Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

香港・乗り物パラダイス【1日目(2)】トラムと地下鉄に多様性を見る

2017年07月14日 | ■旅と鉄道

 ホテルから、地下鉄の上環駅へ歩きました。周辺は、乾物屋さんが集まっていることで有名な界隈。いい匂いが漂ってきます。
 最初は珍しがっていた竹の足場は、すぐに見慣れてしまいました。手すり先行型だ、落下物防止巾木だと、年々厳しくなっている日本の足場とは異次元の世界です。


 上環は、トラムのループ線がある街。一部系統は上環が終点で、ループをぐるりと回って折り返して行きます。
 時にダンゴ状態になる大柄なトラム、楽しくなってしまう光景です。


 しかしトラムは今日の夜以降、乗り放題になる予定なので、まずは試しにと地下鉄に乗ってみました。香港島内は東西にトラムと地下鉄港島線が平行しています。
 まず驚くのは、エスカレーターの早さと、電車の加減速の鋭さ。日本の感覚だと、足元がふらついてしまいます。とにかく迅速性重視で、これが香港人気質なのかなと勝手に理解してました。


 わずか1駅で、中環(セントラル)に到着。香港島中心部の駅でもあり、海を越え九龍半島へ直通する荃湾線との乗り換え駅でもあります。とにかく広々としたホームと、そこに溢れる人波に翻弄されました。
 ただ駅の位置はだいぶ深く、上下移動は結構な手間。距離によってはトラムを選んだ方が、ラクで早いことが後々分かってきました。


 地上に出れば、香港のシンボルといえる中国銀行タワーがお出迎え。風水上、ライバル銀行の運気を下げる方角に尖がっているそうです。
 確かにシンボリックだけど、風景に溶け込んでいるとは言い難い風貌ではあります。


 のんきに見上げていたら、突如大雨に見舞われました。参ったなと思っている間もなく、サーっと雨は上がり何事もなかったかのよう。無理に雨の中を出歩くより、雨宿りが有効であることをさっそく学びました。
 イギリス様式の建築物と、2階建てトラム。高層ビルが林立する中で、ほっとする風景です。


 ペデストリアンデッキを渡り歩き、香港公園まで出てきました。高層ビルがぎっしり並ぶ中にも、緑の多い公園が点在していてさわやかです。
 南国風の植物に、亜熱帯にいることを実感します。


 初めての土地では、まず高い所に登るべし、という都市計画の恩師の言葉に従い、ピークトラムの乗り場へやってきました。
 しかし、すごい行列。平日なのに、やはり香港の不動の名所であります。


 ピークトラムは、香港島最高峰のビクトリア・ピークへと誘うケーブルカー。ピーク・タワー入場券と片道乗車券がセットになったセット券(77HKD≒1,135円)を求めました。
 129年の歴史をほこるピークトラム。山麓の花園道駅はピークトラムの歴史を展示した資料館にもなっていますが、乗り場に早く行きたいので駆け足で通り過ぎる他ありません。


 ぎっしり人が埋めたホームに、山頂からのトラムが入線。ホームをぎゅうぎゅうに詰められるので整列乗車という概念はなく、扉近くの人から押し寄せます。
 こちらも遠路はるばる日本から来ている観光客。座席争奪戦は妥協せず、進行方向右側の座席をゲットしました。


 花園道駅を出発したトラムは、まずは山麓の住宅街の中を抜けていきます。
 日本のケーブルカーに乗り慣れた身として新鮮なのは、ケーブルカーなのに階段状の車内になっていないこと。普通の電車のようにフラットの床に座席が固定されているので、勾配がきつくなるほどに背もたれにぐっと押さえつけられます。


 次第に、緑が濃くなってきました。天窓も、緑に覆われています。
 窓が開いていることからも分かる通り、亜熱帯にありながら冷房は非稼働。標高が上がるほどに、風は次第に涼しくなってきた…ような気はします。


