僕はキャサリン・ロスがお目当てだったのだが、強く印象に残るような役柄でもなかったのは残念。ジェニファー・ジェーソン・リーは、「初体験リッジモント・ハイ」と同年の作品。どこに出てたんだろw。






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白い婚礼

2023-11-04 | 映画(さ行)


◼️「白い婚礼/Noce Blanche」(1989年・フランス)

監督=ジャン・クロード・ブリソー
主演=ヴァネッサ・パラディ ブリューノ・クレメール リュドミラ・ミカエル

僕はフレンチロリータに弱い。銀幕上の恋愛遍歴(笑)はソフィー・マルソーから始まって、新旧フランス女優たちに次々に恋してしまった。バネッサ・パラディもその一人。

90年代に入った頃、週末にやってた海外ニュース番組で、フランスで17歳のトップアイドルが主演した映画が大ヒットとのニュースが流れていた。ヒット曲を連発した彼女は、初主演の映画で中年の先生と恋をする小悪魔的な美少女を演じている。しかもヌードも辞さない熱演。ヒット曲「夢見るジョー(Joe Le Taxi)」のPVとともに映画「白い婚礼」の一場面が流された。草の茂った斜面で男性を誘う白いワンピース姿が心に残った。ど、どんな映画だろ。

同じ頃、僕はセルジュ・ゲンスブールにどハマりしていて、彼がプロデュースした女性アーティストや女優の音楽を新旧見境なく聴いていた。バネッサ・パラディのアルバム2作目「ヴァリアシオン」をプロデュースしたのはセルジュ。1作目の「マリリン&ジョン」もよく聴いた。10代のすきっ歯の小娘が大統領と女優の恋を歌う。ヨーロッパ音楽の憂いのあるシンセ音と舌足らずなボーカル。

「白い婚礼」でバネッサの相手役は、「恐怖の報酬」リメイク版も印象的だったブリュノ・クレメール。思わぬ恋に戸惑うのはむしろ彼の方。これを観た頃、テレビでは野島伸司脚本の「高校教師」が流行ってた。あれもセンセーショナルだったし、切なさに夢中になったけれど、「白い婚礼」は似たような題材ながら、もっと宿命的で破滅的。そしてフランス映画らしい人物像の掘り下げがある。二人が校舎の隅で抱き合うクライマックスにはハラハラ。そして好ましくない結末が訪れる。

10代のポップスターがこの役を演じたことで騒いでた当時の報道。本編を観るとその衝撃は理解できる。そしてレニー・クラビッツがプロデュースした名盤「ビー・マイ・ベイビー」が大ヒットして、みんなのハートを射止めることになるのだ。



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