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Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

ジャーナル2013年9月号

2013-09-08 12:28:00 | 書評
月遅れ状態が解消しませんが、9月号の書評です。
特集は「勾配を行く」、2000年前後には何回か特集テーマになっていましたが、碓氷峠の廃止、横断路線の輸送力の縮減、そして機関車や気動車の高性能化もあり、勾配線区の趣味的魅力が無くなったこともこの手の特集が少なくなった理由でしょうか。
なお、一つ苦言を呈すれば、勾配特集ならばルモフ全線区につき、セノハチの記事にあるような勾配と曲線の図が欲しかったです。

ルモフ区間は現状で紹介できる線区を全部詰め込んだ感じ。
九州は災害復旧を絡めていますが、日田彦山線まで盛り込んだのは地味な路線だけに路線の紹介という意味でも小技が効いています。ただ、戦争に迄Mされて全線開通が遅れた事に言及するのであれば、1945年11月に発生した二又トンネル爆発事故への言及が欲しかったです。

この事故は、「続・。事故の鉄道史」に詳しいですが、完成していたが未共用の彦山以南のトンネルに旧軍の火薬類を持ち込み、燃焼処分しようとして爆発し、二又トンネルは吹き飛び切り通しになり、住民145人が犠牲になった事故です。本文でも「荒れっぷり」が批評されている彦山駅駅舎もこの時に一部損壊しています。

豊肥線の復旧工事については寄れるところまで寄っての撮影など、足で稼いでいます。そして肥薩線については「観光列車のご紹介」だと凡百の記事ということで、運用方法などサイド情報に工夫がみられますが、やはり気になるのは「ごく一部のロングシートの自由席」ということ。地元利用対策とのことですが、それで済むレベルでは、この路線は「公共交通」なのか、という本質を避けている点では、「観光列車」マンセーの一員です。

本州四国は播但線と土讃線。因美線や伯備線ではなく播但線というのが渋いですが、一般利用でも「陰陽連絡」の流動が見られるという意味では播但線の存在感の方が実は大きいです。水系、流動と行政が食い違う生野が寺前以北のキーステーションですが、できれば一本落としてほしかったですね。地形が厳しいせいか、播但道のICの設置にも特色がありますし。

土讃線は有名だけどあまり丹念なルモヘ無いので久々の印象。一向に前に進めないJR四国の普通列車の様子が伝わって来ますが、写真にある土佐北川あたりは本文での言及が欲しかったですね。
ちなみに4245Dの新改20分停車ですが、時間的には土佐山田まで進めるものの、そうすると土佐山田では4246D~4243Dの折り返しと41Dと50Dの交換で2面3線が塞がっており、4245Dは進めないのです。

東北は肋骨線の大半が登場。山口線は豪雨被害で大変なことになってしまってますが、最近RJで紹介すると直後に、というケースが目立つわけで、オカルトめいた話です。そういう意味では弘南鉄道の記事も取材直後に大鰐線の存続問題が株主総会で出てきており、記事でも最後に取って付けたように言及しています。
ちなみに山口線「やまぐち号」については、C57とC56の取り扱いの違いなど、昔の駐㍽≠フ時代の記事を思い出すような詳説は今の読者には目新しいでしょうね。

特集以外ではTGVのOUIGOは先月に特集すべき内容とは先月に述べました。
小田急のダイヤ特集は、10月号で西武新宿線と続いており、定着してほしい企画です。

あと、RPがこの手の記事はお手の物とはいえ、先月今月と続いた20m2扉旧国の戦時改造の記事は助かります。過去の旧国の記事などと合わせると、「改造が行われた」という記述で済まされがちな改造の実態が分かり、イメージがつかめますから。


ジャーナル2013年8月号

2013-08-17 13:07:00 | 書評
バタバタして2月遅れになってしまいましたが、6月発売の8月号からです(汗)

