大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 187『魔王曹操』

2024-06-15 11:30:44 | ノベル2
ら 信長転生記
187『魔王曹操』信長 




 シャラン!

 三蔵法師姿の一言主が高々と数珠持つ手を振り上げた!

 同時に弟曹素の骸をかき抱く曹操の姿がブレて見え始める。機を見るに敏な俺には武漢城頭にとてつもない危機が迫って来ているのが分かったぞ!

 ゾワッ!!

 武漢城内の空気が騒めいたかと思うと、ブレた曹操は一つになって腕をクロス。表情を隠し横浜の動くガンダムほどの大きさになった!

 ガオーーー!!

 雄たけびと共にクロスした腕を解くと、その首は悪魔のように青黒く、双眼は炯炯として天下った魔王そのものだ!

 グガアアアア!!

 ガシュイィィィーーン!

 再び吼えたかと思うと、跳躍しながら佩剣を一閃! 背後の城壁上三分の一を切り込んでAMAZONのニヤリマークの如き傷をつけた!

 グゴオオオオ!!

 三度吼えると、城壁のニヤリマークはのたうつ蛇のように苦し気に歪み、思う間もなく、グワァラと音を立てて崩れた!

 キャアアアアアア!! 

 並外れた驚愕は、ようやく極大の恐れになって爆発する!

「四方に逃げよ!」

 諸葛茶孔明が蠅タタキを振りながら叫ぶ。

 万余の避難者と兵たちだが一方向に逃げれば、またたくうちに薙ぎ払われ踏み潰されるだろう。四方に逃げれば、一方は間に合わずとも、半ば以上は逃げられるかもしれない。さすがは孔明、当を得ている。

 関羽と張飛は軍師の声と共に左右に散って群衆たちを四方に走らせる。備忘録と検品長も二手に分かれて零れた群衆を励まし逃がしていき、大橋の部下たちもそれに倣う。

 キャアアアアアア ウワアアアアアアアア

 広場には驚愕と恐れの悲鳴が満ちる。

 それに感応したのか、黒雲が沸き起こり空気までがささくれ立ってくる。

 なんということだ!

 何の呪いか因果の果てか、今や曹操は魔王に変じてしまった!

 時に英雄の中には複数の人格が存在する。中には信玄・謙信のように一枚看板という者もいるがな、それは一時代前の英雄だ。だからこそ、この異世界に転生し、学院で磨きをかけている。

 この信長も、転生の始めこそは戸惑い、妹の市にばい菌のような目で見られたが、今では三国志に足を延ばし人を助け身を修めている。大橋や孔明とも誼を通じ連帯して事に臨んでいる。

 荒ぶる曹操は、おそらくは転生などは考えたことも無く、この三国志で野望を膨らまし続けてきたんだ。

 個別の人格は統合もされず昇華もされず、野放図に膨らんで、とうとう融合して化け物になった!

「信長! 我々で食い止めるぞッパ!」

 茶姫は一言叫ぶと、沙悟浄に身を変えて曹操に挑みかかる。

 人の姿であるよりはフェイクとは言え沙悟浄の方が身体能力が高い。

「わたしも! ブヒ!」

 市も猪八戒になって飛んでいく。

「よし、俺も、ウキ!」

 俺も孫悟空になってジャンプする、すかさず筋斗雲が俺を載せて魔王曹操の直上に位置を占める。

 一言主の三蔵は残った城壁に佇立して、ひたすら念仏を唱える。

「おお、三蔵法師さまが!」「主従共々に立ち向かって」「守ってくださるぞ!」

 群衆たちも、逃げまどいながらも、魔王に立ち向かう我々に勇気づけられている。

 腹の底から湧いてくる高揚感!

 桶狭間の奇襲、姉川の戦い、長篠の戦、比叡山の焼き討ち、伊勢長嶋の一向一揆征伐……全ての戦いの高揚感がない交ぜになり、太々と力を収斂してくれる!

 キエーーーーーー!!

 ルイス・フロイスをして怪鳥の如くと言わしめた叫びをあげ、筋斗雲もろとも魔王曹操の脳天に打ちかかった!



☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
   
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)061・夏休み編 まずはワイキキビーチなのだ!

2024-06-15 07:10:11 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
061・夏休み編 まずはワイキキビーチなのだ!                     
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです




 自分で当選していながらよく分かっていないミリーだ。


 飛行機の中で千歳のお姉さんから聞かれてもパンフレットを差し出すだけのミリー。

 ムルブライト奨学金の交換留学生優待のアメリカ旅行。お姉さんの後でパンフを見たけど、アメリカらしく免責事項に関する記述がビッシリ。

 主体は個人旅行で旅行中の責任は本人に帰属しバナナの皮を踏んで怪我してもムルブライトは関知しないことまで書いてある。

 行き先は、アメリカ国内であれば原則自由。3Dバーコードを写メれば行き先に着いてのオプションが無数と言っていいほど現れる。
 わたしたちが「これだ!」と思ってチョイスすればたちどころに予定が組まれ、必要な予約がなされる。


 ハワイと言えばワイキキビーチ!


