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上砂理佳のうぐいす日記

阪神百貨店の女流版画家5人展無事終了。多くの方にご高覧いただきました。ありがとうございました★

存在のない子供たち★

2019-08-07 | アート・音楽・映画・本・舞台・ドラマ
カンヌ映画祭で審査員賞受賞、アカデミー賞外国語映画賞、ゴールデングローブにもノミネートされている、レバノンとフランスの合作映画。
監督のインタビュー記事があります→こちら
シネ・リーブル梅田がギッシリ埋まってました。
老若男女それだけ関心が強かったのかなと思います。

いやすごい映画でした。
途中で気分悪くなっちゃったけど、胃薬飲んで乗り切り。
中東の貧困層に生きる12才の少年、ゼインの物語です。
「存在のない子供」とは、親が出生届を出すことを怠ったために、生年月日もわからず身分証明書もない。社会的には「居ない」とされてしまった子供のこと。この辺ちょっと是枝監督の「誰も知らない」を思い出させますね。
インタビュー記事にありますが、レバノンでは出生届一件につき一万円も出さねばならないなんて、ひどすぎます。お金の無い人は生きる資格無し!と言われているかのようです。
また劇中、不法移民の人々が沢山出てきますが、収監されている牢屋(?)の環境もひどい。すし詰めで家畜小屋の如くです。
日本で内戦が起こって生きていけなくなったら、他国に流れてこうして収監されるのか、と思うとゾッとします。

とにかくえんえんと滅入る、ゴミに溢れるスラムと過酷な子供の生活・どうしようもない大人の描写。男に生まれても女に生まれても救われない。
監督はレバノン生まれの女性監督なんですが、小さい子供と赤ん坊と、どうやって撮影したの?というぐらい迫力に満ちています。
俳優でなく、実際の貧困の中に生きる子どもたち、大人たちが演じているせいか、リアルな悲しみと怒りが伝わります。プロの俳優では無理でしょう。嘘臭くて。
「地獄の中で生きている」と述懐する、ゼイン少年の鋭い目が忘れられません。
ラストで少し希望の光が見え、やっと「救い」の水が一滴垂らされます。
出演した素人の子どもたちの、その後の人生も良い方向に向かっているらしく。この映画が撮られた意義は大きい。
「育てられないなら産むな」と語るゼイン。本当にその通りです。
子供の不幸は、大人の責任なのですから。

このヘビーな映画は、全世界の大人が見なくちゃいけません。マストです。
そして自分に、何が出来るのか?考えさせられます★
コメント
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