まずは7月号からの変化点だったのですが指摘し忘れていましたが、目次が妙なことになっています。
フォントを大きくして2ページにわたるようにしているのですが、見開きではなく背中合わせのためページをめくらないと全体像が見えず、非常に見づらいです。総合雑誌が目次を織り込み形式にして開くことで4ページ分の目次を一目で見れるようにしている工夫と全く逆で、何とも不細工な改悪です。

特集は高速鉄道。欧州と日本の320km運転がテーマですが、中国が「諸般の事情」で350km運転を中止していることで、取材しやすい日仏の高速列車を世界最速として取り上げることが可能になったという「大人の事情」も垣間見えます。
余談ですが、RJが取材すると直後に何かが、というジンクスが今回も発動されたのか、欧州の高速列車に言及したせいではないでしょうが、スペインでタルゴがあの事故を起こしています...

「取材しやすい」という意味ではE5系、特にグランクラスの取材は厳しく制限されているわけで、正式に取材依頼をしての記事に車内の様子などの写真が出せないという事に対して、「ジャーナリズム」として何も感じないのか。中国の高速鉄道の取材ですら車内写真はあったわけで、社会主義国以下の「報道の自由」なんですが。

それと、同じ編成で「看板」を「はやぶさ」「スーパーこまち」としただけで500円の値上げ、ということへの言及がないのもどうか。確かに最高速度で差をつけていますが、停車駅のアヤで「はやて」のほうが速いケースもあるわけで、「のぞみ」「みずほ」の比ではない料金根拠の薄さです。

欧州の高速鉄道については、すっかり普及したTGVの普段の顔に加え、格安版「OUIGO」の登場と、日本以上の展開というか、高速鉄道がスタンダードになっているという意味では「正しく進化」している感じです。なお、「OUIGO」のルモェ8月号掲載に回ったのは紙面の都合もあるでしょうが、特集との連動、資料性という意味では問題でしょう。

欧州で目を惹くのはイタリアのルメBまあミラノ<gリノの「1区間」レメ[トですが、複数の運行会社参入の実態紹介という意味ではこれで十分です。全区間だらだらと付き合うよりも、主要区間の様子だけの方が簡潔ですし。

そしてハイスピードに酔ったところで「あけぼの」のルモヘ場違いにも見えますが、こういう記事が出るということは「そろそろ」というメッセージでもあるわけで、いよいよなのかもしれません。

あと感慨深いのが筑波鉄道廃線跡のルメB
鉄道で残すべきだ、バスは論外、という鉄道至上主義の面々が必ず例に挙げていたのが、廃線跡の活用なんて絵空事、筑波鉄道のサイクリングロードなんて誰も使わない税金の無駄、という決まり文句でした。

で、実態はどうか。「鉄」からはイオンのSCのように蛇蝎のように嫌われているサイクリングロードは関東を代表する施設として有名であり、自転車雑誌でも特集の常連だそうで、「鉄」の理想と現実のギャップがここでも現れています。

最後に、「『鉄道大国』日本の『成功』と『反省』」
7月号からの前後篇で、7月号の時には論じ忘れましたが、要は「水平分離」による都市間輸送と地域輸送の分離、「上下分離」によるインフラ投資からの解放が骨子です。

確かにその視点でないと事業として鉄道が成立する余地はほとんどないのが実情ですが、論者のように内部補填によるビジネスモデルを否定することは、官から民、といういわゆる民営化の流れと一緒で、儲かる事業は民間が実施し、不採算部門への内部補填が転じて配当金などの外部流出になるわけで、交通事業以外の事業と合算した結果の租税公課による間接的な回収しか望めないスキームは、単純に税金による持ち出しの極大化を意味します。

であれば税金による持ち出しを最小限にすべく、採用する交通モードの厳選が最小限かつ絶対的な条件になるわけですが、そこへの言及が実に甘く、鉄道とバスに輸送能力のギャップがある、だから鉄道を、というようでは説得力がありません。大阪市の大正通りを例に出すまでもなく、バスの輸送力はBRTや連接バスを導入するまでもなく高いわけで、採算を云々するような地方路線で本当に鉄軌道が必要なのか、と考えれば、三陸地方のBRTではないですが、かなり限定的になるはずです。

過剰な交通モードの選択を許し、自治体による負担を極大化して、事業者は自治体からの受託で損失知らず、というあってはならない流れをまず徹底的に排除した上で、必要な交通の整備を論じるべきでしょう。税収による公的支出を交通、それも鉄道に回す余裕は本来小さいのです。社会福祉、教育などに十分な資金が回っているのならまだしも、ということを考えたいものです。



ジャーナル2013年7月号

2013-06-16 12:59:00 | 書評
なかなか「正常運転」にならないですが、7月号の書評です。

特集は大都市圏の「快速」電車、と題して、無料速達列車を紹介しています。JRでは「快速」、私鉄では「特急」などいろいろ、というこのカテゴリーは、意外と定義がないもので、特に趣味誌の場合はその主たる市場でもある私鉄ファンに遠慮している感じですが、JR寄りとも言えるジャーナルは今回、スパッと「快速」と定義しています。

個別のテーマはちょうど「旬」な東横線と東上線、そして京成本線と南海高野線、阪神と、変化球気味に攻めてきました。特に京成と阪神と来たあたりはこの書評としても不足は無い感じです(苦笑)

東横線は前月に乗車ルモェあるので、今回はダイヤ面の解説がメイン。「隔駅停車」と揶揄されていた急行しかない、ある意味沿線だけの需要に特化した形態から、湘南新宿ラインによる刺激もあるとはいえ、都市間輸送を強く意識した輸送形態へのシフトを解説していますが、いつの間にか優等が倍増(東横特急が純増)でそれが定着、さらに10連化という状況はまさに「奏功」「成功」でしょう。

東急側のコメントにあるように、通過する乗客が増えると、沿線に外の目が向くようになる、という効果は確かなわけで、さらに直通で行きやすくなることで、という相乗効果の好例です。ただ、記事にはないですが、沿線からの目的地が渋谷から新宿にシフト、というオール東急で考えたら苦虫という事態もあるわけで、渋谷を魅力ある目的地として整備するということが今後の課題でしょう。

東上線はなかなか取り上げられにくい路線ですが、今回を機に、という感じ。準急中心から急行、さらには快速へという優等区間を伸ばす格好でのシフトは西武池袋線と似ていますし、末端区間での等間隔性を重視して、ターミナル側での優等間隔を不均衡にしていることも似ていました。(西武池袋線は今回の改正で地下鉄直通が快急になったこともあり、池袋口での間隔と、所沢以遠での間隔を両立させるようになった)

川越以北での等間隔の問題や、中途半端に急行を増やしていたため、ふじみ野での緩急接続が十分でなかったのを改めたとか、細かい部分へ目配りした記事は分かりやすいです。

南海高野線は上記2社がダイヤ解説を専らにしていたのに対し、現地の様子を多めにして、フローの観察になっており、馴染みの無い首都圏などの読者には親切です。
興味深いのは夕ラッシュ時の様子で、新今宮と天下茶屋の乗りこみを失念してなんばでの混み具合で「高をくくる」感性は困りますが、乗客の大半が林間田園都市まで向かう足の長さは良い情報ですし、そこから橋本までは閑散という部分は、もう少し利用があると思っていただけに意外です。

さて、京成と阪神です(笑)
まずは京成。敢えて本線というのは無料優等の様子を見るという趣獅ネら当然ですが、スカイアクセスに話題を奪われている中で本線に脚光というのはいつ以来でしょうか。

