5年前に心房細動に対する新しい抗凝固療法についてお伝えしました。5年前はまだ発売されていませんでしたので、今振り返ってみると時の流れは早いものです。
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心房細動に対する新しい抗凝固療法プラザキサ
以前からのワーファリンに比べれば「新しい抗凝固療法」ですが、5年経過した今では「新しい」とは言えなくなってきました。
薬は、プラザキサ(日本ベーリンガーインゲルハイム) 、イグザレルト(バイエル)、エリキュース(ファイザー)の3種類と、最近リクシアナ(第一三共)が加わり4種類になりました。
それらの薬はワーファリンを使用するより脳出血のリスクが少ないと宣伝され、多くの医者たちもそれらの宣伝に乗せられてその情報を信じていますが、私にはどうしてもそうは思えないのです。これから数回に分けて、その根拠をお伝えしたいと思います。
Warfarin treatment in patients with atrial fibrillation: Observing outcomes associated with varying levels of INR control
Thrombosis Research 2009;124: 37–41
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)
ワーファリンという薬を使う場合、血液検査のPT-INRという血液のサラサラ度を示す値を見ながら錠数を調節します。70歳未満では2.0~3.0、70歳以上では1.6~2.6を目標としています。そして例えば1月に1回測定して、合計10回のうち6回がその目標範囲ならTTRという指標(time in therapeutic range)は60%とされます。
上の図はこの論文に掲載されているものです。TTRが70%以上にワーファリンの量が調節されると、心房細動の患者の脳梗塞+脳出血の発症率は約5年間で5%ぐらい(青色、一番上のライン)ですが、TTRが50%~60%だと灰色のラインのように約5年間の発症率は20%にもなります。そして、ワーファリンを内服しない場合は水色のラインで約5年間の発症率は25%です。
医者でない方には、患者のTTRを70%以上に保つことがどれくらいのことなのかを実感するのは難しいのですが、私の場合、患者全体の治療では90%ぐらいです。決して60%にはなりません。患者全体でTTR60%でしかコントロールできないのであれば、そういう医者こそワーファリンの処方は止めた方がいいということになります。
さて、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの3種類の臨床試験で、それらの薬と比較対象になっているワーファリン群のTTRはというと、驚くべき事に60.6~71.2%なのです。
ワーファリンをTTR約60~70%と下手な調節の仕方で患者に投与すると、上の図に示されているように、まるでワーファリンを投与していないのと似た発症率で、脳卒中が起きてしまいます。
つまり、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの3種類の臨床試験でのワーファリン投与群というのはほとんどワーファリン非投与群に近い群であるということなのです。
そもそも、同じワーファリン内服でも、コントロールの上手下手で上の図のようにこれだけ発症率が違うのなら、ひとまとめにして「ワーファリン投与群」などとは、全く言えないのではないでしょうか。ワーファリンからの利益が十分に享受できていない群です。
なぜ、これらの臨床試験でのTTRのコントロールはこんなに下手であったのか、続きは次回お伝えしたいと思います。
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以前からのワーファリンに比べれば「新しい抗凝固療法」ですが、5年経過した今では「新しい」とは言えなくなってきました。
薬は、プラザキサ(日本ベーリンガーインゲルハイム) 、イグザレルト(バイエル)、エリキュース(ファイザー)の3種類と、最近リクシアナ(第一三共)が加わり4種類になりました。
それらの薬はワーファリンを使用するより脳出血のリスクが少ないと宣伝され、多くの医者たちもそれらの宣伝に乗せられてその情報を信じていますが、私にはどうしてもそうは思えないのです。これから数回に分けて、その根拠をお伝えしたいと思います。
Warfarin treatment in patients with atrial fibrillation: Observing outcomes associated with varying levels of INR control
Thrombosis Research 2009;124: 37–41
(インパクトファクター★★★☆☆、研究対象人数★★★★★)
ワーファリンという薬を使う場合、血液検査のPT-INRという血液のサラサラ度を示す値を見ながら錠数を調節します。70歳未満では2.0~3.0、70歳以上では1.6~2.6を目標としています。そして例えば1月に1回測定して、合計10回のうち6回がその目標範囲ならTTRという指標(time in therapeutic range)は60%とされます。
上の図はこの論文に掲載されているものです。TTRが70%以上にワーファリンの量が調節されると、心房細動の患者の脳梗塞+脳出血の発症率は約5年間で5%ぐらい(青色、一番上のライン)ですが、TTRが50%~60%だと灰色のラインのように約5年間の発症率は20%にもなります。そして、ワーファリンを内服しない場合は水色のラインで約5年間の発症率は25%です。
医者でない方には、患者のTTRを70%以上に保つことがどれくらいのことなのかを実感するのは難しいのですが、私の場合、患者全体の治療では90%ぐらいです。決して60%にはなりません。患者全体でTTR60%でしかコントロールできないのであれば、そういう医者こそワーファリンの処方は止めた方がいいということになります。
さて、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの3種類の臨床試験で、それらの薬と比較対象になっているワーファリン群のTTRはというと、驚くべき事に60.6~71.2%なのです。
ワーファリンをTTR約60~70%と下手な調節の仕方で患者に投与すると、上の図に示されているように、まるでワーファリンを投与していないのと似た発症率で、脳卒中が起きてしまいます。
つまり、プラザキサ、イグザレルト、エリキュースの3種類の臨床試験でのワーファリン投与群というのはほとんどワーファリン非投与群に近い群であるということなのです。
そもそも、同じワーファリン内服でも、コントロールの上手下手で上の図のようにこれだけ発症率が違うのなら、ひとまとめにして「ワーファリン投与群」などとは、全く言えないのではないでしょうか。ワーファリンからの利益が十分に享受できていない群です。
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