はじめに
蟹の解禁となれば、北陸に住む者にとって、蟹をいち早く食したくなるものだ。店には山と積まれた香箱カニが、主婦の買い物かごに入りたがっているのだ。買わないわけにはいかない。そして、そのカニがよもや弓を引くことに、大きな影響を及ぼすなどとは、誰も気づかないだろう。
蟹をさばくことについて
子どもの頃は、蟹はおやつみたいに食べた。各自が蟹を丸ごと与えられ、甲羅をとり、母親に「ふんどし」を取るように注意をうけて、豪快にむしゃぶりつくのだ。しかし、今は92歳の年寄りをはじめ身を自分で出さない殿ばかりなので、きれいにさばかなくてはならない。
蟹をさばく包丁について
足ははさみで切っていくことにしたが、甲羅のなかの足の付け根部分、腹というのか分からないが、そこを立てて切っていた。小ぶりの出刃包丁で割ってみると、始めはうまくいっていたが、途中集中力を失い、こてっと身が倒れて包丁は薬指を縦に引き裂いた。指までさばいてしまった。血は流れ、残りの蟹は姿のままで食卓に運ばれることとなった。
薬指負傷の一考察
11月度加賀山中月例会の矢渡の射手をしなくてはならない。この事態に急きょ当番を交代しようかと火曜日に道場へ行き、とりあえず矢渡が出来るか引いてみたら、見事的中。後輩に「いつもより握りしめなくていいのでは!」どうも、押手の手の内を、いつも強く握りしめていたらしい。力を入れようにも薬指の傷は縦に切れているので曲げられない。怪我の功名。功を奏するとはこのことか。
終りに
月例会当日。白い包帯を巻いた痛々しい押し手で、弓の扱いは危なっかしいが、2本とも的中した。介添の〇未ちゃんが「真ん中のいいところに中たってました・・」ということ。今後、いざという時は、押手かけならず、押手包帯を用いようか。
〇下先輩の「日常茶飯事ではない自分を見つけることもよいですね・・」という、閉会のお言葉が嬉しかった。