庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

林業活性化とバイオマスエネルギー産業の育成が不可欠。

2010-03-30 | 森林・林業
温室効果ガスの削減に必要な産業に集中的に投資をして、経済の活性化を図って雇用を生み出す政策が、日本の急務であることは異論がない。
再生可能エネルギーの産業への投資を増やして、化石エネルギーの代替をする技術は、急速に進化をして、国策としての位置づけも明確になってきた。
しかし、その中で【バイオマス発電・熱利用】の分野については、国の計画としては、2005年から2020年の15年間をかけても、『1.77倍』程度の増加しか、見込んでいない。

この軽視する姿勢は、どこに原因があるのか、もう少し掘り下げて書いておきたい。
日本の林産物資源の自給率は2005年時点で、2割程度に落ち込んでいる。
林産物資源が不足しているから輸入に頼っているわけではない。
日本は国土の7割近くは森林地帯であり、林産物を収穫する為の人工林は、全森林面積の4割に相当する1000万ヘクタールもある。

比較する国として、ドイツを例にとると、ドイツは全森林面積が1100万ヘクタールあり、その林産物を利用して、林業と製材業、木質バイオマス利用産業などを含めて、売上高は26兆円の規模があり、関連産業の雇用者数は132万である。
これはドイツ国内の自動車産業の雇用者数の75万人を大きく上回っている。

日本は長年にわたって、林業を衰退産業扱いして、国内産の林産物産業を育成してこなかった。
林業に従事する雇用者は、60万人の段階から、今ではわずか6万人にまで減少している。
EUの林業振興国では、森林における蓄積量(樹木の総体積)に対する年間の伐採利用量は、1.5~2.5%であるのに、日本では0.5%でしかない。
人工林を対象にして伐採利用量をもっと増やすことは、十分に可能な蓄積と、年々の成長量は見込めるのである。

日本の林業に重点投資をして、伐採利用量を4倍に増やすことは可能であり、それによって、ドイツ並みの林業関連産業を生み出せば、100万人以上の雇用の増加を見込めるのである。
そのために必要な技術開発と事業の拡大の方策は、すでに見通しがついている範囲であり、来年からでもとりかかることが出来る。
何が不足しているかと言えば、森林と林業、それに【バイオマスエネルギー技術】に対する関心が不足しているのである。

民主党政権の中では、管副総理が林業の活性化を打ち出して、雇用の創出を林業関連産業への重点投資を主張しているが、他の政治家で林業を理解している人は殆どいない。
今回の政府の打ち出している、「再生可能エネルギー」の大増設の方針でも、「バイオマスエネルギー」関係は、まったく力が入っていない。
肝心の農林水産大臣も林業のことはわからず、エネルギー担当の経済産業大臣も、知識は殆どない。
せめて、ドイツやオーストリアなどの、先進国の林業とバイオマスエネルギー関連産業のことは、最低限でも理解しておいて、経済活性化の政策検討をするべきであろう。

不勉強な官僚ばかりに取り込まれていては、空白の20年をさらに延長することになる。