朝夕と日中で都交と上野で優等の志向がガラッと変わるという沿線民であれば常識の紹介に加え、青砥以東では20分ヘッドに特急系と普通が3本ずつという6分40分間隔を、押上線の10分ヘッドに合わせるための「時間調整」への言及はしっかりしてますね。
ただ、時間調整はもっぱら市川真間$ツ砥間であり、いわゆる「速特急」と通特が市川真間と小岩で普通を抜くのに対し、「遅特急」は小岩で抜かず後走りになることで時間を稼ぎ、前後の微調整もあり、3分20秒を捻出しています。このあたりは阪神の「黄直特」が5分の時間調整を停車駅の増加で対応する反面、夕刻の下り赤直特が10分ヘッドから三宮~須磨の時間調整で12分ヘッドに持ち込む荒業に似ています。

ただ、八千代台での緩急接続はユーカリが丘対策もありますが、「現在は」ではなく、それこそ2代目通勤特急の登場前から特急は八千代台で緩急接続をしています。
あとは総武線並行区間の解説で、通過追い越しの理由をスピードアップにしていますが、そもそも退避駅が特急通過駅になっているうえ、高砂、青砥の容量の問題もあり、緩急接続を謳えないのです。そのため、市川市内や江戸川区内からの通勤利用は非常に不便で、菅野から都心方向だと市川真間と小岩で抜かれて普通乗り通しか普通同士の乗り換えという話にならない状態であり、並行区間の利用が少ないから成立している、いや、不便にして見切っているから成立しているという面もあります。

日中の緩急接続も、東中山のそれも市川市内の利便性を20分に1本は確保してるものですし、小岩で通過追い越しになる問題も、もともと特急が20分ヘッドになった1991年3月改正当時は高砂接続がメインで、基本的に下りが2本に1本小岩退避だけだったように、高砂での接続を本来考えていました。
記事で言及がないのは遺憾ですが、この主因は金町線であり、2面4線に見えて、実は線内折り返しの金町線が1線を占拠するため、緩急接続に使えないという時代が長く続き、金町線分離後はスカイアクセスとの接続優先になった、というのが正解です。

次いで阪神です。こちらも現地の様子を多くしています。
平日日中と休日をベースにダイヤを語っていますが、ならば休日ダイヤにある日中の「5分ズレ」の問題とか、首都圏側の記事ならそこまで目配りしているのにあと少しです。

車両解説はお馴染みの感じですが、写真にもある8000系1次車は山陽への直通をしていない(機能的には可能ですが運用例がない)ので、「可能だ」は正しいですが、実情にはあっていません。


(2009年3月改正前日。三宮始発最終日の区間特急)

ダイヤ解説ですが、直特から出屋敷~鳴尾は千船で通過追い越しした普通へ、というのは正しいですが、梅田で見れば、この普通には後から来る急行が尼崎で接続しており、直特よりも急行に乗る方が便利です。なんば線開通でも維持された西宮以東の下位優等列車ですが、急行の混み具合をみると、特急を野田に停車して急行を削減、という事も視野に入れる時期かもしれません。

なんば線関係のダイヤも、御影で快急が通過追い越しになる部分につき、特急がサメ[トして魚崎、御影の乗り換えで通過駅の利用が考慮されていますが、朝ラッシュ時のみ順序が逆になっており、石屋川以西では御影で通過追い越しを食らった快急の次(12分後)の快急か、直特に乗り尼崎で普通に乗り換えという部分の解説が欲しかったです。

あとはJRとの比較をしていますが、どちらかと言うと中間駅重視は複々線を活かしたJRが先行しており、芦屋での緩急接続で中間駅の利便性が高く、逆に都市間輸送重視の私鉄が東灘区や灘区などで総崩れ状態になった経緯がまずあるわけで、スピードで勝てない都市間輸送からの転身も苦渋の選択です。
ただ阪神はなんば線が独自路線として定着しているので、ミナミへの速達サービスを重視しだしていますが、一方でなんば線効果が明確に見られるのは西宮以東であり、神戸市内ではなんば線対応の改正で不便になった面が多く、特に対三宮ではJRへの再シフトも出ています。


