戸籍の読み仮名の登録が始まりましたが、同時にキラキラネームに多い当て字の規制も事実上スタートしました。
おおむね好意的に受け入れられていますが、一方でネットで出てきた苗字の異字体がややこしいという外国人の主張に対して文化がどうのと持ち出して批判しているのを見ると、見事なダブスタですね。
先祖代々の思いがこもった字体、ともっともらしいことを言う人が多いですが、そもそも江戸時代は「名字帯刀」というように苗字が許されたのは武士階級など一部だけでした。1875年に平民なども苗字を名乗る義務を課して以来の話に過ぎず、ちょうど150年の歴史「しか」ありません。それ以前に苗字を名乗っていたのは人口の6%程度という話もあり、あっても「蔦屋重三郎」のように屋号を名乗っているケースでしたからね。
この明治初期の苗字義務化の際に、当然手書きで申請され、手書きで登録した際にいろいろな場面で書き間違い、写し間違いが発生しています。名前ですら役所が写し間違えて「本名」は実は違う、という人も少なくなかった時代です。
異字体が多いケースは申請、登録時の「誤記」もあるわけで、手書きですからそれがそのまま原簿になって公式な苗字になっています。
一方で「常用漢字」というものがあるわけで、その起こりは大正年間です。法律など公文書は常用漢字を使うという制約があるわけですが、一方で地名を中心に広く使用されている漢字を中心に常用漢字(一時期は「当用漢字」)ではないため、公式にはかな交じりの表記になって間が抜けた表現になるケースも存在します。(埠頭の「埠」があり、制約があるため首都高のランプ名は「本牧ふ頭」である。また金融問題が炎上したころの「損失補填」も「損失補てん」だった)
ただ難しいのは常用漢字を使った「当て字」が発生してしまい定着したケース。障害者の「害」はそもそも妨げを意味する「碍」だったのが常用漢字でないので同音の「害」となり、「害」はあんまりと「碍」に戻す趣旨で「障がい者」とかな交じり表記になるという迷走になっています。本来は意味を保った別の表現にすべきで、今の推理小説を戦前は「探偵小説」と言っていましたが、「偵」の字が常用漢字から外れたため、最初は「探てい小説」としていたが締りが悪いので「推理小説」と言い換えて定着しています。
本来は戸籍も公文書です。名前のほうは人名漢字として常用漢字よりは多いが制約を戸籍法で課しているのに、苗字はあるがままにまかせてしまっています。1940年に皇紀2600年を誇った我が国において終戦時で70年程度の歴史に過ぎないというのに。
こういうと中国の簡体字を持ち出して意味も違う文字になるのは文化の破壊とか言う知ったかが出てきますが、あれは漢字を完全に表音に寄せたものであり、簡略というより統合です。龍も優も尤も音は同じ(近い)ことから龍や優の旁は尤になっているような感じです。中国北京の通貨は「人民元」ですが、これも圓の「員」「元」と同音だからと国構えの中が元になり、通貨としては「元」となっています。日本は「丸い」という意味を活かして円の文字にしていますが。ちなみに元が一緒だから通貨記号では日本円も人民元も¥ですね。(「円」は「EN」ではなく「YEN」です)
あとは日本でいうところの新字体がなく、旧字体が残っていたり、旧字体での簡略化とかカオスですから。(転は旧字体だと轉ですが、簡体字では旁の専を略した文字で転より複雑です)
漢字の制約は手書き時代に覚えるべき、使うべき漢字の数が徒に増えることを防止する目的がありましたが、ワープロ、パソコンの普及でその面での制約、弊害が劇的に減少したこともあって、旧字体の復活まではいかずとも漢字で書けるところは漢字で書く、という流れに転換しています。しかし「ふ頭」を「埠頭」とするのはいいんですが、問題は異字体で、さすがのワープロ、パソコンでも登録外(機種依存文字)になっていたりします。それでもワープロ専用機時代のように偏と旁などの組み合わせで多くの異字体までカバーできる状態はさすがになくなっています。
本来は戦後の戸籍法の際にすべきでしたが、苗字の「統合」をすべきでしょう。簡体字のような人工物ではなく、逆に人工物である異字体の統合です。武士階級由来の伝統的なものも確かにありますが、じゃあ大昔は万葉仮名だったとかもっとカオスだった可能性もあるわけで、どこかで割り切らないといけません。
異字体でも「渡辺」「斉藤」に関連する異字体のように件数が多い異字体だけは残してもいいでしょうし、反面旧字体は常用漢字にすべきでしょう。
メディアの世界では常用漢字縛りで本当の苗字を常用漢字ベースで書き換えていましたが(長嶋茂雄→長島茂雄、若嶋津→若島津など)、それに対するクレームはどのくらいあったのか。公的にそれを行えば反論の余地もないですし。
歴史上の人物まで変更する必要はないですが(常用漢字での記載がなかった)、いま存在する人からの変更であれば、法律の適用ということで強制できますし。戸籍法で人名漢字縛りを苗字にも適用とし、改定するだけです。ちょうど戸籍の読み仮名の確認という「洗い替え」「棚卸し」をしているのですから、最大のチャンスです。
