京都のどこかのお寺の 楓は 種子をつけて
風の吹く晴天を待って その羽を広げて 遠くに飛んでいこうとしている。
その種子は 親木の元に落ちてもよいのだが
なぜか「ヘリコプター状」の羽を持って 親から離れて遠くで生きるように
カタチが作られて いる。
天竜寺にて |
ニンゲンには 足が造られていて おまけにこの重たい脳は 電気を発見し 汽車を走らせたから
プロペラなど無くても 親から離れることが その意志によって 可能になっている。
しかし 親や家族から離れたくないのに
何かの意志によって あちらの岸に渡らなくてはならないことも ある。
たとえば「津波」だ。
今度の津波は 地球の何分の一かと思うような重量の水が
ある日突然やってきて あの街で静かに暮らす人々を連れて行った。
自然というやつは なぜか 良き人を 連れて行きたがる。
楓の種子がどこへ飛ばされていくのかは 風に聴く。
ニンゲンが この津波でどこへ連れて行かれたのか 海は答えない。