忘却への扉

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私には夢がある

2017-08-24 | 共に

 【 地 軸 】 2017.8.17 地方紙1面下段コラムより

[ 米国の首都ワシントンから一歩離れると自然豊かな景色が広がる。以前、車で1時間ほど南下し訪れたバージニア州では雄大な山の風景に息をのんだ。名曲「カントリーロード」に登場するブルーリッジ山脈があるのも実はこの州。
 ▲国民には牧歌的な景色よりも「激戦地」として記憶されているという。英国人が入植し、黒人の奴隷が産業を支えた。150年ほど前、州政府は奴隷解放に反発。南北戦争で地元出身のリー将軍が南軍司令官となり、戦乱の舞台に。
 ▲その後、南部各地に将軍の像が建てられたが、近年は撤去の動きが広がる。将軍の顕彰は人類差別の助長につながるからとの理由を聞いて、保守的な南部で融和が進んでいることに感慨を覚えた。
 ▲だがバージニアでは今、撤去に反対する白人至上主義者がデモ行進し、これに抗議する人たちと衝突、死傷者が出る惨事に。人種を巡る対立でまた激戦地に血が流れた。
 ▲「すぐに出て行け」。州知事は白人至上主義者を批判、一喝した。ところが大統領は「現場にいた両陣営に責任がある」と言い放った。差別を容認したに等しい。自らの支持層の離反を防ぐのが狙いらしいが、社会の分断化を深めるばかりだ。
 ▲54年前の8月、ワシントンでキング牧師は人種差別の撤廃を求めて「私には夢がある」と演説した。今のホワイトハウスのあるじは夢すら持てない国に逆戻りさせたいのか。自由、平等をうたった建国の精神が泣く。]

 ( 忘却への扉 ) わが家が白黒テレビを買った頃、よく見ていたのが「西部劇」、原住民をだまし力ずくで土地を奪いわがもの顔の白人移民。悪役で殺されるのが原住民、拳銃や銃で軍隊まで使い侵略したのが英雄の白人だ。
 奴隷として売買された黒人たちの映像も普通に物語には登場した。南北戦争時の南軍制服姿の戦闘シーンも多かった。
 米国は建国時から戦争好き。奴隷解放とは言うが、その後の戦争にも、前戦の死に一番近い場所に行くのは白人よりも黒人や有色人が多数だった。
 民主主義とか人権尊重とか言っても虚構、白人至上主義は顕在、それに抗議するデモが行われる米国。だが、日本は無関心、声も上げず夢すら持たないとはあまりに心が貧し過ぎる。


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