おおむね好意的に受け入れられていますが、一方でネットで出てきた苗字の異字体がややこしいという外国人の主張に対して文化がどうのと持ち出して批判しているのを見ると、見事なダブスタですね。
先祖代々の思いがこもった字体、ともっともらしいことを言う人が多いですが、そもそも江戸時代は「名字帯刀」というように苗字が許されたのは武士階級など一部だけでした。1875年に平民なども苗字を名乗る義務を課して以来の話に過ぎず、ちょうど150年の歴史「しか」ありません。それ以前に苗字を名乗っていたのは人口の6%程度という話もあり、あっても「蔦屋重三郎」のように屋号を名乗っているケースでしたからね。
この明治初期の苗字義務化の際に、当然手書きで申請され、手書きで登録した際にいろいろな場面で書き間違い、写し間違いが発生しています。名前ですら役所が写し間違えて「本名」は実は違う、という人も少なくなかった時代です。
異字体が多いケースは申請、登録時の「誤記」もあるわけで、手書きですからそれがそのまま原簿になって公式な苗字になっています。
一方で「常用漢字」というものがあるわけで、その起こりは大正年間です。法律など公文書は常用漢字を使うという制約があるわけですが、一方で地名を中心に広く使用されている漢字を中心に常用漢字(一時期は「当用漢字」)ではないため、公式にはかな交じりの表記になって間が抜けた表現になるケースも存在します。(埠頭の「埠」があり、制約があるため首都高のランプ名は「本牧ふ頭」である。また金融問題が炎上したころの「損失補填」も「損失補てん」だった)
ただ難しいのは常用漢字を使った「当て字」が発生してしまい定着したケース。障害者の「害」はそもそも妨げを意味する「碍」だったのが常用漢字でないので同音の「害」となり、「害」はあんまりと「碍」に戻す趣旨で「障がい者」とかな交じり表記になるという迷走になっています。本来は意味を保った別の表現にすべきで、今の推理小説を戦前は「探偵小説」と言っていましたが、「偵」の字が常用漢字から外れたため、最初は「探てい小説」としていたが締りが悪いので「推理小説」と言い換えて定着しています。
本来は戸籍も公文書です。名前のほうは人名漢字として常用漢字よりは多いが制約を戸籍法で課しているのに、苗字はあるがままにまかせてしまっています。1940年に皇紀2600年を誇った我が国において終戦時で70年程度の歴史に過ぎないというのに。
こういうと中国の簡体字を持ち出して意味も違う文字になるのは文化の破壊とか言う知ったかが出てきますが、あれは漢字を完全に表音に寄せたものであり、簡略というより統合です。龍も優も尤も音は同じ(近い)ことから龍や優の旁は尤になっているような感じです。中国北京の通貨は「人民元」ですが、これも圓の「員」「元」と同音だからと国構えの中が元になり、通貨としては「元」となっています。日本は「丸い」という意味を活かして円の文字にしていますが。ちなみに元が一緒だから通貨記号では日本円も人民元も¥ですね。(「円」は「EN」ではなく「YEN」です)
あとは日本でいうところの新字体がなく、旧字体が残っていたり、旧字体での簡略化とかカオスですから。(転は旧字体だと轉ですが、簡体字では旁の専を略した文字で転より複雑です)
漢字の制約は手書き時代に覚えるべき、使うべき漢字の数が徒に増えることを防止する目的がありましたが、ワープロ、パソコンの普及でその面での制約、弊害が劇的に減少したこともあって、旧字体の復活まではいかずとも漢字で書けるところは漢字で書く、という流れに転換しています。しかし「ふ頭」を「埠頭」とするのはいいんですが、問題は異字体で、さすがのワープロ、パソコンでも登録外(機種依存文字)になっていたりします。それでもワープロ専用機時代のように偏と旁などの組み合わせで多くの異字体までカバーできる状態はさすがになくなっています。
本来は戦後の戸籍法の際にすべきでしたが、苗字の「統合」をすべきでしょう。簡体字のような人工物ではなく、逆に人工物である異字体の統合です。武士階級由来の伝統的なものも確かにありますが、じゃあ大昔は万葉仮名だったとかもっとカオスだった可能性もあるわけで、どこかで割り切らないといけません。
異字体でも「渡辺」「斉藤」に関連する異字体のように件数が多い異字体だけは残してもいいでしょうし、反面旧字体は常用漢字にすべきでしょう。
メディアの世界では常用漢字縛りで本当の苗字を常用漢字ベースで書き換えていましたが(長嶋茂雄→長島茂雄、若嶋津→若島津など)、それに対するクレームはどのくらいあったのか。公的にそれを行えば反論の余地もないですし。
歴史上の人物まで変更する必要はないですが(常用漢字での記載がなかった)、いま存在する人からの変更であれば、法律の適用ということで強制できますし。戸籍法で人名漢字縛りを苗字にも適用とし、改定するだけです。ちょうど戸籍の読み仮名の確認という「洗い替え」「棚卸し」をしているのですから、最大のチャンスです。