医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

疾患の種類により死亡リスクと体重の関連が異なる

2008年06月10日 | 生活習慣病
先日「たかじんのそこまで言って委員会」の「あなたの許せないウソ・偽装は?」というコーナーで、精神科医 和田秀樹氏が「メタボリック症候群の基準はおかしい。病気はいろいろあるけれど、あれは循環器内科医だけが決めたものだ。本当は少しメタボリックな人が一番寿命が長い。コレステロールにはセロトニンを伝達する作用があり、セロトニンが欠乏するとうつ病になる。人間の寿命は心臓・動脈硬化だけで決まっていない」と発言していました。

私も同様の疑問を持っています。体重が多いこと、コレステロールが高いことは本当にこれほどまでに敵視されなければいけないことなのでしょうか。

そこで、こんな論文を調べてみました。

Cause-specific excess death associated with underweight, overweight, and obesity.
JAMA. 2008;298:2028.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

米国の1971年からのデータ全体(最終は1994年)で571,042人の対象者を

低体重(BMI <18.5:身長170cmで53.5kg以下、160cmで47kg以下)、
過体重(BMI 25~30:身長170cmで72~86kg、身長160cmで64~77kg)、
肥満(BMI >30:身長170cmで86kg以上、160cmで77kg以上)、
低体重と過体重の中間の体重(論文の目的上、標準体重とは呼べません)に分けて、

①心筋梗塞などの心血管疾患、②ガン、③心血管疾患とガンでない疾患による死亡が2000年まで調査されました。

結果は、
低体重では心血管疾患とガンでない疾患による死亡が増えました。
低体重では心血管疾患とガンによる死亡と関係はありませんでした。

過体重では心血管疾患とガンでない疾患による死亡が減りました。
過体重では心血管疾患とガンによる死亡と関係はありませんでした。

肥満では心血管疾患とガンでない疾患による死亡と関係はありませんでした。
肥満では心血管疾患による死亡が増えました。


まとめますと、極端に体重が多いと(肥満)これまで言われていたように、心血管疾患による死亡が増えるのですが、過体重であっても心血管疾患とガンによる死亡を増やすことはなく、むしろ心血管疾患とガンでない疾患による死亡が減っていたのです。

つまり、ちょっと太め(過体重)であることに不利益は認められなかったのです。

腹囲を基準として、ちょっと太めの人をスクリーニングしようとしているメタボリック症候群という概念には明らかに修正が必要であることがお分かりいただけると思います。


「標準体重」、「理想体重」といった表現も再考が必要です。


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