橡の木の下で

俳句と共に

大間テル子句集『まなぶ』

2023-01-03 22:24:45 | 句集紹介
『まなぶ』

2022年11月3日発行
著者  大間テル子
編集者 大間哲
発行  (株)オーエム
私家版

著者略歴

昭和6年6月6日 墨田区、大鳥家に生まれる
昭和20年3月10日 東京大空襲で焼け出される
昭和28年      國學院大學卒業、高校国語教師に就職
昭和30年      都立高校社会科教師の大間一男と結婚
昭和40年1月         長男 哲 出産
昭和55年頃         俳句を始め、馬酔木に投句
昭和59年             橡誌創刊 堀口星眠に師事
昭和60年     地元練馬で「橡さつき会」発足
平成10年       青蘆賞受賞
平成21年     橡同人となる
平成30年     12月16日インマヌエル富士見台教会のクリスマス礼拝で
         洗礼を受ける
令和4年秋    処女句集『まなぶ』発行 

著者住所

〒177−0034
東京都練馬区富士見台2−8−11

問い合わせ

大間哲
電話  03−3970−2883
メール  tetsu.hiromi.oma@gmail.com
      

『まなぶ』に寄せて

 大間テル子さんはいつお会いしても言葉のきれいな方である。端正な敬語を使われる。初めてお目にかかったのは大間さんのご自宅からほど近い、確か当時暮らしていた練馬の家で父星眠と一緒であった。私はまだ二十代の学生で父のおまけのようなものであったが、年長の大間さんは星眠に対するのと全く変わらず私にも応対してくださった。それから随分長い時間が流れ親しみは増していったが、大間さんの言葉は変わらない。大間さんが高校の国語の先生であったことを後にどなたかから伺い、ぞんざいな自分の言葉を顧みて赤面したことである。
 今回処女句集というのが不思議に感じられる。既に句集を拝読したことがあるように錯覚していた。そして集名を『まなぶ』とされたところも如何にも大間さんらしいお人柄を感じている。大仰なところのない、詩的な興趣の上澄みを掬いとったような作品の数々。学ぶところ大である。

蒼天を暗めて鶸の渡り来る
風が鳴るぴんと張りたる雪吊りに
松虫草紫紺の花が風招く
菊酒を夜の静けさに汲み交はす
波音や夕日を返す密柑山
露しぐれ一歩に浴びて河川敷
かつて夫今宵子とある河鹿宿
墨をする音のかそけき夏書かな
よく巻きし白菜ざくと二つ割り
菊守の声懸崖の裏手より
山の駅大炉に薪を足しくるる
母校百年白セーラーに迎へらる
馬下げの馬おのづから厩舎指す
永き日や動物を見つ見られつつ
春灯に牧野精緻の植物図
波除稲荷盆波垣を洗ひをり
海女小屋の軒毎に揺れほんだはら
初午や狐の面に振り向かれ
カヤックのもんどり打ちぬ照葉峡
雲海の果てから夕焼け滾りくる
甘酒を待てばぼーんと古時計
白衣観音御目なごめり芽吹き山

 卒寿記念ともいえる本集を編まれるにあたりご多忙なご子息が労を執られた。何よりのことと、心よりお喜び申し上げる。

         令和四年九月吉日

                 三浦亜紀子