とうとう 花が咲かず 止め葉が出てしまった。
去年は こんなにきれいに咲いたのに。
蓮は仏教の花のようだし 闘病中の父は何と見るか思いながら
実家に庭にも 一鉢置いてきたのだった。
ある早朝 その開花に気付いた父は
「・・・ とうとう(自分は) 蓮の花の上に乗ってしまったよ」と
母に言ったそうだ。
手術をしたものの ひと月足らずで再発。
化学療法の効果も期待したほどでなく
残された治療法の限界を知った頃だ。
父には 何か決心をさせる 朝の蓮だったのかもしれない。
今年は 小さな蓮を妹の庭にも 置いてきた。
妹の蓮は 今日も開花して
「お父さんが やってきた」と小さな身の回りの現象に父を見つける。
私は 今年 蓮の花が咲かない ということの意味を考える。
咲かない という事にさえ 父を見つけようと する。
蓮の花など 闘病中の庭に持ってきたことを
本当は 怒っていたのかな。
なんで 妹の庭の蓮は咲き
私と 実家の庭の蓮は 咲かないのかと
まるで 子どものように 思う。
そして 父が亡くなったことに 私は傷ついている。
芽がでて 葉が伸び 蕾が膨らんで 花が咲く・・・・・
そして 枯れて いく。