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医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

小児用ロタウイルスワクチン

2006年04月01日 | 小児科
アメリカのFDA(食品医薬品局:日本の厚労省のような所)はこのほど、小児下痢症の原因となるロタウイルスに対するワクチン(ロタ・テック)を承認しました。

小児の白色下痢症の原因の7割はロタウイルスによるもので、ほぼ全ての小児が1度は感染していると考えられ、嘔吐で発症し下痢を生じて重度の脱水状態に陥ることもあります。ロタウイルスはほとんどの消毒薬に対して耐性があり、しかも水中や玩具などの表面でも数週間生き延びるため衛生条件とは無関係に感染します。

アメリカでは、生後6~24カ月に重度のロタウイルス感染のリスクが一番高まり、5歳までにおよそ17人に1人が救急外来を受診し、65人に1人がロタウイルス胃腸炎で入院しています。多くの小児科医はロタウイルス胃腸炎が小児にとって深刻な疾患であると考えており、医師の94%がロタウイルスワクチンを使用したいと望んでいました。

ロタウイルスワクチンは米国メルク社が販売する予定で、これまで7万人以上の小児を対象とした臨床試験では、プラセボと比較してロタウイルス胃腸炎の98%を予防し、重度のロタウイルス胃腸炎の74%を予防しました。

1990年代後半に開発されていたロタウイルスワクチンは、プラセボと比較して腸重積の割合を増加させたため、発売中止になっていたので、今回の臨床試験でもそのことに重点が置かれ調査されました。投与後6週間以内に発生した副作用のうち統計学的にプラセボより多かったのは、割合はわかりませんが、下痢、嘔吐、中耳炎、鼻咽頭炎、気管支痙攣で、腸重積のリスクが増えるということはありませんでした。

ある小児病院の感染科部長は「小児科医は小児をロタウイルスから守る手段が得られた。約20年にわたりこのワクチンの研究に携わってきた多くの人々の努力が、この疾患の予防に貢献することができた」とコメントしています。


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水痘ワクチンの有効性

2005年12月08日 | 小児科
水痘ワクチンは日本が世界に先駆けて開発したワクチンで、生後12ヶ月から接種可能です。このワクチンは日本では「任意接種」ワクチンで、接種後の抗体陽転率は90%以上です。接種しても水痘にかかることもありますが、多くは軽症ですみます。副反応として発熱(2~3%)発疹(2%)接種局所の発赤腫脹(3%)があります。アメリカでは1995年から全員に推奨されています。1994年まではほぼ全員が発症し、年間約13,000例の入院と100~150件の死亡が報告されていました。

それでは、水痘ワクチンの有用性はどうかというJournal of American Medical Association. 2005;294:797.から最新の報告です。(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

Impact of varicella vaccination on health care utilization.

2002年におけるアメリカでの水痘ワクチンの接種率は81%に達しました。1994年から2002年までに10万人あたりの水痘による入院は2.3人から0.8人に減少しました。水痘に通院も10万人あたり215人から89人に減少しました。入院や通院は全ての年齢で減少し、特に年齢が低いほど効果は大きかったそうです。

接種しないとほぼ全員が発症するのですから、水痘ワクチンは接種した方が良さそうですね。

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今年もインフルエンザワクチン接種が始まりました

2005年10月23日 | 小児科
今年もインフルエンザワクチン接種が始まりました。
2004~2005年冬季は、日本ではA香港(H3N2)型とB型のインフルエンザの流行が見られました。2006年冬季のWHO(世界保健機関)による北半球世界におけるインフルエンザワクチンの推奨株は、Aソ連(H1N1)型とB型について2004~2005年冬季のWHOによる北半球世界におけるインフルエンザワクチンの推奨株と同一のものとなりました。

今年の株は
Aソ連型は20/99(H1N1) (ニューカレドニア)
A香港型は55/2004(H3N2) (ニューヨーク)
B型は361/2002(上海)
です。

昨年は、Aソ連型は20/99(H1N1) (ニューカレドニア)、A香港型は55/2004(H3N2) (ワイオミング)、B型は361/2002(上海)でしたから、A香港の株が変わりました。ちなみに一昨年は、Aソ連型は20/99(H1N1) (ニューカレドニア)、A香港型は2007/99(H3N2) (パナマ)、B型は7/97(山東)でした。

大部分の成人は今までにAソ連型(H1N1)インフルエンザ、A香港型(H3N2)インフルエンザ、B型インフルエンザに感染したことがあると考えられます。以前に感染したことがあれば弱い基礎的な免疫を持っていると考えられ、インフルエンザワクチンの1回の接種によりその冬を持ちこたえる免疫を獲得すると考えられます。以前にインフルエンザに対する免疫を獲得したことがない小児については、短くとも4週間以上の間隔を空けてのインフルエンザワクチンの2回の接種をするべきだと世界保健機関(WHO)は勧奨しています。

乳幼児にはワクチンの効果は弱いのですが有効であることが報告されており、65歳以上の高齢者と同様インフルエンザ感染に伴うリスクが高いので、アメリカでは2003年5月から小児の定期接種に導入されています(対象者は、6~23ヶ月の乳幼児、同居する18歳以下の兄弟)。

現在、日本でも乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果について臨床試験が進行中ですが、中間報告の段階では有効性が報告されています。

