(前回からの続き)
まあGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人:厚生年金および国民年金の積立金運用機関)が高い利回りを必要としている事情は分かります。少子高齢化にともなう労働人口の減少や年金受給者の増加が見込まれるなか、年金基金のさらなる拡充は国家的な課題となっているわけですから。
そして「アベノミクス」の政策的なねらいも理解できます。安倍政権および黒田日銀としてはアベノミクス唯一の(?)成果である株高の資産効果のいっそうの発現を図るため、年金マネーの株式市場への流入を促したいところでしょう。付け加えると、外国債などの外貨建て資産への投資も促進させて円安モード(=輸入インフレ傾向)を定着させたいという思惑も・・・。
しかし、忘れてはならないのは「安全性」の観点。年金の役割を考えると、運用にあたっては「リスクオン」よりも「リスクオフ」をより強く意識すべき―――高い収益率確保も重要ですが、GPIFが運用しているのはわたしたちの大切な年金原資である以上、個人的にはどちらかといえば保守的な運用スタイルを守ってほしいという思いがあります。つまり引き続きローリスクの資産=日本国債などの国内債をベースに据えた運用ポートフォリオを組んでもらいたいということです。
もっとも先述のとおり、GPIFの現在の目標資産配分比率は国内債60%、国内株12%、外国債11%、外国株12%。一時期の2/3を超える割合から60%に下がったとはいえ、4つのうちでもっとも安全とされる国内債が大きなシェアを占めています。資産運用の安全性と利回り追求のバランスを取るうえで、この60%くらいを同ポートフォリオにおける国内債割合の最低ラインとし、上限を2/3とするレンジを設定するくらいが適切かな、などと思っています。
で、年金基金の残りの4割近くにどのような資産を割り当てるか、ですが、当然ながら「リスクオン」モードのときに高い収益が期待できる資産、つまり国内債よりもリスクは高いけれど大きな利回りをねらえる資産ということになります。これまた個人的な感覚ですが、その主役はやはり国内株式がよろしいかと。その配分率は現行目標の15%よりも少し高く、20%くらいでもよいかもしれないな、と考えています。
アベノミクスが実質的に開始される直前(2012年11月)の日本の株価(日経平均株価で8千円台後半)はどうみても「低すぎ!」という水準だったと思っています。当時は配当利回りは高かったし、PBR(純資産倍率)が1以下の株がごろごろしていましたから・・・。それでも株は買われなかったわけですから、わが国の投資家は株式投資に慎重すぎたという面があったように思えます。それは年金基金も同じ・・・。
(続く)
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