山形の過去、現在、未来

写真入りで山形の歴史、建物、風景を紹介し、併せて社会への提言も行う

赤塚君の「シェー!」は後発だ

2008-08-07 22:49:51 | 郷土史
 生徒の頭をかぶづいで(噛み付いて)叙勲された名物教師(狂師?)は、この見るからに近眼生徒を大量に養成してきたような校舎で存分に暴れた。
 昭和◎十年代の4月、一年生の隣の教室から1時間近くM教師の凄い怒声が断続的に聞こえ続けていた。午後は我が教室で彼の最初の授業がある。どんなに怖いか戦場に臨むような気持ちで昼の弁当を食べた。
 午後になっていよいよ彼の授業の直前、廊下を踏みつけるような彼の凄まじい足音が近づいた。教室の入口の引き戸を必要以上の力で開けたからビシャリという音が鳴り響いた。教室に入るなり、教壇上の椅子を蹴っ飛ばし、黒板消しを床に叩きつけるなり、すぐに英語の教科書を開いて英文を読み、同じ文章を生徒たちも読むように命じたが、生徒たちは恐れをなして流暢に発声できない。すぐに「読み方が遅いぞ」の罵声。これがM教師の最初の自己紹介のようなもの。
 次にいきなり名簿を開いて指名し、英訳せよと命じるが、あまりにもの突然さに指名された生徒は口が開かない。そして一列全員が立たせられたまま怒鳴り声とともに全員の頭に彼の手の掌が軽くすべる。でも殴るというよりは踊って楽しんでいるような感じだ。あたかも義経の壇ノ浦での八艘跳びのようだ。
 彼の英語の発音もヤマガタ訛りだし、生徒の名前の呼び方もヘンテコな節がつくし、明治時代のような言葉での講釈だから、彼の言動のすべてがおかしくて噴き出しそうになるが、怖くもあるので笑い声を出すのをじっと堪える。
 でも彼が怒鳴ると、我々の代わりに隣の教室からゲラゲラと笑い声が聞こえてくる。
 さて、次の授業の時、ついに我慢しきれずに「クククク」という笑い声を出してしまった生徒がいた。たぶん我がクラスで最初に頭を噛み付かれたのは彼だったような気がする。それ以降、彼の授業の度に数人ずつ「かぶづがっだ」のである。
 Husagu da,husagu da.Kodosu-no izunenshei wa nashite kodaini husagu nandabe?(←これは英文にあらず)意訳 ⇒ 不作(出来が悪い)だ、不作だ。今年の一年生はどうしてこんなに出来が悪いのだろうか。←ただし毎年同じセリフ
 そうして、「シェー!」と慨嘆の声を出すことがしばしばであった。それから数年後に赤塚不二夫氏の漫画で「シェー!」にお目にかかる。
 でも、2学年後の3月にはこの学年からも東大、東北大等の旧帝大や早慶等に合格する生徒が多数あった。
 これは我が山形の近眼養成高でのお話で、郷土の昭和史のひとコマである。(写真は改築前の校舎)
 


 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする