(前回からの続き)
先月着任したアメリカのキャロライン・ケネディ駐日米大使は、日本における優先事項のひとつとして、日米間の学生交流の活性化を掲げているそうです。この背景には最近のアメリカにおける日本人留学生の減少傾向があるもようです。
教育研究機関のイーストウエストセンターの調査によれば、日本からアメリカへ渡る留学生の数は2000年の約4.6万人から2011年には約2万人へと半分以下になってしまいました。これに対し、同期間の中国人留学生は6万人から19.4万人へ、そして韓国人留学生は4.6万人から7.2万人へ、それぞれ大きく増えています。こうした数字をみると、多くの日本人、とりわけ日本のメディアは、低成長下にある日本経済の現状と関連させて、つい「アメリカへの留学生数の増減傾向のこの違いは、日本と中韓両国の国勢の差を象徴している」などと論評しがち・・・。
わたしはまったく違った捉え方をしています。これは日本人の学生の多くが、近年、アメリカの大学ではなく日本の大学を選択するようになっていることの裏返しの現象。ということは、日本の大学が、それだけ日本人の学生に「何もアメリカの大学に留学しなくても、日本のこの大学で自分のしたい勉強・研究ができる!」と思わせるだけの魅力をつけてきたことの表れ、と解釈できると考えています。
そしてそんな日本の大学のなかに、理工系や自然科学系の有力学部・学科・研究機関を持つ5大学(東大、京大、東工大、阪大、東北大)が世界大学ランキング上位200位以内に入っているのは心強いかぎりです。
以前もこちらの記事に書きましたが、国家戦略上、わが国においては理系人材の育成がとても大切だと感じています。理工学をはじめ、農学、生物学、そして医歯薬学の道を志す日本の若者の多くが、引き続きこの国の学校を自分の進路として選んでいけるよう、政・官・財・学のオールジャパン体制で理系の高等教育環境(大学、大学院、高専、研究機関等)の充実を図っていくべきだと思っています。
さて、アメリカの大学で留学生を増やしている中国と韓国ですが、別な見方をすると、これは両国の大学環境がそれだけ不十分なことを示しているといえます。つまり中国も韓国も、自国の学生に満足のいく高等教育の場を用意できていないということです。だからこそ中国・韓国の若者は海外留学をめざす・・・その結果としてアメリカの大学における留学生の数が増えることが、中韓両国にとって本当に喜ばしいことなのか大いに疑問ですね。優秀な人材が自国から他国の大学や企業等に流れることを「頭脳流出」と言ったりしますから・・・。
(続く)
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