 右側を走り抜ける、下りトラム。ああ、自分はケーブルカーに乗っていたんだと、思い出す一瞬です。


 香港にいることが信じられないほど、山深くなってきました。


 木々の間から、テレビや本で見慣れた風景が見え隠れします。


 山頂駅に到着。ようやく、車内の全貌を見ることができました。


 出口は混んでいたので、下っていくトラムをお見送り。ものの数分で下っていく、文字通りのピストン輸送です。
 落ち着いた外観の車両は、スイス製なのだとか。そう言われてみればスイスの登山電車に似ている気もするし、かの地の電車はもっと丸みを帯びている気もします。


 山頂駅は駅ビル?状。いろんな店が入り、ちょっとしたショッピングセンター風です。
 コーヒーチェーンのパシフィックコーヒーは、ご覧のように絶景。展望台の入場料を払わずとも、ここでコーヒーを傾けるだけでも充分絶景を楽しめると思います。


 さらにエスカレーターを乗り継ぎ、上へ上へ(写真は下る時に撮影)。ガラス張りの吹き抜けからも香港の摩天楼を見下ろすことができて、有料展望台を前にサービス精神旺盛です。


 しかし展望台に出てみれば、やはり価値のある風景でした。オープンエアで目の前に広がる高層ビル群は、手を伸ばせば届くかのよう。街の喧騒は、はるか眼下にありました。


 上り下りするピークトラムは、乗り物好きには必見です。


 香港島と九龍半島を、気ぜわしく行き交うスターフェリー。


 九龍半島と反対側を見てみれば、山と海の狭い平野に小さな街がたたずみます。山を切り開いて住宅地でも作れば、住宅難は解消されそうにも見えますが、メリハリが効いた都市計画こそ香港の持ち味なんでしょうね。


 広場では、先代のピークトラムの車両が観光案内所として再利用されてます。
 わざわざ斜めに配置されているのがユニーク。中で働いている人、気分が悪くならないのかしら。


 緑色の飾り気がない内装に、ゴムのはまったバス窓。昔風の車両ながら天窓だけはしっかりついており、観光客の足だったことを伝えています。


 ピークトラムを片道券にしておいたのは、帰路はバスに乗るため。下りのピークトラムも行列を避けるためという効率性と、行きと違う乗り物に乗りたいという趣味性からの選択です。
 もちろん例に漏れず2階建てバス。冷房も効いてて快適です。


 クネクネした山道を高速で駆け降りるバスは、なかなかの迫力。乗り物酔いしやすい人は、1階に乗った方がいいかも。
 景色は右に左にと展開して、ピークトラムとはまったく違う眺め。ビクトリアピーク(太平山)の、高級住宅街としての側面も垣間見れます。


 地下鉄駅のピクトグラムが見えたので、中環だと思って降りたら、一つ東側の金鐘でした。バスの運賃は9.8HKD≒140円。やはり交通機関の安さは際立ってます。


 地下鉄で、上環へバック。ホームのデザインは、台湾のMRTに似たイメージです。


 上環の歴史的建築物、西港城(ウエスタンマーケット)へやって来ました。1906年築の、歴史的な建築物の一つ。赤レンガ調の外観は、よく目立ちます。
 側を走るトラムは複線に見えますが、この区間、実は単線並列。同方向に向けてトラムが並走してくる眺めは、なかなかの迫力です。


 階段室は、レンガで作られたきれいな丸窓が。同時代の日本の近代建築にも通じるものがあります。


 1、2階が吹き抜けになった館内。1階は居心地のよさそうなカフェなんかもあって、建物の雰囲気によく似合ってます。
 ところが、2階はなぜか生地屋さんばかりが並び、問屋街みたい。これはこれで面白いけど、建物の雰囲気には合ってない気もして、なんかもったいない(笑)。


 1階の「80M BUS MODEL SHOP」は、僕のような人種には見逃せないお店。所狭しと、バスの模型やバス雑誌(!)が並んでします。
 僕も記念に、2階建てバスのミニカー(69HKD≒1,020円)を買い求めました。一見するとトミカのようだけど、子ども向け商品ではなく「観賞用」なのだとか。なるほど精巧です。


