コスメショップのフレグランスコーナー、よくテスターを、コットンボールにしみ込ませてプラスチック容器に入れて置いてありますが、アレ、結構、信用なりませんよね。
オーデパヒュームやオーデトワレなど“オー”の付くアイテムはアルコール含有率が高いのでどんどん揮発して行くし、ショーケースや棚の、照明当たりまくりの場所に置きっ放しで揮発にターボかけてるお店が多い。
しかも、ちゃんと密閉できるフタ付きの容器じゃなかったりしたら、もう最悪。
未知の、初めての香りでも、「あーコレ完全に変質してるわ(憤)」とド素人の鼻でわかる状態になってることすらある。
高額なアイテムだからボトルから直接スプレーできる形でテスター置いといたらすぐ使われて無くなってしまう…というお店側の気持ちもわからないではないけれど、それならそれでコットンボールをまめに交換して、できるだけ新品の、スプレーしたての香りに近い状態で客に試してもらえるようにすべきだと思います。
…とまぁ文句垂れてたらきりがないけど、今日は待ち合わせの時間調整をかねて、オフィスビル地下のショップで、お昼休みマスカラや口紅の物色に余念ないOLさんたちに混じって目についたヤツをテスト。
石をこよなく愛する月河としてはつい“石っぽい”名前のアイテムに目が行ってしまうので、以前からブリリアント・カットなパッケージにも惹かれていたショパールのピンクダイヤモンドをいちばん先に試してみましたが、十分スイートではあるのだけれど、ちょっと香りが軽くて、幼いというか、“浅い”と感じてしまいました。
続いて、直球で林檎っぽい可愛いパッケージが中村中(あたる)さんを思い出させる(?)ニナリッチのニナ。ピンクダイヤモンドに劣らずたっぷりスイートで可愛い系なのですが、微量オールドファッションドで、大人なのか乙女なのか、バランスがいまいち。
ただ、一部で“似ている”と評判のディオールのプワゾンのラインよりは、月河なら断然こちらの林檎ちゃんを取ります。
どう言うのかなぁ?先日(これも名前から)期待して試したヴェルサーチのブライトクリスタルもそうでしたが、どうも、プロデュースしている人たちの脳内で“フレグランスをつける女性”のイメージがステレオタイプな気がする。なんか一様に、“つけてるとオンナオンナして窮屈”な気分になるんですよ。
もっと、“オンナであること、オンナとして振舞うことが、もう楽しくて仕方がない”みたいな女性が使うと活きるのかもしれない。
そんなこんなで、本日はブルガリのオムニア アメジストを選択。ぷはー。やっぱり石つながり。
トップの、かすかに青草っぽい香りに惚れました。お花屋さんの店先みたいなのね。
このシリーズ、最初のチョコレートのオムニアは「食いモン以外に食いモンの匂い付けるなよ!」って感じで“やり過ぎ”感が強く、その後の、媒体に出始めてもう3年近くになるのかな?クリスタリンは月河の周囲でも老若を超えてちょっとしたセンセーションでしたが、いかにも“欧米人がイメージする東洋”の押し付けっぽくて、やり過ぎと言うより、こちらはちょっとズレていた(好みですよ好み)。
3作目にして、やっと何かが見えてきたのかな。このアメジストは、シリーズでいちばん嫌味がなく、甘さと辛さ、軽快さと濃厚さのバランスがいいと思います。
スプレーする前、函を開けた瞬間わずかに滲み出す香りが、昔、大好きだったシャルル・ジョルダンのランソランにちょっと似ているんですね。
あれは真赤な函に黒のロゴ。黒のリボン結んだ形のパッケージ。空いたボトルをぜんぶとっておいて、スカーフやランジェリーの引き出しに入れて残り香を楽しんでいました。懐かしい日々。復刻されないかしら。
トップがグリーン寄りで、じんわり華っぽく、色っぽくなって行くところもアメジスト、軽く似ています。
