福井利佐blog

切り絵アーティストの日々

「手で見る北斎」

2012年11月08日 | お知らせ(個展・ワークショップ他)

触察本というのをご存知でしょうか?

文字のごとく、触って読む本のことです。

目の不自由な方の本なのですが、
触って絵の鑑賞をする本です。

海外では、イタリアやフランスでは以前から発行されており、
ルーヴル美術館などから、ピカソやマティス、
ミケランジェロの彫刻が鑑賞できる触察本が発行されています。

日本では、まだなかったのですが、この度発行されました。

渋谷松濤のギャラリーTOMの副館長、
岩崎清氏によって生み出されました。

ギャラリーTOMは
盲人(視覚障害者)が彫刻に触って鑑賞できる場所として
村山亜土(故)・治江さんによって
1984年に創設された美術館です。
(亜土さんは最近世田谷美術館でも開催されていた、
前衛美術家の村山知義さんのご子息です。)
http://www.gallerytom.co.jp/

生まれながらにして目が見えなかった長男の
「ぼくたち盲人もロダンを見る権利がある。」
という一言からできた美術館です。

日本において、触察本を作る際、
どの絵がいいだろうかとなった時、やはりこちらです。

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江戸の絵師 葛飾北斎の「富嶽三十六景」のなかの
「神奈川沖浪裏」です!

大きな波の絵の浮世絵です。

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これですね。


そして、この絵が・・・・

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写真だとわかりにくいですね。
触れるようになっています。

目の見えない方には、
触ってみても、この波が色分けされている事、
船というものが描かれている事がわからないので、
凸凹も点々だったり、直線だったりと分けてあります。

そして、波に描かれているものも、
別々に取り出し、説明があります。

様々な角度から小舟の形態を紹介します。
でなければ、絵に描かれている小舟の実態が掴めません。

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もちろんこれらも、触れば凹凸があり、横に点字があります。

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色の区別もこういった凸凹の種類で示してあります。

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一見、なにもないようですが、
透明のラバーゴムっていうのでしょうか、
触るとその凸凹を感じます。

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波一つでも、色々な要素を分解して説明して、
ようやく一つの絵が理解できるのです。

解説も丁寧に点字で説明されています。

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まだまだ実験的な試みだと岩崎さんはおっしゃっていましたが、
ひとつのすばらしい成果だと思います。

ぜひご興味のある方はお手に取ってみてはいかがでしょうか。

現在はギャラリーTOMでのお取り扱いです。

ギャラリーTOMのサイトからメールでのご連絡か
お電話かFAXでご購入が可能です。

1冊 ¥4500+送料 です。


私も実は非力ながらお手伝いをさせていただき、
凹凸の元になる線や、絵柄の線画を担当させていただきました。

岩崎さんは、御年70歳を越えていますが、
心は少年のようで、もっと様々な触察本を作れるよう
日々頑張られております。

先日も出張先のパリから素敵な絵はがきが届きました。

素敵です。
私も応援しています。


目が不自由な方だけでなく、
障害を抱えた多くの方々の、
美術を楽しみたいという気持ちに答えられる未来になるよう願います。