教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

週案作成の時間に関する実際的問題

2007年06月25日 20時33分38秒 | 教育研究メモ
 非常勤2週目が終わり、今日で3週目に入ります。
 今回は、授業作成の時間について。

 教員の仕事として、一般に周知されているのは、教室における教科指導でしょう。45分~50分の時間のうちに、生徒たちが一定の教科内容を学習するため、指導を行います。いわゆる「授業」です。授業は、誰かが作ってくれるものではありません。教員が自分で内容を構成し、作り上げるものです。では、授業はいつどのくらいの時間を使って作られているのでしょうか。
 非常勤講師には、設定された授業の時間以外に、「週案作成」という時間が設定されており、毎日・毎週の授業を作る時間として利用されています。週案作成の時間は、週当たり担当授業時間数が10時間以上の場合には週2時間以内、週当たり担当授業時間数3時間以上9時間以下の場合には週1時間以内に設定されています。要するに、10コマの授業を2時間程度で作れといっているのです。
 ベテランになると、それくらいで十分なのかもしれませんが、2時間でできることなど知れています。せいぜい、何をするか、その時間の学習内容を簡単に確認するくらいで、2時間はあっという間に過ぎてしまいます。いわゆる創造的な授業や子どもの能力をのばすようなを作るには、その授業時間内で学習すべき内容を熟知し、発問や学習する順序を工夫していかなくてはなりません。ましてや、1コマの授業で対応する子どもを1クラス30人とすると、子ども300人の一人一人の特性を踏まえた上で学習内容を構成することなど。あなたは、これらのことを2時間でできると思えますか?
 2時間というのは非常勤講師の場合だけかもしれませんが、正規採用の教員も同じだと思います。正規採用の教員は、17時過ぎまでが勤務時間ですが(もちろん定時に帰ることができる教員など存在しないと言ってもよいと思います)、前にも言ったとおり彼らには生徒指導やその他の校務などで空き時間などほとんどありません。結局、勤務時間外の時間を大量に使って、授業を作っているのが現状なわけです。
 上記のような授業を作るために、どれだけの時間が必要かは今の私にはわかりませんが、とにかく今設定されている時間数ではとても足りないことは間違いありません。当然、前にも言ったとおり、教員に空き時間などほとんどないのであり、単に週案作成の時間を増やせばいいものではありません。教員一人当たりの授業数を減らした後、週案作成の時間を増やす必要があります。言うまでもなく、授業数を減らせば、教員数を増やさねば現状維持は無理です。また、時間を増やすだけではなく、教員が授業作成・教材研究をしやすい環境を作ることも大事だと思います。例えば、教材準備室の充実や教員同士の情報交換の機会を増やすことなどが挙げられるでしょう。
 とにかく、今の状態より教育費を切りつめて「学力向上」を唱えるなど、無茶もいいところです。教員の努力でまかなえる部分は、もうめいいっぱい使っているというのが現状です。教員たちは、ギリギリのところで教育現場に立っています。日本国民の「学力向上」を目指すなら、第三者機関などという曖昧なものにお金を使うよりも、むしろ教員の新規雇用に回して、教員一人一人にもっと時間を与えるべきです。
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