(前回からの続き)
これまで述べてきたとおり、イギリスの教育専門誌Times Higher Education「世界大学ランキング」でトップ10に入っているのはアメリカとイギリスの大学です(米7校、英3校)。これら10大学以外でも同ランキング上位には両国、とりわけアメリカの大学が多数入っています。
いうまでもなく大学は最高学府。ということは、世界屈指の大学が揃うアメリカとイギリスは、世界最高レベルの知恵と英知が織り成す「素晴らしい国」であってしかるべき―――政治・経済の仕組み、社会福祉の制度、そしてモノ作りの技術や環境面などなど、あらゆる分野で世界の「模範」であり「憧れ」となる国であってしかるべきだ、と個人的には思うわけですが・・・。
ご存知のように、現実の米英両国は、そんな(わたしが描く意味での)理想的な国家像とは大きくかけ離れています。そのへんは日々のさまざまなニュースに接していれば誰にでも感じられることと思います。
なかでもこのあたりを象徴しているな、と感じさせられるのは米英両国の「経常赤字」の巨大さ。2012年の両国の経常赤字はアメリカが約4404億ドル(44兆円超)、イギリスが約939億ドル(約9.4兆円)と、それぞれ世界第一位、第二位です。経常収支とは、自国と外国との貿易・サービスなどの経済取引をトータルした収支のこと。これが赤字、それも世界で1番、2番目の赤字ということは、米英両国が、自分たちの身の丈以上の贅沢(=借金生活)をしているということに加え、それだけ両国が外国に買ってもらえるモノやサービスを創造できていないことの表れだと思っています。
そんな様子を見ていると、アメリカやイギリスの大学は、少なくともそのランキングの高さほどは、自国の実体経済とか産業振興にプラスの貢献をしていないのではなかろうか、と感じています。まさか「国家の経常赤字? そんなことはどうでもいい。大学の名声が高まって、お金持ちの子息が集まって、その学費収入で株式投資ができて、大学関係者が潤えば・・・」というわけではないのでしょうが・・・。
以上、「世界大学ランキング」についてあれこれ綴ってきましたが、つくづく感じるのは、総合的に判断して、わたしたち日本人には日本の大学が一番、ということ(相当に「身びいき」が入っていることをお許し下さい・・・)。もちろん、「大学全入時代」を迎え、わが国の大学には改善すべきさまざまな問題や課題があるのは事実でしょう。それでも、学習や研究にかかる諸環境、教員のクオリティー、そしてコスト面などから見て、日本の多くの大学は一定のレベルに達しているものと思っています。
とくに同ランキングで世界200位内に入った東大、京大、東工大、阪大、東北大などの主要国立大(そのなかでも理系の学部・学科)は、世界的な評価が高いうえ、1年間の授業料が50万円あまり(アメリカの一流大の1/8ほど)と、費用対効果の面からも魅力的です。わが国の志ある若者がこれら日本の大学に進み、(学費の支払い等に煩わされることなく)研鑽を積んで、それぞれの進路で活躍することで、この国や世界の発展に寄与することを期待したいですね。そんな彼ら彼女らのなかから、きっとこれからもノーベル賞クラスの業績を打ち立てる才能が続くだろう―――そう信じています。
(「世界大学ランキング雑感」おわり)
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