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sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:別れる決心

2024-04-04 | 映画


映画はとても良かったけど、うーん、
これはわたしは「オールドボーイ」「お嬢さん」ほどは好きじゃないかなぁ。
以前、ポーランド映画「イーダ」を撮った監督の、次の映画を楽しみにしてたのに
それが2人の男女間を描き込んだ映画「コールドウォー」で、
そっちはなんとなくつまんなかったことを思い出した。
メロドラマは好きなんだけど、男女間の閉じた部分が大きくて男女の気持ちがお互いだけに向いてて
息苦しい感じの恋愛物が好きじゃないのかも。

「別れる決心」は中国映画とかで見るベタでアナログな情感のかわりに
賢くて上手い技巧が見えてしまう。計算され尽くした隙のあり方(なさ)が窮屈なのよね。
エログロ暴力アリの映画だとうますぎても舌を巻くだけだけど
恋愛もの、メロドラマは巧すぎると、むしろなんかついていけない感じがする。
ちょろっと計算外の安っぽいゆるい感傷が見えた方が落ち着いてみられるのです。
パク・チャヌク巧すぎ問題。

お話は、
「男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュンと、被害者の妻ソレは捜査中に出会った。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしかヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたヘジュンに特別な想いを抱き始める。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった・・・・・・。」公式サイトより

監督の言葉「本作は、大人のための映画です。喪失の物語を悲劇的なものとして語るのではなく、繊細さとエレガンスとユーモアをもって表現しようとしました。大人たちに語りかけるような形で…」

俳優の演技、心理描写やそれぞれの愛の描き方以外にも、演出から音楽、風景、インテリア、
小道具の使い方まで、画面の隅々にまで考えられている丁寧な映画でした。
そして二十歳の時のわたしが見たとしても二十歳なりに良さはわかっただろうけど、
やっぱり今の方がずっとよくわかるなと確信がある。
たとえば、映画の後半、主人公の「崩壊した」というセリフに、
はっと、わたしの気持ちは立ち止まったんだけど、(上に貼った予告編の中にもあります)
「崩壊」という言葉はなかなか大きいし手強い。
人が自分自身について「崩壊」という大きな言葉を使うことは日常の中ではあまりない。
でも、わたしの大学の卒論はフィッツジェラルドの短編「崩壊」だったのです。
それ以来35年も経って、この「別れる決心」の主人公のセリフ「崩壊した」を聞き、
普通に流れていた外の世界がいきなり全部止まったような気持ちにさせられるとは。

たとえば気持ちが弱って日に何度も理由なく涙ぐむようになるとようなときには、
実はもう35年前から自分はすっかり「崩壊」してて、
それを何十年もかけてわかって行ってる最中でしかなかったのでは?
その頃からずっと消化試合しかしてないのでは?と思うけど、
こういうのは全部フィッツジェラルドの影響だろうな。
この映画を見ていて、そうして世界が止まっていた瞬間に、
わたし自身の過去のある関係が心の中にゆらゆらと浮かびあがり、
それがそのときのわたしの静止した世界で唯一動いているものに思えたりした。
自分だけでなく相手も崩壊させてしまったかもしれない関係のことを思い出したのでした。

映画の中では、自分のよって立つところのものを取り返しがつかないほど損なってしまった、
という文脈で言われる台詞ですが、
よって立つところのもの、誇りの元、矜持、つまりアイデンティティのことよね。
自分がもう元の自分ではいられないと知った男の台詞だった。
アイデンティティの崩壊は破滅。それで、この男は遠くへ行き静かな破滅の日を送ります。
ところが、またその「崩壊」の元になった女と再会してしまい、また運命が動き出す。

ヒロインが、とてもミステリアスなんだけど、思わせぶりな人が好きじゃないので
あまり好感は持てず、あっさりメロメロになる主人公に、
男ってアホやな〜などと思いました。(主語でかくてすみません笑)
監督のいう通り繊細さとエレガンスとユーモアのある映画なのに、馬鹿な感想ですみません。
でも大人の恋愛のわかる人には、誰にでもおすすめしたい名作ではありました。

映画:パリ・ブレスト

2024-04-02 | 映画


主人公の友達が「ロッキー」が好きだという場面があって、この映画自体もそういう映画だなと思ったら
チラシにもパティシエ版ロッキーと書いてあった。笑

だらしなく自分勝手で子供を利用することしかしない母親の愛に飢えながら
暖かい里親家族の家で食べる手作りのスイーツに癒され、
いつか最高のパティシエになりたいと夢見る子供時代の主人公。
青年となって養護施設で暮らす中、施設を抜け出し高級レストランに見習いとして潜り込み、
やがて南仏でシェフとしてパティシエの世界大会優勝を目指すけど・・・というお話。

里親家族が暖かくてホッとするけど、養子ではないので母親の気分で連れていかれたり
連れ戻されたりと振り回される少年時代はかわいそうだけど、
青年になると、けっこう傲慢で反抗的な感じになって、子供時代がかわいそうでも
こんな風に歪んで悪くなるとあまり同情できない気が少ししてきた。
無闇に自信満々で大きな口をきく傍若無人な感じが、いくら天才でもなぁと。
でも南仏に移った後、倉庫に荷物とたくさんの調理器具だけ預け、自分は浜辺で寝てる主人公の
真面目な頑張りが見えてくると同時に、笑顔のシーンが見られるようになると
この笑顔がとてもチャーミングで段々主人公が好きになります。

