Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

「DENCHA」デビューと駅無人化計画…揺れる筑豊本線に乗る

2016年11月03日 | ■旅と鉄道
 福岡で「BRT」の試乗を終えた後は、快速電車で折尾へ向かいました。目的は、10月19日にデビューしたばかりの蓄電池式電車「DENCHA」の試乗。非電化区間でも走行可能な最新テクノロジーの電車が、注目を集めています。

 一方DENCHAの走行区間を含む若松~折尾~直方間では、駅の大規模な無人化が計画されています。JR九州の株式上場のタイミングだったこともあり、完全民営化の負の側面という切り口でも多く報道されました。
 無人化対象の駅を歩いてみると、JR九州の数年後のローカル線の姿が見えてくるようでした。


非電化区間期待の星、BEC819系電車


 鹿児島本線の快速が遅れたので、急いで折尾駅の地平ホームに降りると、真っ白なBEC819系電車(以下819系)「DENCHA」が接続待ちをしていました。
 電化され、「福北ゆたか線」の愛称で電車が走り始めた博多~直方~折尾間に比べ、非電化の「若松線」は取り残されたイメージもありましたが、電化区間と遜色ない車両です。


 819系は817系電車3000番台をベースに、その後登場した筑肥線の305系電車のエッセンスも含まれています。
 3形式に共通する木製の座席ですが、座布団は305系電車と同様の厚みがあるタイプ。817系3000番台は長い時間乗っているとお尻が痛くなり、通勤でもできる限り避けてきた電車でしたが、819系なら快適です。


 2両編成の車両間にはガラス製の貫通戸が設けられ、車内は少し静かに。車内の通り抜けがあまり生じない、「都市型ワンマン」が前提になっているんだと思います。


 扉には、「DENCHA」のロゴが入っています。


 床のデザインは305系と同様、QRコードのようでユニーク。スマホで撮影したらどこにつながるのか興味深くもありますが、いまだ試したことがありません。


 ボタン式の半自動ドア(九州ではスマートドアと呼びます)も、305系に続いて導入。305系は4扉で、かつ海風が冷たい沿線環境も考えられて導入されたと聞いていましたが、3扉の819系にも導入されたのを見ると、今後の「標準」になっていきそう。
 ドア付近に座っている時には、冬の寒風や、大雨の時の「流れ込み」に苦しめられた通勤を思い出すと、大歓迎です。


 車内の案内モニタは4か国語対応。首都圏の電車を見ているようです。2画面やワイド画面にするほどの広告需要は見込めなかったようで、残念。


 817系では座席になっている連結部は、機器スペースに。床下には蓄電池がびっしり搭載されているので、一部の機器が床上に回ってきたようです。
 819系でもっとも特徴的な蓄電池システムは、連結部のモニタでアピールされています。折尾駅停車中は充電中の表示が。


 走行中は、「ただいま、電池のエネルギーで走行中!」。乗り心地や音は、まったくもって電車のそれ。環境面のクリーンさはもちろん、沿線イメージの向上にもつながりそうです。
 加速度だけは電圧が足りないのか、蓄電池の重量が影響するのか、普通の電車よりやや鈍い印象でした。もちろんディーゼルカーよりは良好です。


 減速時は「ブレーキで発生したエネルギーを充電中!」。よく見ると背景は若戸大橋に変わっており、芸が細かいです。


 快適な乗り心地を楽しんでいれば、あっという間に若松着。
 外観は817系の白地をベースに、ブルーのポイントを入れてアクセントとしています。環境への優しさをアピールする色といえばグリーンが定番な中、地球そのものをイメージさせるブルーというのも新鮮です。


 機器室になっている連結部分には窓がなく、DENCHAのロゴをどどんと貼ってあり、これもいいアクセント。


 もちろん、パンタグラフは下がっています。


 パンタグラフが下がった状態の電車が、架線のない線路を走っていく姿はなんとも不思議。来春には6編成が導入される予定で、当たり前の風景になっていきそうです。


筑豊本線無人化計画の3駅に降りる・若松駅:どうなる「みどりの窓口」


 若松駅には、新型「電車」をアピールする掲示が。古びた国鉄形ディーゼルカーばかりだった若松線にとっては、待望の新型車だったと思います。
 しかし一方で報道によれば、若松~直方駅間の折尾、直方を除く全駅で、無人化が検討されているとのこと。旧若松市の玄関口でもある終着駅、若松までもが対象になっているのは驚きです。


 玄関口にふさわしく、現在はみどりの窓口も営業している若松駅。無人化後は折尾か、対岸の戸畑まで指定券を買いに来なければならなくなるのでしょうか。
 指定券対応券売機の設置があればいいのですが…


 若松駅には、駅前にコンビニがないせいか、Kioskが健在。早朝から夜まで営業している駅弁屋兼立ち食いうどんスタンドまであり、客足が途絶えません。人気のない駅という事態は、当面は避けられそうではあります。
 列車利用者の案内は遠隔操作システムで行うそうですが、人のいる安心感には代えがたいものがあります。


 国鉄時代の、標準設計の駅舎の雰囲気を残す若松駅舎。石炭の積み出しで日本一の貨物取扱量を誇ったのも今は昔、1984年に旅客専用の駅に建て替わり、それからもすでに32年が経過しています。
 若松駅の1日の乗客数は、約1,300人。北九州旧5市の玄関口では最も少ないだけではなく、線内の二島駅よりも少ない数です。


