(前回からの続き)
そもそも、最近の日本の経済学では基本的なことが理解されていないのではないか、とさえ思えることがあります。
たとえばこんな感じです(あえて数値は出しませんが)・・・わが国のGDPに対する「輸出」のウェートは世界的に見ればアメリカなどに次いで「低い」という事実をエコノミストの皆さんはご存じなのだろうか。そのGDPの根幹を占め、景気回復のカギを握るのが「個人消費」であることは? そして消費増税には個人消費を冷やす働きがあることは認識されているのだろうか? これを別な言い方で表現すれば、消費税率の引き上げが必要なほど、この国の景気が過熱気味だと判断されているのだろうか? さらに、為替を円安にすると輸入インフレが起こる、つまり電気代やガソリン・灯油代などが上がるということは知っているのだろうか?・・・などなど。
以上は、この国の経済学者やメディアがこぞって称賛する現政権の政策のベースとなる経済学「アベノミクス」で感じさせられることのほんの一部です。ひょっとしてアベノミクス(円安誘導・リフレ政策)を推進する方々は、日本の「輸出」の対GDP割合が新興国並みの高さ(数十%超)で、海外販売用の自動車とか電気製品の「完成品」の製造工場がほとんど日本国内にあると思っていらっしゃるのでしょうか(どれも間違いですよ!)。もしそんな「誤解」が日本経済の真実なら、アベノミクスは大正解となりますが・・・。
さらに、アベノミクスを評価するエコノミストは、日銀のリフレ政策が意図的に引き起こした円安でエネルギー価格や食糧などの日用品の値段をアップさせると、経済が好転すると本気で考えているのでしょうか(これも違うような気が・・・)。そんなことをしたら、総収入に占める生活費の割合の高い庶民(わが国のGDP「個人消費」を支えるこの国の多数派)の生活はもっと苦しくなるのに・・・。もしかしたら「生活費がかさんだ分、株式投資で取り戻せばいい」ってこと? 日本国民の何%が株を持っているのか、そしてそのうちどれくらいの人々が財テクだけで食べていけるのか、皆さんはご存知なのでしょうか・・・。
そんな「アベノミクスは100%正しい」なんてことをおっしゃる「経済学」の重鎮がいます。たしかに100%そのとおりだと思います・・・「アベノミクスは貧富の差を拡大する」という意味で。でもそれは「経済学」といえるのか疑問です。なぜなら本来、経済とは「経世済民」―――世の中を正しく治め、民衆を救済すること―――であり、経済学とは「経世済民」のための施策を考えること・・・だと信じているからです。
というわけで、本稿の表題「日本の経済学・存亡の危機」とは、上記のようなアベノミクス礼賛のもと、米欧中に続いて日本の経済学までもが富者のための私利極大化の方法論と化し、「経済」の何たるかを忘れつつあるのではないだろうか、という個人的な危機感に基づいて付けたもの。もし真に「経済学」の存続を図ろうというのなら、繰り返しになりますが、この国に脈々と受け継がれてきた本来の意味での「経済」観念をベースとした日本経済論を再興すること―――「ジャパン・ルネサンス」が必要不可欠だと思っています。
・・・さもないと、アベノミクスが続くにつれ、日本の「経済学」とか大学の「経済学部」は近い将来、本場・欧米流の「金儲け論」に駆逐され、本当に消滅してしまいそう。もっとも、看板が「理財学部」とか「蓄財学部」に変わって、いまよりずっと賑わっているかもしれませんが・・・。
(「日本の経済学、存亡の危機?」おわり)
天皇陛下、お誕生日おめでとうございます。陛下のますますのご健勝をお祈り申し上げます。
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