老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

韓国への半導体素材などの輸出規制問題  その③  ~この政策がもたらすもの~

2019年07月07日 20時01分43秒 | 政治・経済・環境・核兵器など

 以上色々と今回の政府の施策について、私なりの意見を申しましたが、更にこの施策に伴う種々の問題が予想されます。

◆一番問題なのはこの輸出規制策が発表されたのが、日本で初めて開催された20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)から僅か2日後だということです。

・このG20では、日本は議長国として苦心の末、、「自由で公正、無差別的で透明、予見可能で安定した貿易環境となるよう努力し、開かれた市場を保っていく」と首脳宣言をまとめたのではなかったのでしょうか?

 貿易に拠る立国を意識せざるを得ない日本政府は、これまでは高関税による脅しや、通商政策を政治的紛争の解決に使おうとする動きには強く抗議してきたはずで、安倍政権は米国離脱後の環太平洋経済連携協定(TPP)の取りまとめを主導し、欧州連合(EU)とも経済連携協定(EPA)を結ぶと共に、保護主義が広がる世界で自由貿易を守る一定の役割を果たしてきた結果として、上記の首脳宣言が纏められたのだと思います。

・これらのG20の宣言に向けた流れに逆行するかのように、菅官房長官は今回の対韓輸出規制実施の理由として、(1)日韓間の信頼関係が著しく損なわれた(2)韓国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した。との2点をあげました。

 前者に対しては、元徴用工訴訟を巡る韓国政府の対応への不満が背景にあり事実上の対応措置といえるでしょうが、「日本側が節目と捉えていたG20(主要20カ国・地域首脳会議)までに満足する解決策が示されなかった」と言いながら、G20参加の為に韓国の大統領が来日されたというのに、この差し迫った問題を積極的に話し合おうとする日本側の態度が一般国民には殆ど感じとれませんでした。

 更に、後者については具体的な中身を明らかにしていませんが、この措置は“透明、予見可能で安定した貿易環境となるよう努力”という精神からは程遠く、このままでは対韓輸出規制は自由貿易堅持に対する日本のこれまでの努力を損なう恐れが多分にあるでしょう。
正に、“百日の説法、屁一つ”の恐れがあります。

・よく言われている様に、報復の連鎖に「勝者」はいません。
確かにこの輸出規制の対象となった素材などについては現時点では日本が大きな技術力を持っているのかも知れませんが、今迄の歴史を見てもこのような技術力の差は直ぐに他の国に埋められるでしょうし、資源に乏しい日本には自由な貿易体制が最も相応しい事を学んだはずです。

 逆に、この措置により日韓の政治的対立は取り返しのつかないような状況にまで発展したといえるでしょう。トランプの物まねに拠る大きな失政で、唯でさえ余りにも米国寄りの姿勢で存在感が薄らいでいる日本の国際的な立場の更なる凋落にならなければ良いのですが…


◆もう一つ私が気になるのは、今回の措置が元徴用工問題を機にしているようですが、この問題で差し押さえなどの実害が懸念されるのは、新日本製鉄(現新日鉄住金)・三菱重工業・不二越・IHIなど70社を超えるようですが、当然ながらこの多くは、戦前の財閥系の大手会社が多いのです。

 これに対して、今回の輸出規制対象となる3品目のメーカーについては
(レジスト)JSR(旧日本合成ゴム㈱)・信越化学工業㈱・東京応化工業㈱
(フッ化水素)ステラケミファ㈱・森田化学工業㈱
(フッ化ポリイミド)JSR
というような、比較的小さな規模(?)の会社が多いようです。

 これらの会社の詳しい経歴や、今回の措置に対する事前の根回しなどは判りませんが、政府がいつも採っている大手企業優先策の結果でなければ良いのですが・・・(まさ)