 さて夕方になり小腹も減ってきたので、手近な店に入ってみましょう。カフェっぽい雰囲気の飲茶屋さん「細蓉記」です。


 香港の飲食店、ランチとディナーの間が「ティータイム」になっている店をあちこちで見ました。お茶+デザートという組み合わせももちろんありますが、飲茶や麺と飲み物のセットもあり、お得です。
 僕の「南乳猪手湯麺」(≒豚足そば?)は、35HKD≒660円で飲み物付き。麺の弾力が独特で、また食べたくなる味でした。


 上環18:30発の、観光電車による香港市街地周遊コースを日本から予約しておきました(95HKD≒1,400円)。香港トラム創業時の電車を模した、オープントップの2階建てトラムです。
 電車は折り返し待機場に停車しており、時間になったらホームまで来るのかと思ってましたが、この状態のまま線路上を歩いて乗車します。なんともおおらか。


 2階建ての最前列に陣取り、香港島周遊に出発! 平行する電車を追いかけるように、まずは上環のループ線を回ります。


 路面電車のループ線は、日本ではほとんど見られない形。上環始発・終点の系統はぐるりと回って折り返すため、運転士が前後に移動する必要がなく、座席を前向きで固定できるメリットもあります。
 ビルの間の細い路地を、2階建て電車が堂々行進。ああ、香港にいるんだなオレ。


 電車は中環へ。超高層の近代的なビル群の中を、2階建てトラムとバスが行き交います。一般の車両は、間に隠れて分からないほど。狭い香港、道路の主役は公共交通機関です。
 オープンエアの電車に乗ってもっとも感じられる音は、2階建てバスのエンジン音。でかいだけに、エンジンのパワーも相当なものなのでしょう。


 デッキを行き交う人々の、すぐ足元をくぐります。


 リッポーセンタービル。コアラがユーカリの木にしがみついているように見えるとも言われ、なるほど言われてみればそう・・・かな?
 屋根のない観光電車は、見上げなければ見えない高層ビルの見物にもピッタリです。


 中環を抜け、銅鐘へ。道幅が広くなり、軌道も分離帯で区分けされた専用軌道状になりました。景色の移り変わりはめまぐるしく、飽きません。


 ビルにへばりつく、室外機と竹製のベランダ(?)。落ちてきやしないか、ヒヤヒヤものです。オープンデッキの電車から見上げたからこそ気付くことで、見上げない方が幸せに過ごせるのかも。


 湾仔に差し掛かり、少し落ち着いた街並みになってきました。電車のカーブに平行して経つ、イギリス様式の洋館、いい景観ですね。


 2階のデッキテラスでは、カウンターでお酒を楽しむ人たちの姿が。トラムを見ながらの一杯、いいなあ。後で行ってみよう。


 洋館の向かい側は、サッカー場になっていました。時間は7時過ぎだけど、まだまだ陽の長い香港。昼間だと、運動には暑すぎるかもしれません。


 香港島でも賑わう繁華街の一つ、銅鑼灣(コーズウェイベイ)のど真ん中に進出してきました。時間は金曜日の夕方、街に出てきた人で交差点も人の渦です。
 香港でも最先端の街中を、マイペースで走るトラム。ガラスでですら隔てられていないのに、地上とは別次元の時間が流れているかのようです。


 夜の帳が降り始め、ビルのイルミネーションも輝きだしました。


 観光電車は「本線」から離れ、ハッピーバレー競馬場のまわりをぐるりと回る、ループ状の支線に入ります。ループ線なので、線路は単線。人の溢れる歩行者道の方が、メインストリートのようでうす。


 喧騒からはあっという間に離れ、競馬場のおかげで久々に広い空を見ることができました。


 ハッピーバレー駅で、しばし小休止。この間に、あまり見ていなかった電車の車内を見ておきましょう。


 2階席は、前半分のみがオープンデッキです。今日は空いていたから、全員がオープン席に座れました。混雑時には早い者勝ち。




 1階席にはテレビモニタや展示スペースがあって、さながら香港電車博物館といったところ。今日みたいにいい天気だと、乗り降りの時に通過するだけのスペースになってしまうのが、もったいない感じです。