(2006年10月改正直後はこんな呼び込みも)

ルモニしては平日上りの尼崎で混雑の平準化が出来ているようで、このあたりは区間急行運転開始時に余裕をアピールしていたことを思うと、だいぶ良くなった感じということが分かったのも収穫です。まあ区間特急は直特のサメ[トというよりも、区間急行とセットでかつての準急のサービス、という感じですが。

特集を手厚く見たので後は駆け足。
キハ40系列の話は酷評されることが多い同系列を比較的客観的に見ていますね。エンジンと車体の組み合わせのアンバランスのわけとか、エンジン換装でバランスが取れたという現状への言及として。
電車と違い、エンジン換装による性能向上という裏技が存在したことが、国鉄型でありながらいまだに多数が現役という理由でしょう。

電化までのつなぎというよりも、アコモ優先で馬力不足だった設計が、エンジン換装でバランスが取れてしまい、新系列気動車のアドバンテージが逆に見出しづらくなった。それがキハ40系列が重宝されている本当の理由でしょう。電車でいえば113系にVVVF改造をするといった足回りの一新を行ったようなものですから。

しかしエンジン換装でこうも変わるというあたり、五式戦のエピソードを思い出しますね。


(アコモ改造済ですが... 山陰線東浜)

そしてもう一つ。筑豊電鉄の話題。
西鉄北九州線にあわせてインターアーバンのはずが路面電車規格にしたのに、西鉄の廃止で中途半端な「軽電車」です。広電宮島線のような路面電車の延長、という感覚も薄く、それでいてステップ付きで、車掌がいてガマ口鞄を下げて両替するというどこか懐かしい様子はもう少し脚光を浴びてもいいのに、実に地味です。
もっともICカードの導入はなく、バリアフリー対策も不十分というのはコストの問題が大きいとはいえどうかと感じる部分ですが。

しかし、LRTを喧伝する人たちは、ある意味LRTの古典的導入例とも言える筑豊電鉄をどうして注目しないんでしょうね。半世紀近い実績は伊達ではないのですが。




ジャーナル2013年6月号

2013-05-19 11:47:00 | 書評
せっかく先月は早めにしたのに元に戻った感じのタイミングで6月号の書評です。
特集は2013春 希望のニューフェイス、と観光に活路、の二本立て。まあニューフェイスも「しまかぜ」と「スーパーこまち」がいますから、観光列車が柱という感じです。

広報体制に万全を期したようで、一般メディアでも運転前から大きく取り上げられてきた「しまかぜ」、確かに汎用タイプに偏重した感があった近鉄特急で久しぶりのカスタムカーですし、何気に二階建ても織り込むなど内装も充実で、話題性も十分です。

式年遷宮に合わせてのデビューと仕鰍ッも十分ですが、気鰍ゥりなのは持続できるか、ということでしょう。絶滅危惧種になった伊勢甲特急、「伊勢志摩ライナー」もリニューアルで奮闘しているとはいえいわば忘却の彼方に近い状態ですが、「しまかぜ」がそうした逆風をはねのけて定着できるかどうか。
まあこのあと姫路城の平成の大修理完了を契機に姫路への臨時特急、というストーリーも見えていますし、何かしらのイベントが数年ピッチであれば、10年くらいは簡単に持ちますから、安泰かもしれません。

「はやぶさ」「スーパーこまち」は併結列車が目立ちますが、320km運転は単独運転列車のみという試乗派には悩ましい状況です。300km超となるとトンネル通過時の内壁の変化が「復活」するといった細かい観察はャCントですが、一方で写真説明はあるのに本文言及がないグランクラスの状況はどうなんでしょうね。特殊なサービスを全列車で展開するという施策が2年経ってどうなっているのか。それを紹介、分析するのが「ジャーナリズム」なんですが。

