7月に読んだ本

7月の読書メーター
読んだ本の数:19
読んだページ数:6022


シェイクスピア全集 (3) マクベス (ちくま文庫)シェイクスピア全集 (3) マクベス (ちくま文庫)の感想
再読。訳者による“マクベスとマクベス夫人は一卵性夫婦”説を踏まえて読むと、一際味わい深い。シェイクスピア全作品における主役級の登場人物中、名前がないのはマクベス夫人ただ一人であるという事も、言われてみなければ気にもならないくらいマクベス夫人はマクベス“夫人”でしかない…と、それが今回は辛かった。始めのうち弱気だった夫を焚きつけたのが妻(ここで悪者にされ)なら、単独で行動をする夫にとり残され(しかしマクベスは気付かない)、罪悪感に苛まれ心を病んでいくのも妻の役割…なんて。片翼を失ったマクベスには失墜しかない
読了日:07月31日 著者:W. シェイクスピア
舞踏会へ向かう三人の農夫 上 (河出文庫)舞踏会へ向かう三人の農夫 上 (河出文庫)
読了日:07月30日 著者:リチャード・パワーズ
ウンラート教授―あるいは、一暴君の末路ウンラート教授―あるいは、一暴君の末路の感想
素晴らしい読み応え。汚物(ウンラート)教授とは凄まじいあだ名だ…と思い、読めば内容の凄まじさにきっちり釣り合うので感嘆した。57歳までの人生を学校のうちで過ごしたウンラートは、年長者の視点を持たず、生徒を憎しみで処罰するまさに独裁者だ。常に戦闘態勢でいる彼にとって、町中の元生徒たちさえ敵のままだった。と、そんな教授の境遇は女芸人ローザとの出会いによって激変するわけだが、何ていうか、本人の軸は決してぶれなかった。邪悪な生徒どもへの憎悪を町中に押し広げ、人類に罰を与え絶滅させるという壮大な志に邁進する。
読了日:07月27日 著者:ハインリヒ マン
神様のボート神様のボートの感想
再読。“恋愛はインモラルな人間の特権だ、と、あのひとは言った。そのとおりかもしれない。” 恋もまたパラノイアの一つ…ということを、思わずにはいられない作品。ましてや“骨ごと溶けるような恋”となれば。旅がらすの母娘、葉子と草子(直截な名前だ)。何処にも馴染まない葉子の頑なさに私は近しい気持ちを抱くけれど、とじた繭のように恋人との記憶に包ったままの母親を、傍らで見つめ続けた少女の方が、もっと淋しく寄る辺なく感じていたかもしれない…と。娘を溺愛する母親を淡々と受け入れつつ成長していく、そんな草子の姿は愛おしい。
読了日:07月24日 著者:江國 香織
葬儀の日 (河出文庫―BUNGEI Collection)葬儀の日 (河出文庫―BUNGEI Collection)の感想
再読。“とても会いたかったけれど、こうして会ってしまったことは取り返しのつかないことのような気がする。(略)私たちは互いに互いを宿し合っている。では、私の中のあなたの分だけ私は私でないのだろうか? いや私はやはり私なのだ。私の中のあなたも私だ。(略)その理由を考えると——恥に満ちている。”(葬儀の日)“確かに病気だった。肥満体恐怖症とでも言うのだろうか。”(肥満体恐怖症) 笑い屋と会う泣き屋“私”、自分へ殺意を向ける彩子に惹かれる幾子、肥満体恐怖症であることに執着する唯子。彼女たちの狂おしさにぐらぐらする
読了日:07月23日 著者:松浦理英子
シェイクスピア全集 (5) リア王 (ちくま文庫)シェイクスピア全集 (5) リア王 (ちくま文庫)の感想
再読。四大悲劇の一つでありながら、訳者の“歓ばしい悲劇”という言葉に大いに頷ける。出てくる人物は悉く一徹過ぎるし(コーディリアもなぁ…)、リア王の激烈な女嫌いぶりには辟易もするし納得いたしかねる訳だが、それでも二つの再会の場面は胸にぐっと迫った。…にしても、人を正しく見極めなかった王への代償の残酷で凄まじいことよ。
読了日:07月20日 著者:W. シェイクスピア
公園公園の感想
再読。“あの人は今日も来ている”という、冒頭の一文が忘れがたい。様々な誰かに似ているけれどその誰でもない“あの人”の姿は、公園という場で幾つもの眼差しの焦点になる。紫がかった帽子と黒い自転車、細い首…。その姿を探し、熱心に見つめる登場人物たちは、その姿を通して己を見つめ返していることには気付かない。各々の内のぽっかり開いた虚ろな場所に、彼女の輪郭を知らずに合わせている。だから、昔の恋人や自分を置き去りにした母、自ら命を絶った娘や夫の愛人のようにも見えてくる。それぞれの思いの先に。“あの人”は誰だったのか…
読了日:07月19日 著者:魚住 陽子
失われた時を求めて〈13〉第七篇 見出された時(2) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて〈13〉第七篇 見出された時(2) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
読了日:07月18日 著者:マルセル プルースト
失われた時を求めて〈12〉第七篇 見出された時(1) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて〈12〉第七篇 見出された時(1) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