南仏で、主人公が浜辺で寝てることを知った親友が
「お前は運がいいな、10億星ホテルだ」というシーンもよかった。
満天の星の下は世界一のホテル・・・かもしれませんね。

子供時代のつらさを描くためにやや冗長になってるのでその辺少し刈り込んで欲しかったけど
養護施設の仲の悪かったルームメイトが案外いいやつだったエピソードはおかしかった。
この年頃の男の子らしいエピソードが微笑ましくて良いです。

あと何かが降りてくるような、何かに気づくようなシーンのたびに、
人の顔のアップを映すタイプの演出はちょっとイージー。
それと、予告編にはたくさんあるように見える美味しいケーキのシーン、
映画がやや長めなので、全然足りない感じがした。
あのチョコレートをぱりんと割った下からとろりとクリームが出るところ、
ああいうのをもっとたくさんじっくりと見たかったよ〜!

この主人公のヤジッド君の自伝を元にした映画だそうです。
今はルイ・ヴィトンやショーメとのコラボなどされてる人気パティシエさんで、
出てくるスイーツの慣習も、その本人がされてるそう。ああおいしそう。

映画としてはごく普通の映画だけど、美味しいものの映画はやっぱり見てしまう。
もっといい映画にも厳しいことを言うくせに、
こういう映画は美味しそう〜!と思うだけで元が取れると思う食いしん坊なわたし。笑

映画:ポトフ

2024-03-24 | 映画


ポトフという料理を知ったのはいつだったろう。
小学生の頃は知らなかった。中学か高校あたりで雑誌「オリーブ」を読むようになって
フランスに憧れて、フランス映画などをみるようになってから知ったのだったろうか?
実際に初めて食べたのは多分、料理本を見て自分で作ったものだろうと思うけどあまり覚えてない。
外食で食べたことはほとんどなく、まあそもそもおうちのお料理ですよね。
シチューより軽いし野菜もたくさん取れてシンプルでヘルシーでおいしい料理。
たくさん作って残ったらカレーやシチューにアレンジできる。
そしてまだあまり知られていなかった頃は少しおしゃれな感じもありました。

これはそのポトフがタイトルになっているので
わたしの好きなタイプの暖かい料理ドラマ映画かと思ったけど
(「バベットの晩餐会」「シェフ三つ星フードトラック始めました」「大統領の料理人」「南極料理人」
「ジュリー&ジュリア」「マダムマロリーと魔法のスパイス」「幸せのレシピ」「デリシュ」
「めぐり逢わせのお弁当」「ウィ、シェフ!」などなどどれも好きな映画!)
なんと監督がトラン・アン・ユン!
わたしのオールウェイズトップ5に入る映画「青いパパイヤの香り」や「夏至」のあの美しい絵を撮る監督ですよ。
最近では5年くらい前に「エタニティ永遠の花たちへ」を見ましたが
その監督だからいわゆるハートウォーミングドラマ系ではありません。

19世紀末、シャトーに暮らす美食家の男とそのおかかえ料理人の女の話です。
毎日美と美食に明け暮れながら生きている美食家って一体何をしてこんなに裕福なんだろうと
疑問に思ってたけど、19世紀末なら、普通に貴族ということか。
その優雅な暮らしの中で、二人はお互い尊敬しあってるし愛し合ってもいるけど、
自立していたい女は結婚を断り続けている。
主人と料理人ではあるけど対等な恋人同士でもあるという現代的な設定は
この時代背景の中ではちょっと違和感もあったけど、まあいい。
グルメの仲間との食事会などの、食卓の様子が食いしん坊のわたしにはこたえられません。
素晴らしく美味しそう・・・
そしてすごくいいワインを飲んでるようなんだけど、グラスは今のたとえばリーデルとかの
薄く繊細なのではなく分厚くて小ぶりだったりするのも興味深かった。

前半は延々と料理をするシーンが続くけど、食いしん坊で料理する人なら楽しく見られると思う。
ただ、「ウォンカとチョコレート工場の始まり」はチョコを食べたくなって困ったけど、
「ポトフ」はそれどころじゃない。クラシックながら凝りに凝ったフレンチを食べながら
シャンボール・ミュジニーを飲みたくなるのである!
無理だけどとりあえず走って家に帰ってブルゴーニュをなんか飲むしかない!

料理の映像の素晴らしさだけでなく、愛の物語もあるんだけど、
天才料理人を演じる気高く美しいジュリエット・ビノシュはとてもいいけど
美食家のブノワ・マジメルが、いい男なんだけど声がなぁ。
ベッカムと同じ系統の、微妙に高く細くギザギザした声。この声がダメ。
容姿は顔も体格もなにもかもこの役にあってるのに、声が…
声くらい気にしないでいようと思っても最後まで気になって困った。

確かフェリーニが、映画俳優の声を、別の役者(声優?)で吹き替えするのを、
役にぴったりの俳優が役にぴったりの声をしてるとは限らない、と語ってたのを
読んだ気がするけど(間違ってたらごめん)、声が惜しい俳優を見ると吹き替えで…と思う。

映画:アーガイル

2024-03-20 | 映画


やー!わー!やー!面白かったー!
「キングスマン」の最初のやつを見た時の面白さを思い出したくらい面白かった。
(同じ監督です。さすが!)
猫もかわいいです。猫えらい。活躍もする。

予告編が良くて何度も見るのに本編は微妙かなという映画としては「パターソン」を思い出すし、
予告編はそそられなかったのに見たら面白かったのは「哀れなるものたち」ですが、
これは予告編も本編もどっちも好きだった!