 10分ほどの小休止を終えて再出発!と思ったら、出発してほどなく、軌道状の2台の車に行く手を阻まれました。どうやら接触事故で止まっている模様ですが、警察が来るまで動かせないルールがあるようで、一向に立ち退く気配がありません。
 運転士も警笛を鳴らすわけでもなく、乗客に詫びるわけでもなく、じっと待つのみ。


 10分ほどで警察が到着。現場検証する間もなく、2台の車に移動を指示して運行再開となりました。


 すっかり夜になった銅鑼灣に戻ってきました。人出は、さっきより増えてきたように感じます。


 銅鑼灣も折り返し拠点になっているので、ループ線があります。上環と違って街区を回るほどの規模ではなく、最小限の設備です。自然な曲線を描いた小さなループは、美しくも見えます。


 我らが観光電車も、銅鑼灣が終点。本日最後のコースは銅鑼灣から上環方面の便で、待ちくたびれた(であろう)乗客たちを乗せて、折り返していきました。


 所定の到着時刻は19時45分。海辺に出れば、20時からのイルミネーションのショー「シンフォニー・オブ・ライツ」を見られるという触れ込みでしたが、すでに20時をまわってしまいました。しかも方向感覚を誤り、ビクトリア・パークに迷い込んでしまったため、歩いているうちに時間切れに。
 残念ですが、煌々と明かりが灯る公園も不思議な光景でした。遊具のまわりは特に明るく、昼間のように子ども達が遊んでいます。昼は暑くて危険なんでしょうね。


 銅鑼灣の街もきらびやかにネオンが輝き、人通りも多くて、真昼となんら変わりませんでした。夜9時前、日本時間になおせば10時前で、二重の意味で時差ぼけしてしまいそうです。


 GUに和民に味千ラーメンに。日本企業も遠き地で、がんばってます。


 日本以上に頑張っているそごう。台湾と同様、日本よりずっと輝いて見えます。
 そごうの11階には旭屋書店が入っていて、揃っているのはすべて日本の書籍。POPまで日本語だったのには、度肝を抜かれました。そして来店客は、ほとんど現地人。日本文化、感心が高いんですね。


 そごうから、トラムの線路を渡りタイムズスクエアへと歩きます。こちらも、昼間以上に昼間のよう。渋谷や中洲の夜の人の多さとは、意味が違うように感じます。




 タイムズスクエアのエントランスでは、「香港のむかしの暮らし展」的な催しをやってました。家の間取りの模型は、テレビがちゃんと液晶モニタになっていて、手が込んでいます。


 しかし人の多さになんだか疲れも感じてしまい、のんびりトラムに逃げ込んでしまいした。観光電車のチケットで帰国までの3日間乗り放題なので、気軽に乗れます。
 走っている電車のほとんどが同じスタイルのように見えますが、中にはインバータ制御、LED照明の新型車もあります。最新鋭の技術を搭載しながらも、昔ながらのスタイルを貫くトラム。地下鉄とは、まったくの対局にある乗り物です。


 湾仔で降り、トラムから見えた洋館に突撃してみました。看板もないし、欧米系の人ばかりなのでちょっとひるまないでもなかったですが、英語のできるヨメさんの袖をつかんで潜入です。


 お店の名前は、THE PAWN。食事なら3階へと案内されたけど、トラムの見えるカウンターが目的だったので、2階のバーコーナーを希望しました。
 ビール1杯80HKD≒1,200円(+サービス料10%)という値段にひるまないでもないですが、トラムが行き交うこの景色には代えられません。ブルックリンIPAの味も、すばらしくよかったです。




 時間は10時過ぎだというのに、空は明るく、雲がはっきりと見えます。不夜城、香港の夜は、まだ始まったばかりです。


 さっき乗ったばかりの観光電車が、パーティートラムになって走り去っていきました。


 しかも2台の続行運行。オープンデッキの乗客に手を振ってみれば、思い切り振り返してくれました。


 すっかり楽しい夜に、時間を忘れて飲みたい気持ちはヤマヤマでしたが、まだあと2日もあります。明日の夜も遅くなりそうなのでほどほどで切り上げ、ゆったりと走るトラムの2階席に乗り、生ぬるい夜風を浴びて上環へと帰っていきました。

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