なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

敗血症性ショック

2024年04月03日 | 感染症

 3月31日(日)は日直をしていた。午後5時前に施設入所中の77歳男性を施設職員が連れてきた。知的障害者の施設だ。

 その日は食事摂取が悪く、意識も低下していた。酸素飽和度を測定しようとしたが、測定不可能だった。全身に浮腫があった。

 救急室に入れて、ストレッチャーに乗せた。衣服を脱がせると、全身が紫色になってチアノーゼだった。発熱はなく、通院している医院から利尿薬(アゾセミド)が処方されていて心不全の増悪かと思ったが、どうも違う。

 血圧は最初100前後だったが、その後90台になった。ふだんは120くらいはあるので低下している。心拍数は120~130/分だった。

 通常の肺炎・心不全の悪化かと思ったが、胸腹部CTでは悪化するほどの肺病変は認めなかった。胸骨が骨折しているようでその周囲に軟部組織が腫瘤状になっていて空気もある。表面からも握雪感がある。

 骨折周囲に膿瘍を形成しており、ガス産生菌のようだ。敗血症性ショックだった。

 末梢血管は全く見えず、採血は動脈から採取した。酸素5L/分で酸素分圧63とぎりぎりだった。点滴は大腿静脈は大分深い位置にあり、結構動脈が被っている。首は硬くて、展開し難い。

 当直は血管穿刺の上手な腎臓内科の若い先生だったので、相談してみた。すると、首を右側に向けると左頸部は出せるので、左内頚静脈からCVカテーテルを挿入してくれた。

 酸素吸入が始まり、点滴が入り始めると、チアノーゼが次第にとれていった。酸素飽和度も指では測定できないので、前額部での測定になったが、94~95%になった。

 

 家族は甥と姪が来てくれた。事情を説明して、首の硬さから気管挿管は無理などは判断していたので、病状悪化時はDNRとさせてもらった。

 来院時は全く発語がなかったが、処置をするにつれて声を上げるようになった。甥は私のことはわかっていないと思います、といっていた。それでも翌日も病院に顔をみせてくれた。

 

 血圧が100以上になって、チアノーゼが改善すると、今度は全身浮腫が目立つ。利尿薬の静注も追加することにした。

 翌4月1日午後に検査室から、血液培養でグラム陰性桿菌が検出されたと報告がきた。まさに菌血症・敗血症だった。

 菌種からみると、胸部打撲・骨折・皮膚挫創からの表皮からの感染ではない。尿路感染症など多臓器の感染症から、菌血症となって、胸骨骨髄炎・骨破壊・周囲膿瘍となった可能性がある。そうなると化膿性脊椎炎などもあるのか。

 

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