え?そういう話?ん?そうなるの?お!そうくるか!と何度も小さく驚いて楽しみました。
前半より後半にかけて良くなっていきます。あー面白かったー。

あとなんと言っても主人公が美男美女じゃないのがすごくいいです。
特にヒロイン、かつてスパイ映画でぽっちゃりの人が主人公だったことってあったろうか?
スパイ映画の女スパイってシャーリーズ・セロンみたいな、すらっとかっこいい人しか見たことない。
(シャーリーズ・セロンの「アトミック・ブロンド」大好きだけど)
ここでのヒロインはなんとも親しみやすいぽっちゃり。こんなヒロイン見たことない!
冴えない感じのスパイ、サム・ロックウェルが、どんどんいい男に見えてくるのもいい。
イケメンとは言えない容姿だけど、スパイとしてはずいぶん優秀なようで
とにかく頼れる男に弱いわたしは、どんどん好きになった。強くて優しくて余裕のあるいい男やん!

お話は:
凄腕エージェントのアーガイルが、謎のスパイ組織の正体に迫る大人気小説「アーガイル」。ハードなシリーズの作者エリー・コンウェイの素顔は、自宅で愛猫のアルフィーと過ごすのが至福の時という平和主義。だが、新作の物語が実在するスパイ組織の活動とまさかの一致でエリーの人生は大混乱に! 小説の続きをめぐって追われる身となった彼女の前に現れたのは、猫アレルギーのスパイ、エイダン。果たして、出会うはずのなかった二人と一匹の危険なミッションの行方は──?!
と、公式サイトにあるし、予告編見てもそんな感じだけど、いやいやいやいや!
全然違う話だから!
映画の中では主人公の過去や過去に起こったことが明らかにされて、
他の登場人物も「いいもん」なのか「わるもん」なのか、もうく〜るくる変わって、
お話は二転三転、いやもっとどんどん暴かれて、所々わからなくなるほどです。難しい。
でも、とにかくとにかく面白くて楽しいです。
語彙が全然足りないけど、スパイ映画なのでさすがにネタバレができなくてごめんなさい。

アクションシーンも特に後半の山場は、「キングスマン」でコリン・ファースが
大勢を倒す場面のあの感じを思い出した。
予告編に少しある、カラフルなスモークの場面ですが、もうすっごく面白くて
パチパチ拍手しながら見たかった(映画館なのでしませんでしたが)。
いやぁ、マシュー・ボーン最高!

これ続きがあるそうで、それも楽しみです。
でも「キングスマン」も最初のが一番好きだったので、これもそうなるのかな。

おまけにこれ、懐かしのボーイ・ジョージ!
映画『ARGYLLE/アーガイル』OFFICIAL MUSIC VIDEO|Electric Energy 

映画:葬送のカーネーション

2024-03-19 | 映画


これは今年立て続けに見ているゆっくり映画の一本。とはいえロードムービーで、
とりあえず一つの目的に向かってゆっくりだけど進んでは行くので、
そもそも何も起こらずどこにもいかない映像詩映画(これですね→「オール・ダート…」)よりは映画っぽい。
ていうか、ゆっくりだけどとても映画的な映画と思う。
この予告編見るだけで、ああ、映画だなぁと思ういい映像ばかり。

トルコの映画で、小津安二郎好きの監督らしいけど
個人的には小津安二郎好きな監督というのに、ちょっとうんざり。
小津はわたしも好きですけど、小津好き監督、世界に多すぎないか?笑

お話は、おじいさんが亡くなったお婆さんの入った棺を故郷に埋葬するため
両親を亡くしてる孫娘と旅に出るロードムービー。
最初は車に乗せてもらってるけど、途中で降ろされて途方に暮れたり、
引きずってるうちに棺が壊れたり、トラブルは続くけど、いやそんなの当然でしょう?
そもそもが、お金もなく車もなく、棺を担いで紛争地域まで国境越えてって、
いや、それめっちゃ無謀でしょ?無理でしょ?と最初から最後まで思うような道のりなのです。
野垂れ死ぬんじゃない?とか、ほんとに辿り着けるの?などと心配しながら見ることになる。

去年、ひょえー!最高!すごいー!と思ったロードムービー「君は行先を知らない」より
さらにずっとセリフが少ないしドラマも少ないけど、
左右に続く道をゆっくり人や車や何かが横切る構図をスクリーンで見るのは、
映画館で映画を見る至福のひとつなので、それはかなり堪能できます。美しい。
じっくり見せるので、時間の流れも一緒に見ることができます。美しい(2度目)。
ちなみに主人公二人は本当にほとんどしゃべりませんが、周りの人間はペチャクチャよく喋ります。
なんか二人の世界だけが別の世界で、リアルのおしゃべりな世界とは離れている感じに見える。

この映画のポスターがこの絵なんだけど、この絵はかわいすぎる。
色もきれいだし人間の姿も顔も、なんか線にユーモアがあるけど実際の映画はもっとストイックです。


この映画にも一筋の希望が、とかいうレビューもたまに見るけど、わたしはそれには懐疑的です。
だってこの映画には幻想的なエンディングはあっても未来への光は見えないし(むしろ逃避)、
生きている人間の間にコミュニケーションも秘めた思いやりさえも感じられないんだもん。
おじいさんのおばあさんへの愛は感じるんだけど孫娘への愛を感じる箇所はほとんどなかった。
両親を失った小さな子供の方こそ守るべきなのに、おじいさんは自分の悲しみだけを優先する。
そんな大事なお婆さんと何十年も添い遂げたんだから、まだましやん、
孫娘の傷を癒してあげてよ!と思って、つらかった。
おじいさん、自分のことだけじゃなく12歳の子どものことを少しは思いやってあげてよ。