余談ですが、盛岡や東京での子供連れの話、画一性が進む東海道新幹線ホームと好対照の様子は実際に見てますし、自分の子供を昔連れて行った経験があるだけによく分かります。こうした「ヲタ」ではない人気を「一生もの」にしていくのか。鉄道会社はもう少し真剣に考えるべきでしょう。

特集を二本立てにした原因は、ニューフェイスに「土木ネタ」が重きを占めたゆえであり、まずは副都心線~東横線相直から。京急蒲田の時もそうでしたが、切り替えを一晩中追うグラビアは見応えがあるものの、代官山などの取材が切り替え前オンリーなのが痛いですね。立ち会いルモメ集部として入れるべきでした。相直列車のルモ・黷驍アとが出来たんですから。

相直列車については、まだ実見していないので何とも言えませんが、最速達を配した西武の方が沿線の話題も大きいようです。やはり「速い列車」がそのまま横浜に行く、というのは「遠くに見えたけど実は」という感覚を得てもらう第一歩を踏み出すきっかけです。

あとは小田急下北沢の切り替え。工法や工区の関係で急行線からの建設となり、世田谷代田が「仮設」というのも興味深い情報です。ミニ特集的な記事ですが、望遠を活用した写真が小技が効いています。

第二特集は「観光に活路」ですが、そもそも論として「地域の足を守る」として必要な規模の交通機関を維持する、という大前提において、「適切な規模にする」のか「観光対策でてこ入れする」のか、という問題があるわけです。その原資が税金であり、他の福祉や教育といった分野の原資とトレードオフの関係になる以上、本来はそこを厳格に問うべきですが、鉄道があればいい、という人が多く、そこがお留守になっています。

特集のメインとなった「おれんじ食堂」はまさに税金の使い方が問われるわけで、水俣病の現地対策費でなぜ観光列車なのか。地元振興という大義名分は理解していますが、患者認定の問題で今なお却下される人がいるような状況で、限られた予算からこういう支出は許容されるべきなのか。運賃込みとはいえ1万5千円近くするパッケージツアー用という非常に特殊な用途なのです。

震災の復興予算が、被災地以外の「防災対策」に使われることでも「流用」と批判されているご時世、水俣病対策とおれんじ食堂の整合性は疑問です。

秋田内陸縦貫鉄道の記事では、生活路線、観光路線、基幹産業という考え方が提示されていますが、公共交通の適切な規模での維持、つまりバス転換という現実解を否定して鉄道存続が目的化している証左とも言える理論です。3セク鉄道を地域の「産業」とすることで雇用や経済を回すという発想は否定しませんが、それはタコが自分の足を食べているようなものです。税金というカンフル剤で何とか食べる分見合いの足が再生されているのですが、税金が無尽蔵ではない以上、食べ尽くしてしまうか、税金投入を増やすしかない悪循環に陥るリスクを見据えて行動しているのか。移動はあくまで手段であり、手段は適切な規模を選択すべきなのです。

もう一つは秩父鉄道。輸送力格差のせいとはいえ、影森での系統分割というのもどうなんでしょう。
西武線からの入り込みを考えると、御花畑、影森と連続乗り換えというのはなんとも不細工です。

紹介された題材の選択は多彩でテーマもいろいろあっていいのですが、やや無批判が過ぎるというか、一歩間違えるとステマというかスャ塔Tード記事に見られかねない感もしてきます。批判ばっかりすればいい、というわけではありませんが、観光に「活路」、しかもそれが観光輸送ではなく鉄道自体を観光目的化する、という時点で「公共交通」なのか「アトラクション」なのか、という問題が、税金投入の問題がある以上、避けては通れないのです。

昔のジャーナルであれば、紹介記事だけだなく、総括記事を1本入れていましたが、それがないのが残念です。

あとは鹿児島交通廃線跡巡り。災害運休から30年、部分復旧後の全線廃止から29年が経つというのに、いい感じで枯れて、また残っている様子が伝わって来ます。
気になるのは加世田の記念館で、保存活動云々とありますが、そもそも論としてSCの拡張で一般公開を事実上中止して収納してしまったような状況で、「保存活動」とはどうなんでしょう。いわさきグループの交通事業への「姿勢」というものが出ている、というネガティブ評価が先に立ちそうなものですが。

