(前回からの続き)
原油価格が乱高下している感じです。先日のOPECの減産合意見送り決定を受けて一時は1バーレル60ドル台前半まで下がっていましたが、そのリアクションなのか、足元では同70ドル付近まで戻しています。
では、この先はどうなるのか、ですが、もっと下がって40ドル台まで行く、なんて楽観的(?)なものから、いや、この下落は一時的で、反騰は近い、といったものまで、じつにさまざま。まあ個人的には、しばらくは70ドルをはさんだ値動きをするだろうと予想しています。加えて、いまの価格水準だと産油国、そしてアメリカのシェールオイル産出業者の多くが採算割れに追い込まれるとの見方があることなどから、中期的にみた原油価格はこのあたりが底値かな、なんて気もしています(わが国としては厳し目に[高めに]想定しておいたほうがよさそうだ、という意味を含めて)。
で、かりに現時点程度の原油安が今後も続いたら・・・繰り返しになりますが、わが国の実体経済にとっては大歓迎! 電気代もガス料金もガソリン代も下がって企業も家計も、都市も地方も、そして大人も子どももみんなハッピー♪でしょう、素直に考えれば・・・。
しかし本稿の文脈からすると、これは「どえらいリスク」につながりかねないわけです。そのリスクとは・・・本ブログで最近シツコク記している、とめどもない食費&光熱費の値上がり、スタグフレーションの深化、貿易・財政赤字の拡大と大増税、そして長期金利制御の困難化・・・などなどです。いちいち上げていったらきりがないくらい。
そしてそんな数々のリスクを巻き起こす張本人が、こともあろうに「通貨の番人」であるはずの日銀・・・。なぜなら、これまた繰り返しですが、安倍政権も黒田日銀も、円安インフレを「善」とみなす立場から、事実上、この原油安がもたらすコスト低減効果を「悪」(リスク)と捉えざるを得ず、そのドル建て価格が下がればそれを打ち消すほどの円建て価格のつり上げを図らなければならない定めにあるから。それが必然的にさらなる円安誘導を促す金融政策の発動となり、結局これが真の円安環境、つまり上述の国家の財政・金融基盤を揺るがす危機的事態を招く・・・といったわけです。
10月末の追加緩和で日銀は長期国債の買い入れ額をそれまでの毎月7.5兆円程度から同8~12兆円(年間10~20兆円上乗せ)にすることを決めました。わが国の年間の国債発行額は百数十兆円ですから、ほぼすべての新規国債を日銀が購入する計算になります。もう誰が見ても中銀による財政ファイナンス状態です。これだけで十分にヤバいのに、(日銀曰く)「物価下押しリスク」を口実に次は何をやろうというのか・・・。原油安が進むにつれて、心配性のわたしの不安は募る一方です。
こんなふうに、エネルギー価格が下がったことに喜べないどころか、逆にハラハラさせられるなんて・・・。ホント、日銀には一刻も早く中銀の目的「物価と金融システムの安定」に立ち返っていただきたい・・・。