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「円高」を考える:本当に「超」円高なのか?①

2012-05-30 00:01:54 | 日本

 「超円高」とか「歴史的な円高」といった言葉を最近はマスコミ報道で毎日のように見かけます。スポットの為替レートが1ドル79円台(5月下旬時点)と、昨年秋の1ドル75円台には及ばないものの、1ドル80円割れは1995年以来の水準であることからこうした言い方がされるのでしょう。

 ところで、現在の為替レートは本当に円高(ドル安)といえるのでしょうか。マスコミが日々伝える「1ドル79円」といった為替レートはあくまで名目上のものです。だからこれだけを見て単純に円高とか円安といった結論を下すのは早計というものでしょう。

 為替が真に円高なのか円安なのかを判断するには、円と比較対象となる通貨の購買力や、わが国とその通貨発行国との物価水準などを考慮した実質のベースで為替を見る必要があります。このあたりについて、よく使われるレート指標である「実質実効為替レート」と「ビッグマック指数」を取り上げて私的な考察をしてみたいと思います。

 日銀がHPなどで公表している実質実効為替レートとは、多くの国の通貨が取引される外国為替市場における通貨の相対的な実力を測る指標で、対象となるすべての通貨と2通貨間の為替レートを貿易額などに応じてウェート付けし、これに物価変動の影響を考慮して調整したものです。単純な名目上の2カ国間の為替レートと比べて対外競争力を適切に表すものと解説されています。

 以下のグラフは、日銀HPのデータをもとに、1980年から2012年までのドルの対円の名目レートと実質実効レートの乖離を百分率で表したものです。0%以上であれば実質実効ベースで見て円高、0%以下であれば円安となります。

 これを見ると、1995年4月にひときわ高い柱が立っていることが分かります。名目レートが実質実効レートに対してプラス方向に大きく乖離、つまり大幅な円高ドル安になったことを示しています。このときは、わが国ではバブルが崩壊して海外投資や輸入が減少する一方、輸出が引き続いて強かったことなどから名目のドル円レートが実質ベースに対して約80%もの円高となっていました。4月19日、名目レートで当時の戦後最高値1ドル79.75円を記録し、大きなニュースになりました。

 1980年から2012年の現在までの推移を見渡してみてもこのときの乖離が最も大きく、この時点のドル円レートはまさに名目ベースで見ても実態ベースで見ても「超円高」といってもよい水準だったと思われます。

 これに対して実際に「超円高」と評される最近のドル円レートはどうでしょう。2012年4月は名目レートで1ドル81.42円に対し、実質実効レートでは同98.54円で、名目レートが実態のレートに対して20%あまり円高の水準になっています。

 先ほどの80%のプラス乖離と比べると現在は20%程度のプラスだから、為替の現状解説をするならば、実質実効レートで見れば、たしかに足下では円高傾向にはあるものの、20%前後のプラス乖離の局面は過去にも何度かあったことから、「超」とか「歴史的」というほどの極端な円高とはいえない、といったところではないでしょうか。

(続く)

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