三陸鉄道南リアス線の一部区間復旧ルモェ出ていましたが、導入された新車は、今回の震災で内外から寄せられた義援金のうち、クウェートからの資金を活用した「国際親善」のシンボルです。
それは確かに美談ですが、北リアス線に残る車両と、1両だけ南リアス線に残った車両と併結できないとか、いささか首を傾げる部分はどうなのか。BRT化で確定しかねないとはいえ、いちおう接続するJR線を考えると、JR車両との併結はどうなのか。いや、根本の部分として、長期不通でお茶を挽いているJRの車両を借り入れるというような発想は無かったのか。

大きな犠牲から立ち直っての復旧を中古車で、というと心情的抵抗があるでしょうが、予算が潤沢にあるわけでもない現状を見ると、互換性がない新車の投入は、高規格道の整備よりも「問題」にすべきですが、鉄道至上主義が支配しているのか、そのあたりは無批判なのが気になります。



ジャーナル2013年5月号

2013-04-07 15:06:00 | 書評
5月号の書評です。ここしばらく月遅れが常態化していたので今月は早めに、というか、これを逃すと2月遅れくらいになるので...(苦笑)

特集はJR北海道とJR九州の南北2社。たまにはJR四国のことを思いだしてあげて下さい、というチャチャはともかくとして、「三島会社」のカテゴリーながら対照的な両社です。

「四国抜き」になったのもこの記事の存在感では、というのが苗穂と小倉、両社の主力であり、国鉄時代からの伝統の工場のルモナすが、これで十分という感じです。
2011年12月号の車両メーカー特集と対比すると、メーカーとしての工場と、メンテナンスを専らにする工場の違いがはっきりとしており、運転現場と密接に結びついた「現場」ならではの様子が興味深いです。

ラインに載せて製作する「だけ」と言ったら叱られますが、流れ作業の新車製造と違い、実際に使われている車両のメンテや改造は、それこそ個別の車両に応じた作業が必要なだけに、別世界です。
非凡な視点と評価したいのが、苗穂の砂型鋳造工場。部品メーカーなどから購入すれば、と思うでしょうが、こうした「一品モノ」に近い部品を内製出来るのと出来ないのとでは、製造やメンテのコストに大差が付きますし、車両のクセに応じたきめ細かい対応が出来なくなります。

逆に気になったのが作業環境というか安全衛生の話。塗装ラインで作業中の入場には専用の装備が必要と解説していた苗穂に対し、小倉では「演技」ですが塗装作業中のシーンがありますが、やや軽装備の印象。濃色の苗穂に対し淡色の小倉という作業着ですが、目立つことで安全意識を高めるという意味が承知していますが、小倉の汚れの度合いが大きいようです。あと、SL全検時の部品の煤、汚れ落としに「ショットブラスト」を使うという話。作業着が真っ黒になるとのことですが、ショットブラストを使用する職場は、粉塵飛散防止の対応が必要と法令で規定されており、作業着の汚れが粉塵付着に起因するのであれば、ちょっと問題では?

ルモフ方は地味な乗り継ぎを両社1本ずつと、室蘭地区での「気動車化」と福岡都市圏の車両の話。
小樽から稚内のルモフ前半は、4時間半かけて電化区間を走り抜く711系鈍行を軸に、途中特急などで先回りしたり追いかけたりという道中。その先宗谷線は名寄で1泊しての乗り継ぎですが、特急を絡めて効果的に、かつゆったりと回っています。


(キハ40-700というのは22年前と変わらない快速「なよろ」)

余談ですが、稚内が1線棒線になっているとは。留置施設がある南稚内で交換可能ですし、駅舎自体は複合施設になったとはいえ、肝心な鉄道の「重み」がこういうところに出ているのでしょうか。


