老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

韓国への半導体素材などの輸出規制問題  その②  ~???~

2019年07月06日 21時12分42秒 | 政治・経済・環境・核兵器など
 確かに最近では余り見受けられないこのような日本政府の毅然とした(?)というかトランプ流の対応に喝采を贈る人も多いようですが、捻くれ者の私としてはやはりこの行動には反対で、ここは少し異論を述べておかざるを得ないでしょう。

◆韓国政府の優柔不断さが最大の問題
 先ずこの点は、はっきりとしておきます。私は韓国政府の立場を認めるものではありません。
・如何に過去の政府が交わしたとは言え、国と国とが関わる問題に関しては政府として、明確で判り易い説明を対外的にすべきでしょう。

・これは、韓国政府が国内の強硬な意見に十分な対応が出来ずに優柔不断さを保ちながら、対外的には強硬策を表明せざるを得ない状態が続いているからで、先ず国内の意見を纏めてからそれに基づいた外交策を摂る事が必要でしょう。

・仮に、過去の政府が交わした対外的な約束が、環境の変化で国民への同意が得られずに順守出来ないような状態になれば、現政府としては約束を守れなくなったと、はっきりとその理由を表明し、まず当初の約束の白紙化とそれから派生する種々の問題に正面から向き合う事から進むべきでしょう。


◆日本政府の対韓政策には、韓国民への対話姿勢がなかった
 確かに隣国韓国との間に存在する現在の種々の問題に対する日本政府としての言い分はあるのでしょうが、以前にも少し触れたと思いますが、私はやはり日韓の根本的な問題には、今迄の日本政府の対韓国国民に対する姿勢の問題もあるように思えます。

・即ち、日本政府の公式態度は、韓国政府との間に取り交わした、「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」(通称日韓基本条約)を拠り所にして、“両国間の請求権は最終的に解決済”との態度を基本にしており、慰安婦や徴用工問題に対しても、頑なにこの態度を変えようとはしません。

・確かにこの条約は第2次大戦後の画期的な条約ですが、この条約が締結されたのは1965年(昭和40年)6月で、時まさに日本は朝鮮戦争に拠る特需効果もあって第二次戦争の痛手から復興をなしつつあり、曲がりなりにも経済発展の明かりが見えてきた時期ですが、一方韓国は1953年7月に朝鮮戦争休戦協定に署名し休戦に至ったばかりで、疲弊した国家を如何にして立て直すかに直面している時期でした。

・このような時期に、締結された条約は、日本が朝鮮半島に残したインフラ・資産・権利を放棄するとともに、計約3億ドルにもなる無償の生産物や役務の提供や、2億ドル相当の有償の生産物や役務の提供、更に
3億ドル以上 民間借款を与え、日韓国交樹立というものでしたが、戦争で被害を受けた韓国民に対する直接の補償という事は明記されていません。

・当時の韓国の国家予算は3.5億ドル(因みに、当時の日本の外貨準備額は18億ドル程度で、為替は1ドル=360円)と言う事を考えれば、この金額は当時の韓国国家予算の2年分以上の資金提供という莫大なものしたが、当時の韓国の国情からして先ず賠償金を入手することが先で、国民全てに対してこの条約の内容を充分に説明していたかと言えば多分に?でしょう。

 事実、韓国政府は日本との交渉で補償金を受けとった後に韓国政府が国民に対して個別支給するとしていましたが、韓国政府は上記以外の資金の大部分は道路やダム・工場の建設などインフラの整備や企業への投資に使用し、そのため「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展を起こせることになりました。

 その陰で、韓国政府が1971年の「対日民間請求権申告に関する法律」、及び1972年の「対日民間請求権補償に関する法律」(1982年廃止)によって、軍人・軍属・労務者として召集・徴集された者の遺族に個人補償金に充てた総額は約91億8000万ウォン(当時約58億円)と、無償協力金3億ドル(当時約1080億円)の5.4%に過ぎなかったと言われています。

・このように、占領時下における様々な被害を被った一般市民に対する賠償は非常に微々たるものでしかなかったことになり、国の成長と共に権利意識が高まった韓国国民の多くは、“日韓条約は、韓国の困窮時に乗じて、正式な謝罪もないままに、占領時の色々な問題を一まとめにして日本が金で解決しようとしたもの”という認識が多いのはある意味では当然でしょう。

 自国の政府が当てにならず、しかも条約の補償対象が明文化されていない部分に対して、加害者というよりも過去に自分達の犠牲の恩恵を受けた組織に対して求償を求めるのは当然の成り行きでしょうし、もし私が逆な立場だったら同じような行動を起こしたと思います。


◆一方、日本政府が採ってきた政策は飽くまで「日韓基本条約で解決済み」一点張りの極めて冷たい態度だったといえるでしょう。

・交渉の当事者である、韓国政府に対してはこれで良いのかも知れませんが、侵略され実質的な占領下にあった国で、自発的か傀儡政権の命令だったのかを問わず、自身や親子が戦争や生産に駆り出されて大きな犠牲を被った生身の人達(ある意味では、日本の一般国民と同じく、戦争被害者なのです)に対してはよりきめの細かい説明をすべきであったと思います。

色々な国内問題に対して選挙権を持つ国民に対しても、口では“親切で丁寧な説明”を自国民に約束しながらも、それが口先だけのその場逃れの言い訳だという事が明白な対処法を重ねている現政権の姿を見ていると、外国の人に対するより誠意のない対応はある程度推測できるというものです。

・人は誰でも、自分が信頼できる人と信頼できない人を敏感に見分けますが、今迄の日本政府の対応が韓国国民にすればとても信頼できないような印象を与えてきたのは事実でしょう。
 やはり、同じ事象に対しても、被害者と加害者では見かたが全く異なるわけで、被害者に対しては本より“親切で丁寧な態度”での説明の積み重ねが必要だったでしょう。


◆もう一つ気になるのが、今回の輸出規制発動の要因として、7月3日の党首討論会で安倍首相が「(韓国との)信頼関係が失われた結果、安全保障上の懸念が生じた」と回りくどい発言をされていることで、仮にもこれが韓国経由で日本の利害関係に関わる北朝鮮への流出などを意味するものならば、はっきりと把握されている事実を日韓両国民に明示して、曖昧さを解いた方がより了解を得やすいのではないでしょうか。
(まさ)