庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

適切な規制強化が経済成長を促すことを認識すべき。 

2010-02-16 | 交通問題・自動車
政府の規制が強化されるという情報が入れば、産業界はすぐに抵抗の姿勢をみせる。
自動車業界も例外ではなく、安全性の規制や環境面の規制が必要となって、検討が開始されるたびに、反対するためのロビー活動が活発になる。
規制の強化は、経営陣にとっては自分の責任が重くなる兆しであるから、先天的に規制強化には、拒否反応が働くのである。

しかし、歴史を振りかえってみると、自動車業界ほど規制に反対しながらも、規制強化の恩恵を受けてきた実例が多く存在している。
新進の経済学者の中には、この規制強化と技術革新、生産品質の向上、経営体制の刷新が関係するとした経済理論に取りこめないか、を研究課題としているケースもある。
つまり規制の強化を機会に、今までのレベルから一気にステップアップ出来る、いや、ステップアップをしなければ、乗り越えられない事態にさらされることが、技術革新を加速するのである。

解りやすい事例では、「自動車排気ガス規制」があり、これは、当時の自動車から排出される物質[CO,NOx,HC]を、現状のレベルから、1/10に引き下げる規制強化である。
これには、自動車企業の総力をあげても、達成できる見通しがなかったために、反対の声をあげたが、当時はアメリカ政府の方が先行して規制を強化する動きがあり、日本政府もそれに合わせることになった。
結局、アメリカの方は、ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)が全社とも、達成不可能として、政府に圧力をかけて規制を緩めたり、先送りをさせた。

日本の企業は律義に頑張って、規制をクリアーする技術を間に合わせて、不可能と言われた規制レベルを実現し、それを機会に自動車の品質レベルは目を見張るほど、格段に向上していった。
本家のアメリカに輸出して実績を重なるうちに、日本車の品質の高さと、燃費性能の良さが消費者に認められて、自動車先進国の市場に確たる地位を築いていった。
この排気ガス規制がなかったならば、どうだったであろうか。
多分、日本の自動車企業の技術レベルは未だに世界の2流であったかもしれない。

また、規制の強化によって、自動車に使われる新機構の部品が多く発生してきた。
これは自動車の製造コストを上げることになるが、消費者はそのコストアップ分をモノともせずに、排気ガスが改善され、品質向上した自動車を喜んで購入することになる。
新規に必要となった部品製造の分野は、雇用機会も増えて、地域の経済の活性化に貢献してきた。
つまり、規制の強化は、企業に革新の必要性を迫り、結果として技術力、管理能力を高める。
さらに、新規の必要な付加価値のある部品事業を創出して、社会全体が潤うようになる。

この現象は、今の経済学ではいまだに、理論化出来ていないので、経済動向の予測や経済政策の検討には盛り込めていない。
学者の理論の方がどうしても遅れるのはやむを得ないが、理論化出来ていないから、それを無視すると言うのが通るわけがない。

だが頑迷な経済学者は、規制の強化は経済の足を引っ張るといい続けている。(以下次回に)
 

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