(鹿児島、東京、函館、札幌からのキロ数が書かれていた昔の稚内駅)

学園都市線電化の影響もあり、室蘭線から711系を召し上げてまで電車を確保していますが、711系が未だ現役、しかも非電化というのですから、ローカルの体質改善が未だしです。前に留萌線で「積み残し騒動」を起こしたように、余裕がないというか、無理やり回している感じです。
ちなみにせっかく当たったのに、3扉改造車の写真がないのはどうなんでしょうね。


(私も3扉車の写真はありません。2011年7月、深川にて)

室蘭線の「PDC」ですが、450馬力のエンジン搭載で最高速度110kmという711系と同等のスジに乗るのを見ると、51型客車改造侮りがたし、というか、電車化するのであれば、よほどの差別化をしないとコストパフォーマンスが問われる、カツカツでローカルを回している会社ゆえ、その当たりのコスト意識を問うべきでしょう。


(電化開業直前。2011年7月の新琴似でのキハ143)

九州のルモヘ門司港から早岐経由長崎への道中。出だしは福北間の短距離特急「きらめき」ですが、黒崎や赤間など途中駅の需要が多いのは承知はしていますが、新幹線がある区間で、敢えて有料特急を日豊線系統以外に設定して毎時3本を確保するのはどうなんでしょう。ローカル輸送が都市間輸送のしわ寄せを食っているのを解消する、という目的も新幹線建設にあるはずですが、そういった本来するべき「棲み分け」ではなく「食い合い」を挑むのも、新幹線と在来線が別会社という「弊害」なのかもしれません。

会社が違っても、「ローカル」である新快速の整備に留めるJRWや、速達需要は新幹線に譲ったJREと比較すると、ちょっと違和感も感じる区間です。
ルモナは博多から乗り継いだ「かもめ」の割高感をさらりと書いていましたが、同じ会社なら棲み分けて、というのも分かる反面、大局的な視点が期待したいところです。


(篠栗線の817系。博多、2010年8月)

長崎線に入るとローカル色が濃くなり、肥前山口の分割併合が昔語りになった話とか、オールドファンには懐かしい「門ハイ」の事実上の復活とかをちりばめて西下しています。
最終ランナーはキハ67系ですが、1975年の新幹線博多開業時に接続快速網の整備という触れ込みで筑豊・篠栗線に投入された系列は40年目が見えてくる「ベテラン」ですが、地味に頑張っています。

あとはN700Aについて。ヘビーユーザーでも「どこかが違う」と何となく感じるレベルの変化だそうですが、ヘビーユーザー中心の路線だからこそ、微妙な進化であっても、遊び心としての変化くらいは欲しかったです。座席モケットに変化を出したのであれば、色も変えてしまえば、「今日は赤いシートに当たったよ」「それはN700Aですよ」という話題の提供にもなりますし。
このあたりは詰め込み仕様だと「劣化」すら目立つのに、新型登場!と787を売りこんでいるANAと好対照ですが、もう少しアピールする何かが欲しかったです。


(詰め込みモードは快適でないANAの787)

小ネタとしては山手線の「ミニマムガード」が秀逸。1.5m制限のガードはクルマでこそ通れますが、歩行者にとっては苦痛ですし。


(さらに低い1.4M制限。阪神・青木°寫闃ヤにかつて存在)

そして上越線の183系。「とき」が去って30年余り、183系の波動用車両格下げにより「復活」したという話です。


(1981年当時の「とき」)

知識という意味で有益だったのは、齋藤氏の「海外鉄道事情」。フロリダ半島先端のキーウェストまでの「海上道路」が、当初は鉄道だったという話。1912年から35年までの短い間の運転で、跡地が今の道路橋とのことですが、残っていれば是非乗りたかった区間でした。
ただ、「廃止」原因がハリケーンというのは分かりますね。強さや被害は半端ないですから。