「先生、私もう45歳なんよ」と依功子が言う」 ついつい初めて会った時の印象、目力が強くてよく笑っていた15歳の頃を思い浮かべる。
注文するのに時間がかかる。注文するのを忘れて話し込んでいたからだ・・・店員さんは優しい。入った時は客は俺たちだけだったが、注文する頃には込み合ってきている。とりあえずは注文・・・煮魚定食、1620円。
それからずっと話しっぱなしだ。食事が運ばれてきても延々と、両親の話や弟の話、そして依功子の二人の息子の話・・・一人は社会人3年目、もう一人は皇學館高校へ進学した。
上の子どもは新しい環境にまだまだ慣れないようで家では愚痴も出る。どこでも同じだ。下の子はバスケが好きで、バスケが強い高校を志望した。ミニバスやってた連中が皇學館にはいっぱいいる。そんなバスケの強い選手といっしょにプレーしたい。レギュラーにはなりたいが、なれなくとも後悔はしない・・・奇特な子どもだ、ウチにはいない。
「ここ最近は無理が効かなくなった。できない自分が歯がゆく感じた。でもできない自分を労わってやろうと考えるようになった。できないことは無理しない、できないことで落ち込まない、できない自分を認めてやる。亭主もそんな私を認めてくれるようになった。私は私で今の亭主を認めようと思った。20年かけて少しずつ夫婦になってきて、今になってお互いがお互いを理解できるようになってきたと思う」
20年間の結婚生活を経た今、依功子は見事に清濁併せ飲む母親になっていた。
31年前に何の経験もなく塾を始めた。今までため込んできた本を置く場所が確保できてラッキー・・・そんな程度の動機から塾を始めた。一応広告を打ってはみたが、反響に関しては期待してなかった。広告なんかを見るとウチなんかより遥かに立派そうな塾がこの地区にはたくさんあった。それでも13人の生徒が入ってくれた。依功子はそんな13人のなかの一人だった。
漁協が経営している『魚々味(ととみ)食堂』で。
明日は女子会だとか。里恵(7期生)が新潟で梅酒を調達してきてくれて、奥さんと飲むそうです。参加ご希望の方は連絡ください。