ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

環境書評 長谷川公一著 「脱原子力社会へー電力をグリーン化する」 岩波新書

2011年12月11日 | 書評
電力のグリーン化による脱原子力社会のシナリオ 第23回 最終回

4)脱原発社会へのシナリオ  (5)

2009年の東北電力の資料によると次のようになる。
2009年東北電力電源構成(発電量736億kWh)
電源構成 構成割合% 稼働率%
水力      10.3    23.2
原子力     60.6     68.5
火力       27.7     16.9
再生可能    1.4     43.9

東北電力の特徴は、原発依存度が極めて高く、火力・水力の稼働率が極めて低いのである。原子力をすべて停止しても(2011年度秋現在停止中であるが電力不足は深刻ではない)、宝の持ち腐れであった火力と水力の稼働率を上げれば容易にクリアできることが分かる。ではなぜ原発の構成比率が高いのかといえば、それは温暖化対策であり、発電コストが理不尽に安く見積もられて(税金に化けているにすぎない、経済外行為)原子力を使うほど電力会社の利益が上がる経済政策的仕組みが出来ていたからである。

次に日本全体の電源構成を見ながら原発をなくする3つのオプションを検討しよう。
2010 年日本の電力電源構成(発電量9762億kWh)
電源構成   構成割合%  稼働率%
  水力    8.7       20.7
 原子力    30.8      70
  火力    59.3     44.8
  (天然ガス 27.2     48.5)
  (石炭    23.8     68.2)
  (石油    8.3      20.1)
 再生可能   1.4        -

オプション1:原発を完全に火力で置き換えるシナリオ。火力の稼働率を68%に上げるだけである。炭酸ガス排出量は15%ほど上昇する。
オプション2:オプション1の天然ガス火力発電の稼働率を引き上げる。7.5%の節電を実行することで原発は停止できる。炭酸ガス排出量は約8%増加する。
オプション3:5%の節電で原発7基分、天然ガス稼働率引きあげで原発26基分、再生可能エネル義開発で原発13基分をまかなうシナリオである。
(完)

読書ノート 桑原武夫訳編 ディドロ・ダランベール編 「百科全書-序論および代表題目-」 岩波文庫

2011年12月11日 | 書評
フランス革命を準備した、フランス啓蒙思想家の集大成 第14回

親権 (ジョクール)
 民法の親権を論じたものであるが、ジョクールの主張は母親も父親とおなじ親権を持つこと、および親権の根拠を親の子に対する監護義務に求めている点である。近代的な親子法の原理を明確に表現している。日本でこの近代的親子法が出来たのは第2次世界大戦後であり、百科全書の約200年後のことであった。

平和 (ダミラヴィル)
 自然状態においては人は戦争状態ではないとする論はホッブスの論を否定し、18世紀のオーソドックスな自然法思想に基づいている。そのおおらかな平和思想は、合理主義、楽観主義という特質を持つフランス啓蒙主義思想の国際主義の傾向を代表している。
(つづく)

文芸散歩  池田亀鑑校訂 「枕草子」 岩波文庫

2011年12月11日 | 書評
藤原道隆と中宮定子の全盛時代を回想する清少納言 第69回

[190] 「八月ばかりに 白き単・・・」 第3類
 八月ぐらいに、白い単衣を着て紫苑重ねの優雅な衣装を着ているのだが、胸をひどく病んでいたので、友達や公達らも見舞いにやってきて様々にありきたりの見舞いをいうのは白けるの。遠くで思っている方が感激ね。帝にも聞こえて御読経の声のいいお坊さんを遣わすのだが、狭いところに見舞い客が一杯いるのは本当に罰当たりよ。

[191] 「すきずきしくて・・・」 第3類
 色好みの高貴なお方が夜はどこへ行ってきたのだろう、暁に帰ってから起きると、眠そうなのだが硯を取り寄せ墨を丁寧にすりおろして、心をこめて書いているしどけない姿も生かすじゃないの。白い衣に山吹・紅をかけ着て、しわしわになった単衣をじっと見つめて女への手紙を書き終え、前にいる女房には渡さず、すっと立って小舎人童と随身を呼び寄せ、耳打ちして、去ってゆく使いを見送ってもずっと眺めている。それからお経のいいところを低く口ずさんでいると、奥のほうで粥と手洗いなどを用意して勧めるので入っていって、文机に向かって書等を見、興味のあるところは高い声で復唱している。手を洗ってから直衣を着て法華経第六巻を読む。きっと近所なのだろうか先ほどの使いが合図をするので、書を打っちゃって返事の心を奪われている。この罰当たりめが。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「師走暮景」

2011年12月11日 | 漢詩・自由詩
新冬橘柚帯繁霜     新冬橘柚 繁霜を帯び
 
師走初寒籬菊荒     師走初寒 籬菊荒れる

急景玄鴉窺浄緑     急景玄鴉 浄緑を窺い
 
無為白髪立昏黄     無為白髪 昏黄に立つ


○○●●●○◎
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●●○○○●●
○○●●●○◎
(韻:七陽 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 シュポア 「クラリネット協奏曲 第2番、第4番」

2011年12月11日 | 音楽
シュポア 「クラリネット協奏曲 第2番、第4番」
クラリネット:エルンスト・オッテンザマー 
ヨハネス・ヴィルトナー指揮 スロバキア放送交響楽団
DDD 1994 NAXOS

シュポア(1784-1859)はドイツのヴァイオリニストでもあった。室内楽を得意とし、初期ロマン派に属する。