(前回からの続き)
本稿の最後に、円(日本国債)と金(ゴールド)の関係について思うところを付記しておきます。
「金(ゴールド)>円>ドル>ユーロ>新興国通貨」―――本ブログでたびたび登場させている、通貨の強さの順番(実質金利の高い順番)を示す不等式です。本稿は表現を変えてこの不等式のことをあらためて述べたものです。
さて、本稿一回目の「リスクオフ」想定シナリオは、アメリカの連邦政府が金融システムに巨額の公的資金を投入せざるを得ない事態に追い詰められ、それまではユーロ圏の大混乱などを受けてじりじり下がっていた米長期金利が一気に跳ね上がる、というところで終わっています。で、おそらくそこまでのプロセスでは円建ての金価格はほぼイーブンで進むのではないかと考えています。
このことを具体的な数字で表すと・・・現在、金の国際価格は1トロイオンス1200ドル弱、そして円建ては1グラム約5000円です。ここで上記のシナリオ終了時点、つまり米長期金利が急騰した局面で前者が1オンス1800ドルにまで上がるとします。これを円建てに換算すると・・・5000円×1800/1200×80/120=5000円、となって、いまの円建て価格と等しくなります。ドル建て価格は1.5倍になっても、ドル/円が120円から80円へと、リスクオフ前後で2/3倍にまで円高ドル安が進んだために、結果として円建て価格は大きく変化しなかった、ということです。リスクオフで金融マーケットが動揺し、金の国際価格が大幅に上昇する場面でも、金に対する円の価値は下がらない―――それだけ円が強い通貨、というよりは不換通貨で世界一であることが明かされるでしょう。
それでも同シナリオ以降、つまり米長期金利の急騰以降の展開では、金価格はドル建てはもちろん、円建てでも上がっていきそうです。自国だけでは銀行救済資金をまったく工面できないアメリカは、もはやFRBによる米国債の直接引き受け(財政ファイナンス)によるドルの大量発行くらいしか手がないからです(金融システムが危機に瀕するたびにFRBはQEを何度でも繰り返すだろう)。そうなったらドルの価値は大暴落・・・ですが、上記不等式のとおり、円以外の通貨はドルよりも弱い通貨ばかりだから、円を除いたほぼすべての外国通貨に蓄えられた価値は・・・円、そして・・・金に流れ込むほかないでしょう。そのとき世界で何が起こるのか、まったく想像できません・・・
・・・みたいな最終シナリオを個人的に妄想しているわけです。こちらの記事等で、日本人向けの個人資産ポートフォリオは円預貯金50%、金35~40%、日本株10~15%くらいが適当(自己責任でお願いいたします)と書いているのは、そんな理由からです。
はてさてこの先、国際金融市場はどうなることやら・・・。通貨ユーロの本格的な崩壊過程を迎えた感じの欧州、怪しい債券の元本保証や株価つり上げのためにひたすらマネーを刷り続ける中国、そして・・・利上げ=債券価格急落(?)がもたらす金利上昇に耐えられそうもない(?)金融リスクの総本山・アメリカ・・・と眺めてみれば、ミョ~なことさえしなければ、新しい世界金融のリード役は、(好むと好まざるは別にして)われらが日本国となるだろう、いや、そうならねばならない―――と、半ば本気でそう思う次第です。
(「日本国債、最強の証明」おわり)
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