結局こうして、昔の愛用品に近いゾーンに回帰していくのかぁ。何だか、遊び人のくせに初恋の女性が忘れられなくて放浪してるだけの情けない男みたいだなぁ。
『金色の翼』第17話。
「“描かない”ことで虚構を補強するのには勇気が要る」と先日書きましたが、“映さない”ことで情景の含蓄を濃くする演出の、あっぱれ豪胆ぶりが際立った日でした。
槙に「もう近づかないで、お互いのためよ」と引導を渡すべく夜半、バードカーヴィングのアトリエへ呼び出した修子、「あなたの“昔の男”になんかなるつもりはない」「愛しているなんてクチが裂けても言うもんか」と槙逆襲熱弁のあと「この温もりには微塵のウソもない」と抱きすくめられ、“扉をこじ開けられて”しまう。
2人が横たわる背もたれ付きの長椅子を、わざと背もたれ越しに撮り、足首から先(サンダルのストラップを外された後、修子の足指の先が浮世絵によくあるエクスタシーの形になり、2本がときどき3本になる)と手の先(髪の間に指が入った後、手同士重なり組み合う)しか画面に映らないのに、じゅうぶん濃密な時間を想像させる約30秒間の抑制されたエロスもお見事なら、逢瀬のあとの火照った身体で、サンダル片手にナマ足でダンスステップ踏みながら、弟の寝静まった(はずの)部屋にこっそり戻る修子の顔・上半身を画面に入れない配慮も気がきいています。
その分、この後の、槙と打ち合わせたメッセージの隠し場所でメモを探し当てたときの修子の、花のほころぶような微笑みの美しいこと。槙程度の男と恋仲になったぐらいで、こんなにわかりやすく表情が和らぎ光が差すような、他愛無く素直な女性が、夫殺しなわけはない…と思わせるに十分なのですが、これで心に修羅を秘めているとなれば、さらに凄絶な美しさのファム・ファタールともなり得る。
さらに、背もたれ越しの足先より、顔無きダンスステップより素晴らしかったのが、目立たないけど、修子が私室不意打ちの槙に「鳥のアトリエで待ってて」と命じてから、2人が同所で差し向かう場面までの時間の経過(=槙侵入時の修子は夕食にラウンジへ下りて行くための身支度中だったので、この間に夕食が挟まり、槙は客たちへの給仕と片付けの仕事を済ませて、制服を黒スラッシュネックTの私服に着替えたはず)を、“点灯された無人の夜のテラス”2カットと“夕食ラウンジのBGM”だけで暗示していること。
この間に、嵐の一夜の姉の居場所と理生が尋ねた真珠の落とし物を疑問に思った玻留が、姉の化粧台をこっそり開けてネックレスがなくなっていることに気づく場面も挿入されているので、時間経過の表現としては併せワザではあるのですが、差し向かうまでの2人の一秒千秋の思い、他の客たちの前ではそ知らぬふりを装ったのだろうな…などをも想像させる、冴えた演出テクニックです。
もう理生(肘井美佳さん)の槙を見る目が、最愛の恋人を見るそれではなくなっている。かりに今日の時点で、修子が黙ってカネ積んで永遠に姿を消し、槙と理生がめでたく島を出る自由を手に入れたとしても、以前の仲には一生戻れないだろうな。
「扉が開かれた」と修子は言いましたが、槙と理生が開けたのはあらゆる災いを解き放つ、パンドラの箱だったかもしれません。
最後に“希望”は残るのだろうか。
小柳ルミ子さん。結局、27歳年の差再婚は否定されたようですね。話題づくりだったのか。
この話題のおかげで、石橋正高さんのお父上・石橋正次さん(実写版『あしたのジョー』・『夜明けの停車場』『鉄橋をわたると涙がはじまる』)とともに、なぜか唐突に小柳ゆきさん(『あなたのキスを数えましょう』)を思い出してしまいました。
単純に小柳つながり。最近FMのチャートでさっぱりお名前を聞かないけど、活動されているのでしょうか。デビューの時期がなんとなく氷川きよしさんのブレイクと月河の中ではかぶっていて、“女版バタくさ氷川”みたいなイメージだったのですが。