別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

風信子忌

2008-03-29 | 別所沼だより

 
  
毎年 風信子忌は3月の最終土曜と決めている。  今年、 命日の3月29日にぴったり合ったのは、 珍しいことである。 昨年の風信子忌 歌の秘密 

  谷中多寶院にて 墓前祭のあと

  上野池之端  水月ホテル鴎外荘に移る。

   ・式辞
   ・挨拶
   ・第2回立原道造賞受賞者挨拶  桑野洋紀
    日経アーキテクチュアコンペ 立原道造賞 
    (20歳代の若手建築家を対象とする最高賞として創設された)  関連記事

   
・詩朗読  佐岐えりぬ(詩人・故中村真一郎夫人)
     
「村ぐらし」 「詩は」 「風のうたつた歌  その1~3 : 一日 草はしやべるだけ」

   ・講演 「道造讃 (みちぞうさん)」   立原えりか(作家)

 
 ファンだったので立原とつけたが、 詩人にはなれなかった。 中2のとき立原の詩「のちのおもひに」に出会う。 この世にこんな美しい作品があることをはじめて知った。 きれい過ぎる、 手が届かないね と思った。  憧れるほどに、 彼の美しすぎることばは痛い思いだけを残す。 詩集、研究書などを読んだが、 あるときから道造を忘れようとし、 封印してきた… 
  「
運動会のときに いつも一周遅れで走っていた」 という立原の詩におなじ思いを見つける。 童話の新人賞受賞。 結婚、 綺麗なだけではすまされない、 現実…  封印するきっかけなど語った。

              -☆-

  封印したのに、なぜ立原を名乗るのか…  厳しい質問もあり、 熱烈なファンの前で 気の毒なくらいの作家さんでした。  
司会者は、 幸福の背後にある悲しみを描く…  道造あっての 「立原えりか」 さんの作風である と結ばれた。
  「立原」 をペンネームに選んだ、 岩場に咲く、 厳しさのなかで花開く ヒース 「えりか」さんの童話を 私はまだ読んだことがない。 これから読もうと思う。

   講演内容は  青い小麦さんにくわしくありましたので、ご紹介します。 

 
   ・懇親会  献杯  会食

 

       郵便函は荒物店の軒にゐた
       手紙をいれに 真昼の日傘をさして
       別荘のお嬢さんが来ると 彼は無精者らしく口をひらき
       お嬢さんは急にかなしくなり ひつそりした街道を帰つて行く

             …     中略 

       村中でたつたひとつの水車小屋は
       その青い葡萄棚の下に鶏の家族をあそばせた
       うたひながら ゆるやかに
       或るときは山羊の啼き声にも節をあはせ
       まはつてばかりゐ
る水車を
       僕はたびたび見に行つた ないしよで   
…                                           

                        「村ぐらし」  立原道造 抜粋


  朗読を聴いていると  詩は映像となって 心にひびいてくる
    真昼の日傘をさして…  陽は 大きな日傘になった
    山羊の啼き声にも節をあはせ … 山羊の啼き声に 節をあわせる水車

                               
鴎外荘蔵の間   舞姫の間(風信子荘とおなじ歪んだ硝子)