Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

誰もが注意義務を果たしていない

2024-04-16 22:06:07 | 時事
メジャーリーガーの通訳がスポーツ賭博でクライアントの資金を使い込んでいた件、現地の捜査当局は通訳が欺罔して資金を騙取した、という結論で訴追しました。
まあそれがいちばん「丸く収まる」結論ですが、それによりあちこちに綻びが出てくるわけです。ちなみに捜査の結果明らかになった、というよりも、一種の司法取引としての結論ですからね。銀行詐欺の総ての咎を背負うことで結論を受け入れたということも十分考えられます。

もちろんメジャーリーガーが「共犯」ということはないでしょうが、ネット界隈で噴き上がっている「無罪ダー」と単純に言える話ではありません。
一部報道では口座ログインが数年間無かったという話まで出ているなど、注意義務に著しく欠けていたことは否めません。なおログインがないのになぜ資金移動が出来たのか、と考えると記事の信憑性も怪しいですけどね。IDとPW(トークン)の使い回しであれば「アクセス」はありますし、複数IDでのログインが可能であればなんとも危険な口座です。

実際には当然いろいろな代理人がいて資産管理をしているはずですが、「本人」の確認無くして話は進みません。本人の確認無くして資産管理が可能であれば、今回のように巨額の使い込みが可能になりますし、もし「ヒットエンドラン」型の犯行であれば、今頃は米国であっても手が届かないようなところに逃げきれますからね。いみじくも通訳から事件の「隠蔽」を持ち掛けられた時に本人は自分で判断せずに「代理人」に相談していますが、そもそも代理人はなにをしていたのか。

実務上は金融機関と代理人の間の手続きだとしても、本人が設定した(了承した)条件の範囲内での行動のはずです。カストディに類する活動となるとはいえ、上限金額とか資金移動の内容とかは限定されているはずです。金融機関が受任するのではないのであれば、弁護士や会計士であっても裏切られるリスクはありますから。
そうなると今回の「使い込み」が金融機関の手続き上どのように容認されたかです。そもそもの条件設定が甘かったのか、条件変更手続きに問題があったのか。代理人が自らの行為だけで変更できるとなったら極端な話資産全額の持ち逃げが可能ですから、本人への確認が必須です。ただ本人への確認は面着かどうかは微妙なところで、Power of Attorneyで済ませっちゃった可能性はありますね。そして問題はまだあり、本人がいて正規の代理人がいて、という状態で通訳が権限を行使できたこと。代理人の注意義務も当然問われるわけです。

表面上金融機関は代理人が誰かを正確に把握できていないでしょう。登録された代理人か本人であれば正当な行為であるとして事務処理を進めるはずです。
ここでPower of Attorneyを偽造していたら代理人も知り得ない状態で金融機関を騙し得ますが、不正な送金など資産の処分があったら、毎日とは言いませんが週間、悪くとも月間で不正は発見されるはずです。月次決算とまでは行かずとも、会計年度末(米国は12月末です)に確認しないということはあり得ませんし、税務申告が正しくされていない疑惑も発生します。帳簿を見るのは代理人の仕事です。さらにその結果を本人が見ていない。本人を含めた職務懈怠です。そうそう、日本の全小学校にグラブを寄付してましたが、その支払いも「お任せ」だったんですかね。いくらかかるかとか本人が知っておくべき数字は多いはずですが。

複数の代理人がいれば発覚は時間の問題と考えるのが普通ですが、犯行がエスカレートした。代理人の質が相当悪かったのでしょうね。不正が可能と確信を得るレベルだったと。このシナリオであれば本人が知り得ない、という解釈も可能ですが、果たしてそうか。本人に何らかのコンタクトも取らなかったということであれば、実に危ういです。まあコンタクトがあるとしても直電はないでしょうから、メールや書面でのコンタクトへの対応が杜撰であれば、通訳が応対してしまうことも可能になってしまいます。で、実際に起きてしまったのですから罪深いですね。他にもこんな「使い込み」があるかもしれませんし、米国の銀行に対する信頼が損なわれた瞬間です。