あるブログで「今まで遺体を運ぶ物語の映画なんて、聞いたことがない。
本作『葬送のカーネーション』は、非常に斬新なアプローチで展開される作品だ。」
と書かれてるのを見たけど、いや、わたし見たことあるよ。
「悲しみのミルク」ペルーの映画です。これは素晴らしい映画だった。
悲しい話だけどこちらにはちゃんと希望も少しあった気がする。

映画:犯罪都市3

2024-03-05 | 映画


この「犯罪都市」の1は見て2は見てないと思うけど違うかも。まあどっちでもいいか。
マブリーである。
主人公役をやっている俳優のマ・ドンソクのことです。
彼のでている映画で感想を書いてるのは「新感染」だけですが、
そこでは命をかけて素手で戦う優しくマッチョな男を演じてて、
いかつく怖く泥臭い顔とゴリラのような体型は、わたしの好み的に不快で苦手なはずなんだけど
かっこいい!いい男やん!と思わせられました。
たとえば韓流スターを正反対にしたような容姿なんだけど、同じように思う人は多いのか
さらにその先のかわいさまで読み取ったファンに、マドンソク+ラブリーでマブリーと呼ばれるように。
女性にかわいい〜!とか言われちゃうのは、本人としは計算外かな?笑

さて、この映画での彼は「怪物刑事」。とにかく強い。ルールはわりと破るけど悪徳ではなく、
解決のために悪に手を染めるとか悪と手を組むとかいうことはない。
ただ、ただ、堂々として強いのです、腕っぷしが。
細マッチョ?なにそれおいしいの?甘いの?みたいな、筋肉の塊の
重力をたっぷり受けた体ひとつでの肉弾戦、また肉弾戦の戦いは
トム・クルーズの映画のような華麗なアクションはないけど、
一見地味ながらどっしりと見応えがあります。

お話は・・・えっとあんまりわかんないまま終わりました。
なんか麻薬がらみで死者が出て、それを追っていくうちに
汚職刑事と、韓国と中国と日本のヤクザ、とかが出てきて、横流しや殺し屋やとの
関係がいまいちつかめないし見分けもつかない。でもまあ、気にしないで大丈夫です。
後半に行くと色々整理されて(捕まったり殺されたりで登場人物が減る。笑)
とりあえず、こいつとこいつがこうなって、こうなるのね、くらいわかれば問題ない。

悪者が悪いのはともかく(日本の俳優がよく合った役をうまく演じてます)
主人公のペースに巻き込まれる脇役たちがとてもいい感じに笑わせてくれる。
特に予告編にも一瞬出てる中古車屋?のぽよんとしたチンピラ?がよかった。

何も考えないで気楽にマブリーの単純な強さを楽しんだらいい映画ですが、
見ているだけでこっちの体まで重く感じるような肉と肉のアクションって
最近中々ないですよね。
そういえばシャーリーズ・セロンの「アトミック・ブロンド」を少し思い出しました。
シャーリーズ・セロンはマブリーとは正反対の完璧美女ですが、
彼女のその映画の中での戦いもまた、
見ているこちらまでなんかダイレクトに疲れと重力を感じさせるほどのものだった。
「アトミックブロンド」はそこがすごく良かったのよね。今回のマブリーと同じ。
でも、マブリーはラブリーだけど、どちらか一人を選べと言われれば
やっぱりシャーリーズ・セロンと付き合いたいかな。(付き合えません)(えらそう)(なにさま?笑)

映画:ビヨンド・ユートピア 脱北

2024-03-03 | 映画


エンドロールの時にすぐ立って出て行くのは普段映画をあまり見ない人に多いと思ってる。
個人的には好きにしたらいいと思うけど、
映画好きな人の中にはちゃんと最後まで座ってる人の方が多い印象。
この映画はここ数年見た中で、エンドロールが始まった途端にゾロゾロと出て行く人が多かった、
つまりそういう映画。
政治的な興味のある方や在日朝鮮韓国の方など、
普段映画館に来ることは少ないけど、この映画だからわざわざ見に来たという人が多い映画でしょう。
でも、普段映画見ない人も、めっちゃ見てる人も誰でも、みんなこれは見たらいいと思います。
見る前から、北朝鮮からの命懸けの脱北ドキュメンタリーと聞いただけで、
そんなの本当にどうやって撮れたの!?と驚いて、
何度もドキュメンタリー?本当?って確かめたくらいなので、面白くないはずがない。
見ている間中、脱北者の方にはもちろん映画を作ってる人たちに対して、すごいなー!と思い続けてました。

脱北という言葉は知っていたし、いろんな国から逃げてきた難民の映画や
ドキュメンタリーは何本か見ていたので、道中の大変さは想像できたけど
実際の脱北の様子を見るのはやはり受け取るこちらの気持ちも全然違いました。
夜中に山を越えるシーンの緊迫感、
人の足元を見て急に約束以外のお金を要求するブローカーたちとのやりとり、
どんな目にあってもまだ北朝鮮の体制を信じてしまうのをやめられないお年寄り…
脱北者の人たちの望郷の切なさと同じだけ、あまりにひどい北朝鮮の体制への怒りも描かれていてつらさが残ります。
その一方で、ここに出てくる脱北者支援をされてる牧師さんのような人もいる。
脱北者には小さな子供やお年寄りもいて、どこかの国の政治家のように生産性ということだけで
人間の価値を測るなら、大変な大金と命をかけて救う必要のない人も多いでしょう。
でもこの人は助けを求められるとどんな人であれ脱北の当事者以上に命懸けで、ずっと人のために生きている。
わたしは信仰はないけどいつか特別な天国が用意されていますようにと願わずにいられません。

