sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:エタニティ 永遠の花たちへ

2018-09-14 | 映画


個人的映画ベスト5に入る映画「青いパパイヤの香り」の
トラン・アン・ユン監督作品ですがあまり期待はしてなかった。
この監督の前作「ノルウェイの森」(はい、村上春樹原作ですね)が、ダメだったので。
ノルウェイの森は、原作は嫌いじゃないのに、映画はどうも期待はずれで
全然気持ちが動かなかったのはなんでだったかな。それも覚えてない。
そして、この「エタニティ」も予告見てどうも今一つな予感だったんですよ。
映像はきれいだけど、なんか、単なるあらすじをきれいな映像に乗せただけみたいな。
だから、劇場では見損ねて、DVDになるのを持って見ました。

そしたら、これ、なんかね、不思議な映画。
予告編そのままで、心を強く揺さぶられることがないまま、
きれいなアルバムを見ているみたいなまま最後まで行くのです。
人の営みのドラマを、連続して流れる時間の中に描き出すような映画ではないです。
会話やセリフは極端に少なく、ナレーションで話が進み、
あらすじの要所要所の挿絵をつなげた動くアルバムという感じの作り。
それが最後まで2時間続くのだから、不思議な感じです。
でも、退屈しないのが、また不思議。
褒めていいのかけなしていいのか、難しい。笑

内容的には、お金持ちの世界で、薄っぺらく空っぽといえばその通り、
人は死ぬし悲しみはあるけど、悩みはない美しい世界、の話ですね。

19世紀の終わりから3世代分の大きなドラマのはずなんですけど
登場人物はみな貴族やブルジョワだから、愛することと喜ぶことしかなくて、
子どもを6人も7人もあるいはもっと生むのが何よりの喜びで、
家族や大切な人が死ぬのが何よりの悲しみ、というすごいシンプルさ。
美しいものに満たされた何不自由のない世界の中で、
生まれる、愛する、死ぬ、だけしかない。

この映画の前日に見た「女の一生」(モーパッサン原作)のヒロインには、
たとえ貴族といえども、悩みはありました。夫の裏切り、子どもの放蕩。
満たされない愛。空虚。孤独。
でも「エタニティ」は、本当にひたすら、きれいなものだけの世界なのです。
あまりに捉えどころがないまま2時間見て、何かケチをつけようと思ったものの、
自分が途中、全然退屈しなかったことに気づき、改めて驚く。不思議な映画。

ラストシーンは現代の場面が少しだけ出てきます。
この大家族の子孫が歩いている街のスケッチ、という感じのほんの数分。
100年前からの連続性はあまり感じられないながら、過去の後にある今を
感じさせる、洒落た終わり方ですね。

しかし、ブルジョワ家族の増え方すごい。三世代で200人とか。になってる。
本当に生んで増えるのが何よりの幸せなんだなぁ。不思議ー。
まだ「個」というものに悩まなかった時代なのかもね。

この、ひたすら美しい映像の撮影監督はマーク・リー・ピンビン。
このトラン・アン・ユン監督の『夏至』『ノルウェイの森』、
そしてウォン・カーウァイ監督の声また大好きな映画『花様年華』も彼だそう。
なるほど納得。

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