まあ思いもよらぬ事態なんでしょうが、管理が甘かったことは確かです。メジャーリーガーは被害者でした、問題はありません、では済まない話です。
本人の管理、また無能としか言いようがない代理人の選定と、本人の責に帰する部分は少なくありません。
あるいはそこまで代理人は無能だったのか。金融機関も注意義務を全うしていたのか。綻びというのはそういうことです。よほど周囲に間抜けが揃っていないと成立しないシナリオですから。積極的関与は無かったとしても、本人の注意義務とその履行に問題があったが、司法取引である意味不自然な結論で幕を引くというところでしょう。それがMLBも含めての米国の総意なんでしょう。

ところでこの事件と言い静岡県知事の問題と言い、ネットメディアやそれが引用するワイドショーやスポーツ紙あたりで、芸能人や芸人のコメントが幅を利かせているのはどうなんでしょうね。時事問題へのコメントと言えば、それなりの知識が求められるわけで、いわゆる「識者」と衆目が一致するような実績が求められるのですが、それくらいの「インテリ」なのか。
まあ「台所感覚」という言葉もあるように、生活レベルの視点でコメントする事例もあるので一概に否定はできませんが、これらの事件はそんなものじゃないでしょう。
事の本質が分かっていないけどまあ「ケシカラン」と言っているようなレベルで議論を混ぜ返しているだけですから。

まあ「ナントカ風情が」というつもりは毛頭ないとはいえ、誰もが知識人、識者と意識していることもないレベルで、あたかもご意見番のように時事問題にコメントするのには強い違和感を感じます。あるいは時事色が強い芸風というのであればまだ分かりますが、そうとは到底思えない「資質」ですからね。
逆に知識も見識も高い芸能人や芸人もいますが、普通はそれをひけらかしたりはしないわけです。確かに芸能人や芸人の中では「博識」でしょうが、じゃあ知識人、識者と言われるレベルにあるかというと、それはあるとしても頭抜けてはいないわけです。よしんば時事問題を語ったとしても、「芸能人、芸人にしては賢い」という扱いでの重用というのを理解していますから。そうした芸能人、芸人は背伸びして賢らな発言をすることなく、逆にアホ(バカ)を演じ切っているんですよね。本物の芸能人や芸人はアホ(バカ)では務まらないというのを体現しています。



未練がましく抵抗する

2024-04-16 22:04:30 | 交通
本邦LCCの国際線で、電動車椅子での搭乗につきバッテリーの目視が出来なかったとして搭乗拒否したことが問題になっています。
国交省の規定では組み込み等で目視が困難な場合は書類による申請で代用可能としており、LCCもその規定に準拠した格好で自社サイトで公示しているのですが、現地での取り扱いが違ったわけです。その人は他社便で帰国したわけですが、問題が無かったということは、特殊な装備等で判断が分かれるというようなこともないものだったということです。

これが報じられると早速ネットでは障害者が無理難題とか、安全が第一だから仕方がないとか、とりわけ安全を隠れ蓑にしてあらゆる可能性を針小棒大にほじくり返して正当化する毎度の「弱者ヘイト」が氾濫していましたが、国交省の規定と自社サイトでの案内との矛盾という指摘があり、ドヤ顔での障害者叩きが見事に梯子を外される瞬間を見守っていたら、まさかの斜め上ですね。
安全が担保されているから規定があるわけですが、安全ガー、とそれでも否定するわけです。申請できるということは型式があって内蔵されているバッテリーも分かるわけで、ネット弁慶が騒ぐ以前の問題としてリスクは把握されている前提の話です。それでもバッテリーが火を噴く、というのであれば、そういう人が飛行機に乗る際にスマホやPCといったバッテリー内蔵製品の持ち込みを「危険だから」「リスクだから」と法令や技術的根拠もなく「自社判断」で拒否されても文句は言わないんですかね。人一倍騒ぎ立てて、SNSにアップして批判するのが関の山でしょう。

なんというか、ユニバーサルデザインというか、共生や多様化にもつながる話ですが、自分がどう思うのかは勝手ですが、社会のルールとして受け入れないといけないことを堂々と否定するのが罷り通るあたり、リテラシーの欠如というか、ルールを順守するという一種のコンプライアンス意識の欠如を感じますね。国交省の規定を知らない状態で目視確認はルールだ、とドヤ顔で批判していたのはそれこそルールを盾に批判していたわけですが、自分の好みの部分だけのつまみ食いという低レベル、意識の欠如を曝け出しています。