映画:落下の解剖学

2024-03-01 | 映画


これは確かに良い映画だけど、こういう映画が満席になるのはカンヌの力よね。
たくさんの人が、素晴らしくうまく作られた映画を見にきてくれるのはありがたいんだけど、
カンヌと聞いて見に来た人がスヤースヤーと寝息を立てて寝るのはやめて。
なぜ寝息って普通の呼吸より大きな音なのか・・・(この月2度目でした)

さて、映画ですが万人向けじゃないとは言わないけど、
見る人によって理解の深さの幅がかなり出る映画と思いました。
どんなものでもシンプルな人はシンプルにしか見れないし複雑な人は複雑に見てしまうけど
この映画はその幅をより広げてしまう作品です。

雪深い家の窓から、作家志望の男が転落死し、第一発見者は視覚障害のある11歳の息子。
自殺か他殺か事故か。
人気作家である妻が疑われることになり、裁判が進むにつれ隠されていた事実が明るみに出て
この家族の、最初に見えていたのとは別の面が次々に現れてきます。
それぞれの嫉妬、恨み、軽視、不満、愛情…
でも最後の判決が正しいのか、あるいは誰かが嘘をついていて真相は違うのか、
映画は何も示唆しません。
事件の真相や裁判の行方より、裁判の中で暴かれていくさまざまな出来事から、
それぞれの人物とその複雑な関係、そして夫婦とは、愛とは、を想像させ考えさせるだけです。
観客に最後まで判断をさせないような演出が見事で、
安易な判断ができないままの状態でフラットに見ることで、
現実の人生がそうであるように、世界の複雑さをそのまま味わうことになりますね。

大きな犬がでてきますが、この子の演技が素晴らしく、パルムドッグ賞(!)を取ったそうです。
あと、雪山の中の家、最初に妻がインタビューを受けるシーンでは素敵な別荘のように見えたけど
その後あまり良くない感じの雑然とした感じがわかってきます。
趣味のいい夫婦の素敵な家になるポテンシャルのある家なのに、金銭的な理由からかなにか
ちゃんと手をかけてもらってない、雑に扱われている、大事にされてない感じがある。
安物で間に合わせているものが多そうな家に見えました。
その辺も細かく良く作られている映画だった。

ヒロインは最初キリッとした知的で魅力的な美人に見えたけど
だんだん疲れてただのおばさんになり美人に見えなくなった気がする。うまい。
そして弁護士役の人は、個人的に超超好みの顔なので、彼の顔を見るためにもう一度見たいくらい。笑

以下はネタバレ少々




11歳の息子に親の性生活の話を聞かせるのはつらいなぁ。この子が気の毒で仕方なかった。
わたし個人的には、判決通りは自殺で妻は無実だと思う。
夫婦が破綻してたとしてもまだ愛情はゼロではなかったし、
子供の世話や家事を主にしててくれた夫を殺して彼女が得することがあまりないし
あの状況で自分が疑われるのは必至だったし、殺すにしても別のやり方をしたでしょう。
最愛の息子を第一発見者にするほどの鬼母ではないしね。
ただ冒頭の様子はかなり不自然だったので、それも断言できない気持ちにさせる映画だったな。

映画:人生は美しい

2024-02-29 | 映画


ジュークボックス・ミュージカルというそうです、既存の曲を使ったミュージカル。
でもミュージカル映画ということも知らずに見たので、最初のうちは、
ああこりゃ時間潰し程度の映画かなと思った。
ポスターを見ると余命2ヶ月の妻が不器用な夫と初恋の人を探す旅に出るようなことが書いてあるけど、
この夫は不器用なんてものじゃなく、亭主関白という言葉でも甘い、すっごいモラハラ野郎。
きっと妻のありがたみがわかって反省したりして大団円でベタに泣かせるんだろうと思ったし、
こんなひどいモラ野郎ヒロインが許してもわたしは許さん!と思った。
さらに最初から最後まで昭和か!と突っ込みたい古き良き(←褒めてない)家父長制の価値観に貫かれてて
そういうとこは最後までうーむ、と思わせたけど、結局泣いて笑ってまた泣いてしまったから困った。笑

