上砂理佳のうぐいす日記

10月5日~16日まで大阪狭山市の「ギャラリー美游館」さんで銅版画オンリーの個展があります。お近くの方はぜひ★

『ラ・シルフィード』

2005-02-18 | バレエにハマって幾星霜
気分変えて、美しい話。行きますっ。
東京バレエ団の「ラ・シルフィード」を見てきました。
出張などと銘打って、ほとんどコレが目的だったのである…。この東京文化会館は初体験という「おのぼり」な私。席は1階のかなり後方だけど、大阪のFホールに比べたら傾斜の角度が急で、前の人のアタマで舞台が見えない、という悲劇とは無縁なのでした。空間もゆったり。ゴージャス度満点。席もほぼ満席の盛況っぷり。
パンフも買った。オペラグラスも借りた。さあ!さあ!いざ!

「ラ・シルフィード」とは、「空気の精(=妖精)」という意味です。
婚約者エフィーとの結婚を真近に控えた青年・ジェイムズの前にある日現れた、羽をつけた白い妖精・シルフィード。彼女の姿はジェイムズにしか見えません。美しく軽やかなシルフィードの魅力に惑わされているうちにどんどん心をひかれ、ついには自分だけのものにしたい、と願うジェイムズ。その前に現れた邪悪な魔法使いのマッジは「この白いショールをシルフィードの肩にかければ、羽が抜けて飛べなくなってしまう。そうすれば彼女は永遠に地上に留まるよ」と、そそのかします。さて、ショールを手にしたジェイムズですが…。
ガラ・コンサートやバレエコンクール等では、ブルノンヴィルという人の振付版が一般的です。男性の足さばきが速く細かく、超絶技巧を要求される。しかし今夜はピエール・ラコット版。これは1832年の初演当時の演出を忠実に復元したバージョンとして、1970年代に発表されました。特にフランスでは?こちらを上演することが多いようです。私はかな~り昔のパリ・オペラ座バレエ学校・日本公演で見たのですが、主演のデルフィーヌ・ベイという少女がとても顔が小さくて、細い長身で、清楚で、懸命に踊っていて、いたく感動したのを覚えています。

さて今回のお目玉はなんつっても、弱冠20歳のエトワール「マチュー・ガニオ」(!)パリ・オペラ座で昨年、劇的にトップに昇進して話題を呼びました(エトワール=フランス語で“星”の意味。ダンサーの階級の「横綱」です。イギリス等では“プリンシパル”と呼ぶ)。いやもう、あのカルフーニとガニオの息子でっせ。3歳位の時に、ママのカルフーニに抱っこされて舞台に出てたよね。もお人形さんみたいに可愛いかった~。けど、大人になってまさかまさか、オペラ座のエトワールに、なんて!びっくり。
しかし、見事に両親のいいトコ取りして…美貌もさることながら、パアッとオーラが発散されてます。私の思い込みのせいか、後光差してます(笑)。長い長い手足は、表情が豊かでなんとも優雅きわまれり。膝から下がね~。長くてしなってて甲が高くて(つま先の美しさが際立つのがパリ・オペラ座の特徴?)それが自在に軽やかに動くのを見てるだけでシアワセ。さすがに若いからか跳躍も高い。180度真っ直ぐに開脚するグラン・ジュテにもホレボレします。いやもう、見てる私も体がどんどん前のめりになって席から落ちそう。
しかし、マチューと並ぶ驚きだったのがシルフィード役の吉岡美佳さん。斉藤友佳里さんとWキャスト、という事で期待もしてたけど、正直言って苦手な役ではないのかな?と思ってました。細いけど長身でテクニシャンなので、「軽やかなシルフ」にはどうなんだろ?と。
それがまあ、とろけるような柔らかいポール・ド・ブラ(腕の動き)。軽くて、でも敏捷で。はかなげで優美で『空気の精』そのもの。ブルノンヴィル版の振付では「イタズラ好きでお茶目」という印象があるけど、ラコット版シルフィードはあくまでも「夢の中の妖精」の優美さを強調してるように思えます。ジェイムズの婚約者・エフィーが、いかにも現実の女、として描かれてるので、「この世のものでない」シルフィードと好対照で面白いのです。
シルフィードのお仲間たち(?)の群舞、宙吊りで空を飛ぶ(!)、などなど演出も楽しく、飽きさせません。最後は悲劇なんでちょっとしゅーんとしちゃうけど。あと、魔法使い役が飯田宗孝さんだったけど、もう少し強烈な凶々しさが欲しかったかな。
でも何と言っても良かったのは、主演2人の「足音(靴音)」がほとんど無かったこと!
やはり幻想の世界なんだから・・・これでドスンドスンと音がしてたら興ざめですわ。マチューの高い跳躍でも「するり~」と降りてくるの。足裏での床の掴み方に技術を要するらしい?女性はあえて柔らかいシューズを使ったりするそうです。いやほんとスゴイですね。
カーテンコールは3回くらいありました。でも10回あっても良かったわあ~。東京のお客さんはちょっとクールに思えたな(?)。いや私もう大満足。マチュー、美佳さん、東京バレエ団、ありがとう!

このバレエ、舞台がスコットランドという事もあって、男性はほぼ全員、タータンチェックの膝丈のスカ-トはいてるんですよ。ほら、よくバグパイプ吹いてるオジサンとかが履いてるアレよ。足もチェックのハイソックスはいてるの。そして肩からポシェットまで下げている…このいでたちが生理的に合わない人はダメかもしれない(笑)。そして「ラ・シルフィード」でフィギュアスケートを滑ってる人はまだ見た事がない。「ドン・キ」や「くるみ割り」はあっても。見たい!スカート履いてね…。
コメント
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