sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

■写真集を読む4:女性写真家

2013-02-22 | 写真
1970年代アメリカで女性解放の波がアートや写真に波及し
なぜ偉大な女性アーティスト(写真家)が
存在しなかったのかという問いが起こる。
1971リンダ・ノックリーの論文によると、
それまでの女性アーティストの研究では
元々ある偉大なアーティストの枠組み自体が
男性のみを想定されてた(西洋白人)せいだから
その枠組み自体を変えよう、と
別の視点で美術史を見直す、書き直す取り組みをはじめる。


(1)ポートレイト、身体、ヌード
ジュリア・マーガレット・キャメロン(英)
最初に出てくる女性写真家。
1815年に家族友人にプレゼントするため身近な人達の写真を撮りはじめた。
判事の妻で高価なカメラをもらって、有名人も撮った。
まず、19世紀半ばまで女性アーティストには芸術家になる環境がなく
親がアーティストかなどの環境でないと無理だった時代に、
大変恵まれた環境だったと言える。
ヴァージニア・ウルフの大叔母にあたる。
19世紀の古写真


ローリー・トビー・エディスン(米)
デザイナーが家族に何人かいる環境で育ち、自らも宝飾デザインをするが
30代でフェミニズムと出会い、ファットフェミニズムの活動をはじめる。
「woman en large」はとても太った女性ばかりのヌード写真集。
この写真集を見て、わたしは近所の温泉につかりながら
いろいろ考えました。(笑)
写真家のサイト
温泉で考えたこと

ハンナ・ウィルケ(米)
ウーマンリブの先頭を走る写真家で、
女性としてのセクシュアリティやエロティシズムを追求し、
自分の体を撮ったが、モデルのようにきれいな人だったため、
それまでの男性の作り出してきた規範と変わりがなく見え
美しい自分を表現したいだけと女性から非難される。
晩年は癌になった自分の写真を撮った。

キャサリン・オピー(1961~
同性愛であることをカムアウトし
ドラァグキング&トランスジェンダーのポートレート写真や
大量のボディピアスと、胸や腕の皮膚に文字を切り刻んで書いた
過激なセルフポートレートなどの作品で知られる。

ジュディ・データ(1941~ 米)
ウーマンリブ時代のフェミニスト。
イモージン・カニンガムら女性写真家紹介したことで知られる。
カニンガムに関しては下記ファインアートの項参照。

ジョー・スペンス(1934-1992・英)
乳がん後の自分の自伝的セルフポートレイト写真集
「putting myself in the picture」
フォトセラピーという概念を心理学の医者と組んで広めようとした。


2)ジャーナリズム
マーガレット・バーク・ホワイト(1904-1971・米)
Lifeの創刊号表紙を撮った女性報道写真家の草分け。
戦場カメラマンとして活躍し、
戦後はインドやアフリカなど発展途上国の写真も多く撮った。

ドロシア・ラング(1985-1965・米)
大恐慌時代の作品で知られる写真家。
社会の貧困問題に深く関わり、調査する夫とともに
極貧地域の人々の写真を撮った。
日系アメリカ人の強制収容所に連行される人の様子をを撮影し
軍に没収される、など正義感と反骨の人であったようです。

グラシエラ・イトゥルビデ(1942~ メキシコ)
メキシコで、最も重要な写真家の一人。
モノクロでメキシコ先住民族の人々の写真を撮る。

ベレニス・アボット(1898-1991・米)
モダンで都会的、都市の変容に関心を持ち
かわりゆくニューヨークを撮った「Changing NY」が有名。
マン・レイの弟子としてパリにいた時
アジェの写真をアメリカに紹介した。


3)ファッション
ルイーズ・ダール・ウォルフ(1895-1989)
ハーパース・バザー、ヴォーグ表紙を何十回も飾った。
30年代から、カラー写真にも積極的に取り組み、
計算された画面構成の美しい写真で
主に40年代50年代に活躍。

サラ・ムーン(1941ー ・仏)
ファッションモデルから写真家へ。
幻想的で繊細な写真は日本の広告にも多く使われた。
サラ・ムーンの写真は少女の頃に、きれいで憧れましたが
広告っぽさにいやになって、でも今また
きれいなぁとうっとりしています。