映画はベッタベタのベタ。最近見た「落下の解剖学」や「瞳を閉じて」のような深みや繊細さはどこにもなく、
ため息の出る美しくとことん考えられ作られた画面もない。それでもこれもまた映画なのよね。
漫画もラノベもトルストイも源氏物語も本であるのと同じく、映画の幅も驚くほど広いものやなぁと毎回驚く。
そして、それぞれにそれぞれの領域でちゃんと良いものがあるのよね。
この映画はホームドラマでもあり、ロードムービーでもあり、夫婦の話でもあり、
でもどれもベタで特別な物語は全然ないです。
それなのに最後まで見せるのはこのジュークボックス・ミュージカルの音楽の力もあるかなと思う。
最初に歌と踊りが始まって、え、これってミュージカル映画!?とわかったときは、
なんか古臭い愛の歌が歌われるのでちょっとがっかりした。でもずっと聴いてると、
途中にわたしの知ってる(そらで歌える)歌が2曲あって、
これってもしかしてそのシーンの時代のヒット曲?とやっと気づく。
わたしは87年からソウルに1年いて大学生だったのでその時の流行の歌はよく聴いていたのです。
そう思うと歌がベタでやや古臭いのも納得がいくし、わたしの知ってる2曲のように、
映画を見ている人がどの歌にも馴染みがあったら、そりゃどっぷりはまるだろう。
だから韓国の人とその他の国の人ではこの映画に対するはまり方は違うと思う。
ベタな話だし、家父長制の価値観を美談にするのはやめてほしいけど、
これは日本でリメイクしてほしいなぁと思います。
日本の70年代からの誰もが知るヒット曲で彩ったベタな映画を見てみたい。
音楽監督は「サニー永遠の仲間たち」や「スウィングキッズ」の人ということで、そりゃええやろと納得。

そういえば、映画の中で生前葬的なシーンがあるけど、わたしも生前葬はやってみたい。
でももっとおしゃれなやつにするぞー!と思ってます。
飲み物はシャンパンだけのシャンパン葬(ノンアルは用意します)、かっこいいー!
お金貯めなくては・・・

あとこの妻の人が怒りっぽくていつも不機嫌な夫に全然めげずにおしゃべりし続けるのみて、
自分もこれくらいおおらかで呑気だったらいろいろうまくいったのかもしれないなぁ、
などと苦い過去を思い出したりもしました。

映画:Ryuichi Sakamoto CODA

2024-02-26 | 映画


坂本龍一は天才だと思うけど人としては受け入れられないことがあって、
積極的に知ろうと思わずにきました。

でもまあ死んだしな、もういいか、と見てみたら、すごくいろんなことの辻褄が合ったわ。
なるほどな。
以前ルワンダのジェノサイド後の美しいけどとてもつらい写真集で
子供の瞳の美しさに癒されるとか書いてて、
安全なところで勝手に癒されてる傲慢さにムッとしたんだけど、
この映画の中でも震災で津波にあったピアノを演奏する時に
その不協和音を無邪気に美しい音だと喜んでいるところがあって、わーやっぱりこういう人だな、
結局同じだなぁ、そういう人なんだと改めて思ったのよね。
詳細はこちら→「ルワンダ ジェノサイドから生まれて」
でもこれね、天才だからなんでも許されるとは思わないわたしだけど
彼が音楽で音楽が彼になる瞬間を見ると、なんか仕方ないことなのかもなぁとも思ったのでした。
彼はときどき人ではなく、自分と音楽や芸術の神との境界が消えてしまって、
そのままうっかり神の目線で世界を眺めてしまうのかもな。
だから、人間の苦しみにも高いところから何か鈍感なことを言ってしまったりする。神は残酷。

雨の中バケツをかぶってバケツを打つ雨の音を聞いたり、厚い氷の下の近代工業化前の音を録音しながら、
僕は今、音を釣ってるんだよと言う時の無邪気な笑顔。
タルコフスキーのポラロイド写真の写真集(これわたしもほしいやつ)を見ながらバッハのコラールを弾き
自分のコラールを作りたいと言いながら奏でる音楽。
ああ、今わたしは芸術家を見ているんだな、と思った。
いやはやいちいち面白かった。

映画:ゴーストトロピック

2024-02-22 | 映画


「Here」と同じベルギーの監督の映画。
清掃の仕事のあと、地下鉄で寝過ごしてしまって終電を逃した移民女性の一晩。
ポスターで見るとずいぶん年をとった貧しい移民の話かなと思うけど
実際は多分50代くらい?で、この主人公の女性がなんとなくかわいいのよね。
声がかわいいし、小柄でなんとも頼りない感じでトコトコ歩くのも、
おせっかいというか親切なところや、すぐ寄り道になるところや、なんか良い。

しかし「Here」以上にゆっくり映画である。
冒頭1分以上室内での風景を静止画で見せるのは、ゆっくりについてこれるのか
試されてる気分だったけど、このシーンはちゃんと回収があるので寝ないでよく見ておくように。

「Here」は西洋人の考える「禅」っぽさがあって、
それがちょっと類型的すぎる気もして引っかかったりも少ししたんだけど
こちらの方は森やスープや、そういうわかりやすくきれいなものは出てこなくて
地味で画面もずっと暗い(ある一夜の話なので)のにすごく良かったです。

お話は、
清掃の仕事をする移民女性が、地下鉄で寝過ごしてしまって終電もない。
タクシーに乗るお金はなく、バスはなぜか動かず、
なんとか帰ろうと歩くうちにいろんな人を見たり、ちょっと関わったりする、その一夜の物語。

冒頭は光の入る誰もいなし誰のものかもわからない部屋の静止画のようなシーン。
これかなり長時間、何も起こらずただ時間が過ぎ午後から夕方、そして夜になるまでを映してます。
寝そうになるけど、ここは実はあとで回収のあるシーンなので良く見ておいて
この映画の色彩や空気を味わいましょう。
その次に、清掃の職場の休憩時間か、複数人でおしゃべりするシーン。
ここではまだ誰が主人公かもわからないので、見ている方は誰に焦点を合わせていいのかわかりません。
「Here」もそうだった、バスの中の男性3人のシーンで誰が主人公かわからないまま
ぼーっと見ていたのだった。こういう導入は、この監督の故意でやってることなのかな?
それから主人公のシーンになるけど、終電を逃した主人公は
お節介というか、好奇心が強いというか、何にでもすぐ関わってしまう。
人の心配をし、犬の心配をし、そして自分も人の親切をうけたりする。

