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心房細動に対するワーファリンの効果

2006年05月01日 | 循環器
心臓の不整脈の一つに心房細動があります。心房というのは心臓の上部にある部屋のことで、通常は拍動にあわせて規則的に拍動しています。心房細動では、その名のごとく、心房が拍動するのではなく細かくブルブルと震える状態になっています。

心房細動では心臓の中の血液の流れが緩やかになり、たとえ心臓内であっても、血液の塊(血栓)が生じやすくなります。血液の塊が生じると一部が脳などに流れ脳梗塞を起こしやすくなります。特に高齢者では心房細動でなくとも多発性の脳梗塞を認めますが、 心房細動の人の脳のMRI検査を行うとほとんどの人で多発性の脳梗塞を認めます。

心臓の中で血液の塊ができないようにするのがワーファリンという薬で、高齢者の心房細動の方には脳梗塞を予防するためにワーファリンが処方されます。

今回は、脳梗塞はどれくらいの確率で起きているのか、またワーファリンがどれくらい脳梗塞の予防に有効かという論文を紹介します。

Warfarin in the prevention of stroke associated with nonrheumatic atrial fibrillation. Veterans Affair Stroke Prevention in Nonrheumatic Atrial Fibrillation Investigators.
New England Journal of Medicine. 1993;327:1406.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★☆)

対象はリウマチ熱による弁膜症が原因でない心房細動の患者さん571人で、ワーファリン内服群と非内服群に無作為に分けられ2年弱調査されました。571人のうち525人は過去に脳梗塞を発症しておらず、46人は過去に脳梗塞を発症していました。

過去に脳梗塞を発症していない方のワーファリン非内服群では265人中19人(4.3%/1年)が脳梗塞を発症(4.3%/1年)したのに対して内服群では260人中4人(0.9%/1年)が脳梗塞を発症しました。70歳以上の年齢では非内服群では4.8%/1年の発症率が0.9%/1年に改善されました。

血液の塊ができないようにすると逆に出血性の病気が増えるのではないかと、その件に関しても調査されましたが、脳出血は内服群の中で1人発症しただけでした。他の出血性の疾患、例えば胃や腸からの出血は内服群では6人(1.3%/1年)で、非内服群の4人(0.9%/1年)と比較して違いはありませんでした。

調査期間に脳梗塞を発症したのは、過去に脳梗塞を発症していない群と比べて過去に脳梗塞を発症した群で多かったのですが、ワーファリン内服群で6.1%/年、非投与群で9.3%とワーファリンの内服が脳梗塞の発症を予防していました。

まとめますと、心房細動の患者さんは、脳梗塞の予防のためにワーファリンを内服する事が必要で、特に70歳以上の方では年間4.8%の発症率を0.9%に改善します。また、過去に脳梗塞を発症した方では年間9.3%の発症率を6.1%に改善します。


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