 なんともミーハーだけど健康的なチョイス。

「ねえねえ、水着とかどーする?」「ざっくりと条件付けといたら用意してくれるみたいやし」「わたしでもいけるのかなあ?」「介助者がいればいいみたいだぞ」「スキューバダイビング!」「さすがにライセンス必要やし」「買い物にもいきたい……」「せやねえ……」「それからぁ……」

 入国ゲートを出たところのベンチでスマホを囲んでウキウキの惣堀四人組。

「う~ん、やっぱワンピね、わたしは」

 高校生といっても、もう24歳だし、運動不足だし、露出の多い水着はNGだし。

「う~ん、セパレート……ワンピ……競泳用はありえないっと」

「そういう括りじゃなくて、千歳は萌ちゅう感じでええんちゃう?」

「そ? じゃ、ミリー先輩はアグレッシブなアメリカン?」

 女の子たちは特定の水着ではなく条件で絞り込んでいく。その方が、どんなのが出てくるか楽しみなんだ。

「ね、啓介は?」

 タブレットには水着女子の写真が一杯なので、啓介は一歩引いてしまっている。

「あ、俺は日本男子!」

 オーダーなのか照れ隠しの一言か分からないまま、スマホに打ち込んでいく。

「水着はムルブライトから届いています、こちらになります、お召し替えは地下一階の更衣室をお使いください」

 ホテルに着くと、カウンターで一切合切を渡される。

「チトセ・サワムラ様にはビーチ用の車いすをご用意しておりますので、お召し替えのあと、このカウンターにお立ち寄りください」

 懇切なブリーフィングを受け、エレベーターで更衣室へ。


「え!?」「うそ!」「やだ!」「なんで!」


 四つの声が個室からして、着替え終わってビックリした。

「「「「わ!」」」」

 互いの姿を見て、揃って声を上げた。

 わたしのワンピはあちこち穴が開いている。胸元、わき腹、お尻の上とかに。

 ミリーのはハイレグのワンピだけど、ミスアメリカ!ちゅう感じでキラキラの星条旗になっている。

「こ、これは……」と頬染める千歳は紺のスク水で、ご丁寧に『ちとせ』の名札が胸に付いている。

 で、三人がそれぞれの水着にあっけにとられたあと爆笑したのが啓介。

「「「わ、赤フンだ( ゚Д゚)!!!」」」

 たしかに日本男子で、わたしたちも設定条件通りって言えばそうなんで、旅先のノリで浜辺にくり出した。

 えと、特筆すべきなのがホテルで用意してくれた車いす。

 なんとキャタピラ付電動車いす!

「わーい、なんだか戦車みたい(^▽^)!」

 駆け足くらいのスピードが出るので、千歳は先頭に立って浜辺を駆けまわった。

 生活防水になっていて、そのまま海にも入れる。

「水には浸からないつもりだったんだけど……」

 そういう千歳だったけど、水の中で手をとってやると自然に浮いて少し泳いだりプカプカ浮いて水の感触を楽しんだりしている。

「ウォ! 引っぱるなあ!」

 啓介が叫んだかと思うと、千歳の手にはグダーっと長い赤フンが握られていた。

 腰まで水に浸かってビーチトスバレー。わたしたちには程よい負荷がかかり、千歳は水に浸かることで自由になって楽しめた。

 ミリーがイルカ型のウキを借りてきて交代で乗ってみる。

 楽しいんだけど、大股開いて乗るのがね……。

「わたし乗ってみる」

 千歳は恥ずかしいよりは好奇心が勝った。スク水なので大股開いても、わたしたちほどには気にならないようだ。

「バナナボートにしよう!」

 啓介のアイデアで、三人で横と後ろに付いて千歳を乗せたままのウキを押して泳ぐ。

 時々お互いの体が触れる。

 日ごろだったら「この変態があ!」と叫ぶようなことでもヘッチャラ。

 その後は水に浸かったままでトスバレーをやったり、千歳にタイムをとってもらってブイのところまで三人で競泳したり、ビーチパラソルの下で昼寝をしたり、昼寝の最中に日焼け止め塗るの忘れてて、ちょっとした騒ぎになったり。楽しく過ごした。

 演劇部の仲間になって四カ月。

 なんだか一気にスキンシップになって、お互いの距離が縮まったワイキキのビーチではあった。
 
☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)


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