さて、ここからほんの少しネタバレ



・主人公、いい人なんだけど、(自分の娘のグループ?)未成年にお酒を売るコンビニを
警察に告げ口したりする意地悪な感じが少しあるのも、またなんかかわいい。

・凍えて眠るホームレスを助けて救急車に乗せた時、その飼い犬が置き去りにされて
主人公は心配しながらも何もできずにその場を去るんだけど、
ホームレスがもう戻れないと分かった時に、犬の紐がするりと解けたの見えるのよね。
そして、特に驚きもせず「よかった」って呟くんだけど、不思議なシーンです。
そういえば「Here」でも手の中の苔がぼうっと発酵する不思議なシーンがあった。
映画の中にごく小さな奇跡を埋め込むのが好きな監督なのかな。

・主人公の部屋が冒頭とラストで対比されるようにきれいにつながって終わるけど、
主人公が夜の街で見る海のリゾートの大きなポスターと
ラストで不意に現れる海辺にいる娘の映像もついになってます。
尺の短めの映画で、こういうきれいなまとめ方をするとてもさりげなくするのは洒脱を超えて良い。

映画:Here

2024-02-21 | 映画


ボブ・マーリーのドキュメンタリーにめっちゃ人が並んでて、なるほどなーと思ったけど、
ベルギーの若手監督のこの地味な映画も結構人が入ってて驚いた。
スープと苔の組み合わせ(苔をスープにするわけじゃないし苔は食べませんが)って、
わたしのための映画か!と思ったけど、
予想通り、今年立て続けに見ている静かな「ゆっくり映画」のトップ争いをまた更新しそうな勢いではあった。
「オール・ダート…」はキレのある映像ポエムだったけど、
これはポエムではなく、日常生活と地続きなスケッチがさりげなくて良く、
でも森の中や苔やディテールには不思議な幻想のようなものもあって、
良い意味で映画的と言えば映画的かな。
明るい昼間より夜や室内や森の中を撮るのがきれいなカメラでした。
後半になってやっと少し物語が進んで(というほどは進まず、ほとんど何も起こらないんだけど)、
すごくいい感じに見終わりました。

移民労働者のシュテファンはバカンスにルーマニアに帰省する前に
もしかしたらこのまま戻らないかもという気持ちもあって冷蔵庫整理でスープを作り、
友達や親戚に配ってまわりりながらそんな話をしたりしています。
そんなある日、中華料理屋で見かけた女性を森でみかけ、彼女が苔の研究者と知る。
そして彼女について、そのまま一緒に歩く。
・・・というだけの話なのですが、これをゆっくりと見せます。
建物や木や雨をカメラを動かさずじっと見せるシーンも多い。
わたしは森に雨が降っている絵だけで、気持ちがしっとりと満たされて幸せになるのし
スープというものが、食べ物としてだけじゃなく概念としても偏愛してるので好きな映画でした。

シュテファンは背の高い白人で、なぜかいつも半ズボン。
苔の研究者は小柄な中国系女性で化粧っ気がなくシンプルな服装をしています。
この彼女の印象もあるかもしれないけど、全体的に西欧人の考える「禅」的な気配の映画と思った。

冷蔵庫整理のスープを作って誰かに食べさせたくなります。

映画:ジャンヌ・デュ・バリー

2024-02-20 | 映画


ジョニーデップが出てるし、英語でやるのかと思ったらちゃんとフランス語喋ってたし、
フランス王の役にすっかりハマっていて想像以上に良かったです。
ただヒロインのジャンヌの役は、見ていてずっとつらかった。
美貌と知性で王を虜にした役なんだけど、そのヒロインがいわゆる絶世の美女でなくてもそれはいいんですよ。
(ちなみにマリーアントワネットは肖像画からそのまま抜け出したような幼さの残る可愛らしい女優さんで
少女の無邪気も、不安も、流されやすさもぴったりですごく良かった)
美貌ではなく、知性と生き生きした自由な心で王に愛されたという話ならわかる。
でも映画を見る限り、その「美貌」は感じられないのです。
容姿だけでなく演技にも美しさは感じられなくて、生き生きと少女のように笑うシーンが多いのに
わざとらしく若ぶった笑いに見えるし、立ち居振る舞いの美しさや(どたどた走る…)
滲み出る魅力というものを感じられず、
素晴らしい衣装やベルサイユ宮殿なのに、どうにも集中できなかった。
他のキャスティングは良いだけに、監督自ら美貌のヒロインを演じようと思ったのか?
国王の娘たちを類型的な「意地悪なブス」に描きながら自分を絶世の美女に設定したのはなぜ?

まあ、おそらくこの映画で彼女は容姿について酷いことをたくさん言われるだろうし、
わたしまでそれは言いたくはないんだけど、ミスキャストはミスキャストです。
自分の女優としてのプロモーション映画を作りたかったのかしらん…
映画全体としても、このキャスティングのミスが響いて見終わった後に
美しい美術以外あまり何も残らない感じが残念。
いや、美術があれだけ美しかったら、それでいいか。

あとは、デュ・バリー夫人といえばベルバラの悪者の印象が抜けきらないこちらの問題もあるか…

この人が監督した「モンロワ」という映画を昔見て、それはすごく良かった。
ヴァンサン・カッセルが魅力的なダメ男役で出てる時点で、涎しか出ないしな。笑

映画:フェルメール

2024-02-19 | 映画


うーん。各種割引使えず特別料金2500円のわりには、うーん…
フェルメールの絵をひたすら大きい画面で見たいだけの人にはオススメできるけど、
切り口も見せ方も新しいものがないのに
フェルメール人気に付け込んだ値段設定ということなのかな?