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情動は5歳くらいまでに原型が形成される

2005年10月14日 | 小児科
怒りや喜びなど一過性の感情の動き「情動」について、文部科学省の検討会(座長・有馬朗人元東大学長)は10月12日、「情動は5歳までに原型が形成されるため、乳幼児教育が重要だ」とする報告書をまとめた。

感情をうまく制御できない「キレる子ども」の増加が指摘されていることを受け、検討会では脳科学や医学、教育心理学などの専門家が各分野の研究を発表、教育に応用できる成果を探った。これまでの研究から科学的に判明したものとして
(1)情動は生まれてから5歳くらいまでに原型が形成される
(2)子どもが安定した自己を形成するには他者、特に保護者の役割が重要
(3)子どもの心の成長には、基本的な生活リズムや食育が重要-などを挙げた。

相手と一緒にいることで安心感や満足感を得られる「愛着」の形成の必要性も指摘。乳幼児期から良好な親子関係などを築き、愛着体験を豊かにすることで、対人関係能力や言語能力が伸長するとした。(共同通信)以上引用

就学態度は8歳まで、情動は5歳までだそうです。

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保育園で過ごす時間の長さは子供の発達にほとんど影響しない

2005年09月11日 | 小児科
保育園で過ごす時間の長さは子供の発達にほとんど影響せず、家族で食事をしているか、親に育児相談をする相手がいるかなどの要因が発達を左右する-。全国の夜間保育園の園児らを5年間追跡した厚生労働省研究班がこんな結果をまとめました。

一定の基準を満たした認可保育園に限った調査で、ベビーホテルなどは含みませんが、長時間保育の影響を調べた研究は世界的に珍しいです。これにより、短時間でも親子が適切に触れ合い、質の良い保育をすれば子供の発達に問題はないことが統計で示されました。

研究班は1998年から毎年、全国の夜間保育園約80カ所の園児3,000人前後の発達調査と親のアンケートを実施。今回は98年と2003年の調査にどちらも回答した185人の発達と保育時間、育児環境などの関連を分析しました。185人中、1日11時間以上の長時間保育の子供は28人、それ未満の通常保育の子供は157人で、保育時間の長さではコミュニケーションや子供の運動能力の差はありませんでした。一方、家族で食事をする機会がめったにない子供はある子供より他人の話し掛けに答えるなど対人技術の発達が遅れるリスクが70倍、理解度が遅れるリスクは44倍高かったそうです。

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小児喘息における吸入ステロイド薬の重要性

2005年08月06日 | 小児科
J Pediatrics. 1998;132:472(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)からの報告です。

みなさんも「ステロイド」に対しては、「副作用が強い」などのイメージをお持ちだと思います。ところが最近アメリカでは、吸入ステロイド薬の導入により年間の喘息死亡率が20%減少したという報告があります。また、喘息の子供において、発症から吸入ステロイド薬導入の期間が長ければ長いほど呼吸機能の改善が遅れるという報告もあります。

しかし子供にステロイド薬を使う事に対する抵抗はいまも強いのです。その理由の1つに、小児の成長を抑制するのではないかという懸念がありました。以前の研究N Eng J Med. 1997;337:1659(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★☆☆)では8~11歳の軽症~中等症の喘息の小児を、吸入ステロイド薬を使用しない群(80人)と、ベクロメタゾン(商品名ベタコイド、アルデシン)と呼ばれる吸入ステロイド薬を使用する群(81人)と、ベータ刺激薬という非ステロイド性の吸入薬を吸入する群(80人)で1年間の身長の変化を比較したところ、使用しない群と非ステロイド性の吸入薬群では6cmの変化を認めましたが、ベクロメタゾン投与群では4cmの変化しか認めませんでした。つまりベタコイドやアルデシンという吸入ステロイド薬を使用すれば成長が阻害される事が証明されたのです。

しかし本研究では、12~47か月の喘息の乳幼児で、吸入ステロイド薬を使用しない群(87人)と、フルチカゾン(商品名フルタイド)という新しいタイプの吸入ステロイド薬を使用する群で成長の差が認められませんでした。このように、使用するステロイドのタイプによっても成長は抑制されたり抑制されなかったりします。ちなみに、小児では血漿コルチゾール(ステロイドの一種)濃度の低い夜間就寝後に成長ホルモンが分泌されるため、ステロイドの就寝前投与を行うと就寝中の成長ホルモンの分泌が抑制され、成長への影響が強まります。
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小児の便秘

2005年07月09日 | 小児科
仕事が忙しく、ご無沙汰してしまいました。
Pediatrics. 2005;115:873からの報告です。(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

小児科を訪れる患者さんの3%は便秘です。そして小児消化器科を訪れる患者さんの30%に及びます。この研究の対象は、便秘で26箇所の小児科を訪れた2歳から7歳までの119人です。

調査は小児の親が日記をつける事で行われました。2カ月の治療の後の調査では、ほとんどのケースに下剤が処方されていて、内訳は塩類下剤の酸化マグネシウムが77%、大腸刺激性下剤であるセンノサイド が23%、小腸刺激性下剤であるひまし油が 8%、糖類下剤であるラクツロースが8%でした。半分のケースで摘便などが医師から勧められましたが、詳細については指示されていませんでした。治療の有効性は親がどれくらい治療に積極的であったかに依存しました。一番良いのは、浣腸や摘便で腸管内の便を取り除き経口の下剤を投与することでした。経口剤は症状によって調節する方が良いようです。

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