デボラ・ターバヴィル
日本ではパルコの広告などに使われ、バブル時代に超売れっ子だった。
アートよりの前衛的な雰囲気の繊細なファッション写真。
2012年のヴァレンチノのキャンペーンも彼女である。

ベッティナ・ランス(1952ー ・仏)
ポートレイトやヌードを中心で
現代の性をテーマにした作品が多い。
代表作の一つ「シャンブル クローズ」は架空の男性の視線を意識した
フィクションの秘密の部屋の写真集。
ストレートなポートレイトのファッション写真に定評。

ダイアン・アーバス(1923-1971)
「ヴォーグ」や「ハーパースバザー」などで
ファッションカメラマンとして活躍した後
1960年代には自己表現を探求するようになり
フリークスと呼ばれる人々を撮影。徐々に評価されるが
心のバランスを崩し、自殺する。


4)ファインアート
イモージン・カニンガム(1883-1976)
最も有名なアメリカ女性写真家のひとり。
幅広い手法、モチーフで作品を作った。
カメラでしか出来ない表現を探り
植物をマクロで絞り込んで撮ったモダンな造形のシリーズなどがある。

ハンナ・ヘッヒ(独)(1889-1978)
ベルリンで活躍したダダイスト。
写真によるコラージュ、フォトモンタージュを始めた一人。

山沢栄子(1899-1995)
日本女性写真家の先駆け。
日常の物を置いて構成したものを撮る手法で
新たな美を生み出す構成写真(constructed photo)。
抽象的な形態のモティーフを組み合わせた
「What I'm doing」のシリーズなど。
戦後アメリカで写真を学び
帰国後は60歳まではスタジオでポートレートを撮っていたが
その後好きな写真を表現として制作。
カメラを通したアート作品として撮影した。

バーバラ・キャスティン(1936-
コンストラクテッドフォト。
建築+ライティングで効果を出す。

サンディ・スコグランド
作り込まれたセットの中に鮮やかに彩色されたマネキンやフィギュア、
人間を配置して撮る鮮烈な写真。

その他日本では、今道子や石内都など。


5)ジェンダー
キャリー・メイ・ウィームス(1953ー
アフリカ系アメリカ人の国家や世界との関係や、
文化的・社会的な歴史、DV などの家族の問題などがテーマ。
古い黒人写真をアレンジし直して撮る手法など。

シンディ・シャーマン(1954ー
コスチュームをつけ変装した自分を撮影したセルフポートレイトで
日本でも有名な写真家。

バーバラ・クルーガー(1945ー
画像と文字という二つの要素を伴う作品を発表。
既存の雑誌などから集めたモノクロの写真に
簡潔かつ攻撃的なメッセージ(文字)を配置した作風が知られる。
日本ではユニクロのUTシリーズに登場したことで話題となりました。

やなぎみわ(1967ー
エレベーターガールをモチーフにした写真作品や、
若い女性が自らの半世紀後の姿を演じる写真作品、
少女と老女の物語をテーマにした写真と映像のシリーズ
「フェアリーテール」などで知られる。

6)コンテンポラリー・フォトグラファーズ
リネケ・ダイクストラ(1957ーオランダ)
ティーネイジャーと若年成人を被写体とした、ポートレート・シリーズで
思春期の不安定さを表現した。
海辺などのシンプルな背景に無造作に立った人物の写真が多い。
ダイアン・アーバスなどの系譜で語られることもある。

ナン・ゴールディン(1953ー・米)
周囲のドラァグクイーン、ゲイ、トランスセクシュアルの
友人達へのオマージュとして写真を撮り始める。
「性的依存のバラード」はゲイサブカルチャー、ポストパンク、
ニューウェイブシーンのドラッグ、暴力、過激なカップル達や、
自叙伝的な瞬間を撮影している作品集。
「アンダーグラウンドやドラッグカルチャーを写していると誤解
されますが、私は、人間でいることやその痛み、生きていくことの
難しさを写しているつもりです。」


一方日本では
Hiromix、長島有里枝、蜷川実花
の3人が女子写真ブームの火付け役となった。
彼女らはナン・ゴールディンのスタイルに近く、
露出やピントや技術的なことより、感覚で自分のまわりの日常を撮った。
女子学生の間で「写るんです」などのインスタント写真のブームが
起こっていたことも関連している。
3人揃って木村伊兵衛賞をとっている。

他に、川内倫子、米田知子、澤田知子、梅佳代などが
女性写真家としては有名。

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