史上最大規模のフェルメール展がアムステルダム国立美術館で開かれて
それのドキュメンタリーということだけど、
美術展のドキュメンタリーというよりはフェルメールの作品のドキュメンタリーになってるので
史上最大規模とかは映画を見ている方としては実はあまり関係ない…
作品を見せるなら別に今回の展示の絵だけに関してだけをまとめる必要もないし
他の作品もそれぞれについてやった方がみごたえがあるし、この企画に意味はあまりないと思う。

最新の技術で、フェルメールが最初に違うものを描いてたのがわかったとか言うなら、
それをCGで見せて欲しいのにそんな手間を何一つかけないで作られたドキュメンタリー。
各絵画の解説も普通に図録や本を読んで知っていることばかりな上に
全体を俯瞰するなんだかぼんやりした内容ばかりで、
例えば「この絵に描かれている服は他の5枚の絵にも描かれている」というなら、
その5枚を一瞬でいいから並べて欲しいのにそれもなく、その後その服の絵が出ても記述はなく、
他の5枚ってどれだっけ?とずっともやもや。
絵画の中に散りばめられ記号についても上部しか語られず、
最新の研究の成果も映像ではほぼ見れない。
これが通常料金の通常上映映画なら、こんな不満も言わないんだけどねぇ。
フェルメールが好きなだけに、ちょっと残念。

フェルメール初心者(偉そうですんません!わたしも初心者です!)あるいは
なんでもいいからフェルメールに関することは全部コンプリートしたい!という人にはオススメします。
日本の美術館でこれだけじっくり見れることはないし、しかも快適に座ったままなのは良かったです。

(あまり語ることがないと感想書くのが楽だ・・・w)

映画:カラー・パープル

2024-02-18 | 映画


リメイクだし古い小説なのでネタバレありの感想です。

原作を知らなければとても良い映画だし、これはこれでわたしの物語だと思ったかもしれないけど、
わたしはこの原作を家に閉じ込められて普通に出かける自由も奪われて抑圧されていた20代の頃
何度もお風呂で読んでは(みんなが寝た後のお風呂しか安心できる場所がなかった)
何度も号泣していたので、ちょっとなぁ…という感想。
ミュージカルだから仕方ないのか。
ミュージカルって、良い物語やあらすじにドラマチックな歌を上手い歌手に歌わせて
素晴らしいキャスティングで上手いカメラで撮れば、よい作品にはなるだろうけど、
なんだか何もかもがハッキリしすぎている感じなのよねぇ。
尺の都合で繊細な部分を残せなかったのはともかく、センスが現代的すぎるのも仕方ないのか。
女の地獄を、むしろあっさりしたきれいな描写から想像させるという意図かもしれないけど
あっさりしすぎな感じ。服や景色もきれいすぎて…
まだ少女の頃に性虐待受けて何度も生まされた末に暴力男に売られるなんて地獄の話なのに
今回のはなんかその辺ごく呑気というかさらっとしてて、
重く深刻なところを深刻に描いてないというか、真正面から向き合ってないというか、
ドロドロを見せない感じのずいぶんきれいな映画になってるなぁと思った。
黒人女性の差別の歴史から暗くて思い泥臭さをなくしてもいいのかなぁ。
どうもパワフルで美しい歌で、全体に前向きすぎる気がする。
(とはいえセリーがI'm beautifulと歌うところでは泣きましたが。)
ミュージカルってそういうものと納得して見るしかないのかな。

そしてやっぱり、神が許してもセリーが許しても、わたしはこの男たちは許さんぞ。と、今も思う。
一般的に黒人差別の話になると白人からの差別ばかり思い浮かべがちだけど
(それも少し描かれているけど)
その黒人社会の中で黒人女性が黒人男性から女性が受けていた暴力の凄まじさを描いた話なのに
最後に許してみんな仲良く輪になって、みたいな大団円で許さなくてもいいのにと思う。
許すことは正しいのかもしれないけど、正しくなくてもいいから、
人の人権も尊厳も人生も何もかも踏み躙った人間を許さなくていいよ、もう。
そして最後のその大団円のシーンの映像の陳腐さ。
変な新興宗教の集まりみたい。うへ。

でも、ピュリッツァー賞受賞の素晴らしい原作が好きすぎて、特に前半で乗れなくて
散々文句をつけたけど、それは余計なお世話で、十分いい映画です。
(その原作者がちゃんと製作に入ってるのでわたしがどうこういうことじゃないのよね)
キャスティング素晴らしいし。特に女たちは、みんなすごく合ってる。
そして音楽のちから、歌の力は確かにあって、実際見ている間は引き込まれて聴き入ってました。
実はわたしはミュージカルが苦手で、歌はいいから物語を進めてくれー、
もっとディテールを描いてくれー!とか思ってしまう無粋者なんだけど
(元々聴覚より強烈に視覚優位なのだと思います…)
逆にその自覚があるのでミュージカルはできるだけ楽曲を楽しもうと
意識的に音楽に集中するよう自分のチャンネルを合わせているのです。
だから楽曲がいいと、まあ楽しく見れます。