もちろんこの手の「ルール」やポリコレの類は支持できないものも少なくないですが、国として社会としてそれを不合理だとして排除できなかった以上、それに従うしかないんですよ。「個人的にどう考えがあるにしろ、それがルールという意識を持ってください」とマネジメント向けの研修で言われたことがありますが、ルールを明示されてもなお「抵抗」するというのは、社会への適応力がないということでしょう。コンプラだなんだという以前の問題として、ソクラテスの昔から「悪法も法」という言葉があるのも分からないようです。そして現代であれば、なぜ立法府が民選なのか、という理解も出来ていないわけで、「悪法」という思いが民意であれば、立法府を通じて改廃できるということも分からないんでしょうね。もちろん立法府はそこまで高潔ではないですが、原則はそうなっているのです。そして動かない立法府を選んでいるのは有権者ですから、動かないのは「多数意見」、すなわち民意なんですよ。



筋悪の存続論

2024-04-16 22:02:47 | 交通
3月末で根室本線の富良野-上落合間が廃止になりました。道内のネットワークという意味では疑問とするところが大きい廃止ですが、一方で廃止に反対する理由が付会牽強を地で行くようなレベルでは説得力を持ち得ません。代替ルートとしての機能を期待するという意味では長期不通リスクであり、函館(山)線のように室蘭線における有珠山噴火のリスクといった予測不可能で発生したらかなりの期間止まるというレベルです。

根室本線の場合、ルートが石勝線に固定化されることは確かにリスクですが、もともと新狩勝トンネル(狩勝峠越え)の区間を含む上落合信号所以東に代替路線がないわけで、まあ北十勝線を建設せよというような斜め上極まる論者もいるようですが、そこはご都合主義になっています。しかも長期不通リスクという意味では残念ながら今回廃止された「滝川回り」の方が高いわけで、「有珠山噴火」のような特異事象もありません。強いて言えば十勝沖などの巨大地震がありますが、影響が大きいのは池田以東です。
よく引き合いに出る「たまねぎ列車」にしても、不通で問題になったのは1週間程度の話で、そもそも「たまねぎ列車」の運行自体が期間限定ですから、石北線は不要というわけにはいきませんが、代替ルートの確保とまではいえません。

説得力を持たせるとしたら、結局は国防です。今回の廃止で問題になるのは、道東への機動展開です。狩勝峠以東に配備されているのは帯広の第5旅団ですが、名称でわかる通り「ワンランク」下の規模です。有事即応の機動師団である第2師団が後詰めになる格好ですが、これの本拠は旭川です。第2師団は遠軽に駐屯地を置き普通科連隊がいますが、これを考えると石北線は当然維持すべき路線です。高速や高規格道もありますが、鉄道と両方維持すべきものでしょう。

一方で道東はどうか。機甲師団である千歳の第7師団が交通網的には「順路」になりますが、日本唯一の機甲師団として当然マークされている存在ですから、有事になれば開戦劈頭に打撃を受けるリスクがあります。(戦車連隊と普通科連隊が千歳と恵庭に集中しているというのもどうか・・・)
機動展開が期待される第2師団はR237~R38での輸送しかないわけで、しかも狩勝峠経由が順路になります。(R237で山部から占冠に抜けるか、幾寅峠を越えた後にr1117からr136で落合からトマムに抜けて道東道という手もあるが、R273で三国峠経由といい勝負)

道南と道央の連絡にしても、函館(山)線が新幹線開業と引き換えに廃止になりますが、こちらは峠道の連続で輸送力が小さいという特殊事情もありますが、出来れば残したいルートでした。このあたりは函館線の新函館北斗-長万部間の並行在来線引き受け拒否の問題と合わせて、国による「上下分離」を真剣に考えるべき区間です。そのためには「根元利益」を含めて新幹線の収益を一定額召し上げるスキームも必要でしょう。

新幹線は基本的に国土軸を構成する基幹ルートに建設されているわけですが、そこが「並行在来線」となってしまうスキームは国土強靭化どころか国土弱体化であり、それこそ我が国を虎視眈々と狙う存在があるとしたら笑いが止まらない事態でしょう。鉄道があったとしても、第三セクターで保全等維持管理が万全とは言えないでしょうから。もともと「横軽」でボトルネックだった長野以南の北陸新幹線はともかく、それ以外は「並行在来線」になることは百害あって一利なしの状態です。旅客輸送にしても、JR貨物との分担を極小化しようとして、通過両数比で割り振るのを奇貨として、短編成詰め込みが目に余りますし。