 駅向かいの生涯学習センターには、全盛期の若松駅の図面などが展示されています。今はマンションや市営住宅、駐車場になっている一帯も、すべて駅の構内でした。


 駅から渡船場にかけ、縦横に広がる、アーケード商店街。活性化への取り組みは多方面からなされていますが、「貸店舗」の貼り紙は多く、苦戦を強いられているようです。


 ただ若松は、さみしいだけの街ではありません。門司港ほどではないものの、レトロ建築が多く残ります。
 若戸大橋たもとの旧古河鉱業若松ビルは、交流施設に。2階のイベントスペースには、近所の人が集まっていました。


 ベイサイドプラザ若松は、サンリブが核テナントとなっている再開発ビル。サンリブだけでも、なかなかの規模があります。地元の高齢者が、主なお客さんのようです。


 中には図書館もあって便利。


 屋上庭園からは、若戸大橋を一望できました。
 若松からは鉄道だと小倉までは大回りになりますが、橋やトンネルで洞海湾を渡ればすぐ。博多方面へは、鉄道が便利です。住みよさそうな街だけに、駅の無人化が街の雰囲気にどう影響するのか、今後が気になりました。


本城駅:無人化には防犯上の課題も


 キハ47系の普通列車で、若松駅を後にしました。
 ボックスに座り、ディーゼルのエンジン音を聞きながらの移動も、ローカル線の雰囲気があって悪くはありません。ただ政令指定都市の市内交通として、理想の姿は「DENCHA」の方だと感じます。


 本城駅で下車。石炭全盛時代の名残を留める非電化複線を、ディーゼルカーが走っていきました。


 本城駅は2003年開業と新しい駅で、八幡西区に位置します。乗客も1日約1,300人と順調に伸びてきており、若松駅を逆転しそうな勢いですが、例外なく無人化の対象になっています。
 駅舎は橋上スタイルで、自由通路の機能も兼ねていて、駅利用者だけではなく通行人も目立ちます。駅周辺には公営住宅の団地が並び、待望の新駅だったことと思います。


 自動改札機は、切符とICカードを処理できるフルスペックのものを設置。香椎線無人化の際には須恵中央駅で、切符の処理を止めICカード専用となった もったいない姿を見かけましたが、ああなっちゃうのかな…


 本城駅のトイレでは、器物損壊事件が多発しているようで、身障者用トイレは鎖錠されています。利用する際には駅員に声をかけて、解錠してもらうのだとか。
 無人化されたら、どうするんでしょう? すでに くまなく防犯カメラが設置されている本城駅で、有効な対策ができるのか気になったのでした。


中間駅:市の玄関口も無人化対象に


 本城~折尾間は、DENCHAでした。ディーゼルカーとは、やはり印象が違います。
 スマートドアはまだ定着していないようで、開かない扉に戸惑う人の姿も見られました。


 折尾駅に到着すると、パンタを上げて充電開始!


 折尾~直方間の、817系と並びます。
 来春の増備後は、直方~若松間の直通運行も計画されているようです。階段の上下に加え、鹿児島本線ホームを歩く今の乗り換えルートは結構長いので、助かる人も少なくないのでは。


 直方方面の電車に乗って、中間駅で下車。中間市の玄関口であり、1日の乗客数は微減傾向ながら約2千人を誇ります。電車の乗客も、7割方下車してしまいました。
 そんな駅ですら、無人化計画に名を連ねています。


 商業施設は筑豊電鉄沿線に多く、JR駅側はホールや図書館、スポーツ施設など公共施設が集積します。JRと西鉄を擁する、久留米に似た都市構造といえるかも。
 もっとも頼られているのはクルマで、筑豊電鉄の乗客減は、JR以上に深刻な状況ではありますが。


 さてJR中間駅は、三角屋根の立派な駅舎。


 自動改札機は3台設置され、乗降客の多さを物語ります。


 駅前にはチャリがずらり。


 ホームは2本。駅の構内は広く、ホームには延伸された形跡も。エレベータも設置されています。


 2つの出入り口があるのはこの規模では珍しく、駅裏エリアからも便利に使える駅です。
 これだけの規模の駅でも無人化とは…中間より乗降客も少なく、規模も小さな駅は九州内にあまたあり、無人化は急加速していきそうに感じたのでした。


 筑豊本線の旅を貫くべく、このまま桂川まで下り「原田線」に乗り換えました。
 「若松線」と同様、非電化で取り残された区間で、単行のディーゼルカーが1日8往復(土休日9往復)しています。


 JR九州でも屈指の、運行本数が少ない路線。しかしどの列車にも、そこそこの乗客がいる路線でもあります。素人には、増発すれば潜在需要も掘り起こせそな路線だと思うのですが、そんなこともないのでしょうね。


 冷水峠を越え、原田着。大きく変わりそうな筑豊本線にあって、株式上場でも赤字路線の廃止は当面行わない方針を表明しており、原田線区間はしばらく現状維持となりそうです。

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2 コメント

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こんばんは (たなか)
2017-03-15 23:43:59
DENCHAですよね
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こんばんは (ちゃん(管理者))
2017-03-22 18:53:26
たなかさん、はじめまして。
ご指摘ありがとうございます。
タイトル以外、全部間違えてましたね。
後追い記事では、タイトルも間違えていました!
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