医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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心臓カテーテル検査・治療の安全性

2006年01月03日 | 循環器
心臓の血管はそのままではレントゲンに映らず、造影剤という薬を血管に流しながらレントゲンを撮らないと狭心症や心筋梗塞の診断はできません。狭心症や心筋梗塞は直接命に関わりますからとても重要な検査ですが、危険性を強調しすぎると検査自体が避けられ、治療の機会をのがしたまま命を失うという事が起きます。逆に、危険性を強調しないで検査をすれば合併症が発生したときに訴訟という問題になりえますから、他の検査と同様、医者は常にジレンマに陥っているといっても過言ではないと思います。

それでは、心臓カテーテル検査・治療の安全性はどうなのか。今まで一番多くの統計が取られた調査は1991年のCathether Cardiovascular Diagnosisの報告で、総数59,972人が調査されました。

結果は
検査で死亡した確率は0.11%(約1,000人に1人)
心筋梗塞を起こした確率は0.05%
脳梗塞は0.07%

軽度の合併症として
血管損傷が0.43%
不整脈が0.38%
アレルギーが0.37%
血行動態悪化が0.26%でした。

しかし、これらは15年前の統計であり、医療機器が発達した現在はこれらの確率より少ないと考えられます。さらに最近は15年前と違い、橈骨動脈といって手首の動脈から施行できますので侵襲も少なくすみます。最近、総数は少ないものの同様の調査結果が報告されました。

Journal of Invasive Cardiology. 2005;17:651.からの報告です。
(インパクトファクター★☆☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

Safety and efficacy of the percutaneous radial artery approach for coronary angiography and angioplasty in the elderly.

この調査では850人が70歳未満の600人と、70歳以上の250人に分けられ調査されました。橈骨動脈から施行された検査・治療が対象となりました。

結果は、両群で死亡や心筋梗塞という合併症は認められませんでした。70歳未満群では1人の一過性脳虚血発作が発生し、70歳以上群では1人の脳梗塞と2人の一過性脳虚血発作が発生し、両群で発生率に違いは認められませんでした。一過性脳虚血発作とは、脳血管障害により、突然、片麻痺、失語症などの脳局所症状が出現し、24時間以内(通常10~20分以内)に回復する病態をいいます。

両群を合わせると850人で1人の脳梗塞(1,000人に約1人)と3人(1,000人に約3人)の一過性脳虚血発作が発生したという事になります。ただしこの報告では検査だけでなく風船治療などで硬いカテーテルを使用した場合を含んでいますので、検査だけの場合はこれらの確率はもう少し少なくなると思います。

前回の小児麻痺の場合と同様に、医療紛争を避けるために、どれだけ細心の注意を払いながら検査や治療をしていても一定の確率で合併症が起こるという事を、あらかじめ患者さんに伝える事はとても大切な事です。

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