読了日:07月17日 著者:マルセル プルースト
エセー 5 (岩波文庫 赤 509-5)エセー 5 (岩波文庫 赤 509-5)
読了日:07月16日 著者:モンテーニュ
オセロー―シェイクスピア全集〈13〉 (ちくま文庫)オセロー―シェイクスピア全集〈13〉 (ちくま文庫)の感想
再読。以前、オセローとデズデモーナは親子ほどにも年が離れていて、デズデモーナは少女と言ってもいいくらいにうら若い…という解釈を知ったとき、すとんと腑に落ちたことを思い出す。デズデモーナの可憐ないじらしさも凛としたところも、読んでいて一層可哀想で辛さもひとしおになった(イアゴーめ、オセローめ)。また解説も読み返してみたら、“妄想に取り憑かれた人間が、同じ妄想を別の人間に植え付けていく不気味な狂気的世界”という言葉があまりにも端的に的確に思えて、ぞわぞわっ…と。
読了日:07月13日 著者:ウィリアム シェイクスピア
トロイラスとクレシダ―シェイクスピア全集〈23〉 (ちくま文庫)トロイラスとクレシダ―シェイクスピア全集〈23〉 (ちくま文庫)の感想
再読。
読了日:07月12日 著者:W. シェイクスピア
ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉 (ちくま文庫)ウィンザーの陽気な女房たち―シェイクスピア全集〈9〉 (ちくま文庫)の感想
再読。
読了日:07月11日 著者:ウィリアム シェイクスピア
TIMELESSTIMELESSの感想
とても好きな作品。硬質で清透な文章に浸っているだけでも心地よい。殊にTIMELESS1でのうみとアミの一見不可解な関係(恋愛感情を介在しないこと前提の結婚)は、淡々しくて儚くて今にも終わりそうな気配、その危うささえ、むしろ私には涼やかに好ましく映った。しがみつくものを求めない、その発想すらない彼らが。TIMELESS2ではそこからずっと時が隔たってしまう。たゆたう記憶の中で語られる少し風変わりなアオの家族のこと、広島や長崎への旅行、空から降ってくるものについて。離れていても結ぼれている不思議な縁について。
読了日:07月10日 著者:朝吹 真理子
十四番線上のハレルヤ十四番線上のハレルヤの感想
素晴らしい読み応え。幻想譚6篇。内容は繋がっていないのに、それぞれの主人公たちの纏う生きづらさはどこか似通っている。6篇を連ねて読むことで、とても深くて怖ろしいところを一巡りして戻ってきたような…いや、戻ってきたつもりのここは元から居た場所と本当に同じだろうか…と心許なくなった。不確かさと眩暈と。ふっと心が弛んでこの世での営みにほとほと厭いたなら、遂には私もするりと容易くあちら側へとすり抜けていくのか。…それは怖いことなのだろうか。どの作品もとても好きな中、殊に「補陀落葵の間」のサキには心を寄せていた。
読了日:07月10日 著者:大濱 普美子
海の額と夜の頬―山下泉歌集 (塔21世紀叢書)海の額と夜の頬―山下泉歌集 (塔21世紀叢書)の感想
「紙の薄刃にあたりし指を灯にかざす少女は長い傷のようなり」 「ひさかたの星間物質かきまぜて星粥という記憶を作る    レメディオス・バロの絵画『星粥』」 「エウリディーチェと呼びかくる声の半ばから歌となりたり冥府の青さ」 「物の名は遙かな暗喩とおもうとき月の生身はこなごなになる」
読了日:07月06日 著者:山下 泉
額の星/無数の太陽 (平凡社ライブラリー)額の星/無数の太陽 (平凡社ライブラリー)の感想
すこぶる久しぶしのレーモン・ルーセル、兎に角読んでいてただ楽しかった。好きだなぁ…。覚えきれないほどの物語の断片が、少しだけ披露されてからどんどん後にされていく。数多のエピソードに深入りするでなく、執着の気配もなくさくっとそこで終わってしまうのがいっそ心地よい。不思議で綺羅で…ただ楽しい。二つの長篇散文、読み返したくなった。
読了日:07月05日 著者:レーモン ルーセル
空間の詩学 (ちくま学芸文庫)空間の詩学 (ちくま学芸文庫)
読了日:07月04日 著者:ガストン バシュラール
ビリチスの歌 (講談社文芸文庫―現代日本の翻訳)ビリチスの歌 (講談社文芸文庫―現代日本の翻訳)の感想
“川に沿うて、妾(わたし)は去つた、うら悲しく、たつたひとりで。けれども周囲(まはり)を見廻すと、大きな木々の後ろから、青い眼の月が妾(わたし)を見送つてゐた。”(青い眼の月) “それは、地上に 夜の薔薇の薫に勝る聖(きよ)らかなものがないから。”(夜の薔薇) “何といふ国へ来たのか、ここではこれが恋だとは、一体この島は何だらう。こんなに疲れてゐなければ、夢だと思ふところだわ……これがプサップファさまだとは、本当かしら。”(プサップファ) “世の誰も 灯火(ともしび)さへも、その夜、二人を見てゐなかつた。
読了日:07月01日 著者:ピエエル ルイス

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