別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

印象派の紅一点

2007-10-13 | アートな時間

コテージの室内  1886

  言葉は いらないのかも知れない。 光りあふれる朝、 温かい陽ざし。 四角い窓と丸いテーブル。 
 ジュリーの白いドレスとテーブルクロスの白、カーテンの白…  港の風景、 
   このころ マネの影響から離れた。



  ダイニングルームで  1886 手を休める若いお手伝いさん (今回は 展示されていません  好きな絵はがきから) 
いつまでも  細部まで    眺めていたい…

 

                     夢見るジュリー  1894


  父(モネの弟)を失ったばかりの娘 ジュリーにむける優しい眼差し。
    描いたのは、 女流画家 ベルト・モリゾ(1841~1895)  


  特に対象にとらわれない、 速写、 未完と思える塗り残しや余白、 画面全体を覆う伸びやかな筆遣い、 勢い。 画家は逸るきもちを抑えたか、 じっとしていない子供の 描きかけの片足、 バックの処理。 それらがとてもバランス良く、 いきいきとしていて、 完成を思わせる。  


  時間的な制約、 男性のように戸外に出かけて描くこともままならなかった時代、 思いをキャンバスにぶつけていった。  上品で優雅な静けさのなかに舞曲が鳴っている。  ゆるやかな線がやがて速くなり、 おなじ色も強く弱く、 長く短く、こころに響いてくる。 モリゾの絵は チャルダッシュ…


 娘ジュリーがマンドリンを弾く絵もある。 白いドレスの少女、 金髪と楽器の色が呼応する、 音色…  室内からの風景や、 家族の絵が目立つ。
 遺されたパレットに、 女性が描かれていた。


  まるで、保守的な伝統に対抗するように。  後半にいくほど、 リズムは烈しく強くなっていた。  このタッチは印象派の先駆け、 むしろリードしていたモリゾだ。
 
  
  絵を見て 心が穏やかになるのは、 やわらかな色調のせいだ。 (描きすぎはいけないと反省する。 面白味もなくなる。 かたちや輪郭にとらわれず 面で捉えることを、 もう一度学んだ)
 
 (右写真) 1874年 
  第一回印象派展  紅一点のモリゾ。
ゆりかご」 ほか出展 

  のちに 印象派 メアリー ・ カサット(米 1845~1926) も参加 (「オペラ座にて」 構図を思い出す)
 (第4回(1879)から連続4回) 女性同士、 影響し合った

            -☆-


  ・ 「猫を抱く少女(ジュリー・マネ)」  モリゾと夫 ウジェーヌが親しく交際していたルノワールに依頼した作品。 モリゾはこの絵がとても気に入っていたのだろう。  銅版やドライポイントで 模写している。 
 少女も猫も じつに愛らしい。

  ・ 「ブーローニュの森の湖の日没」  中央に画面を2分するように黒い木。 浮世絵の影響、 フォービスムの兆し。

  ・ 「ゴーリーの港」 漁村ゴーリー、 手まえに大きな漁船、 つり上げられる赤い網、 奥の埠頭。 人夫や人影。 クレーンなど。 動きのある良い絵。 印象に残った。

  ・ 「バラ色の服の少女」 娘の溌剌とした皮膚感 「ジュリーの肖像」 髪にピンクのリボン  いずれも パステル   ・ 「ジュリーの胸像」 ブロンズ、 ロダンやドガの助言を得て。 モリゾの繊細で細い指先が、 愛し子の頬をなぞった跡をたどる。
  ・ (姉) エドマ・モリゾによる 「描くベルト・モリゾの肖像

     モリゾについて 過去の記事

 美しき女性印象派画家  ベルト・モリゾ展  詳しくは こちら 他の絵に会えます
 

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6 コメント

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Unknown (Tak)
2007-10-14 01:40:35
こんばんは。
TBありがとうございました。

この展覧会でモリゾの印象だいぶ変りました。
体系的に作品を観ること大事ですね。

フィラデルフィア美術館展に
もうひとりの女流画家カサットの作品が展示されています。
比較すると面白いかもしれません。
返信する
もっと知りたい ()
2007-10-14 19:16:33
Takさん TBありがとうございます
 坂上桂子氏の記念講演、聴講券を手に入れながら伺えなかったので後悔しています。

 モリゾは「われわれは皆それぞれの秘密をいだいて死ぬ」と意味深長。 マネが愛した黒、モリゾの黒い瞳。「バルコニー」のモリゾも特別です。
 スミレの花束はマネのプレゼントだった。

 「男でないのが残念だ(画家としてやっていくために)」  印象派をリードしていたのですね。 

 カサットと比較…  見てきます。 フェルメールもまだで。 とても忙しいです。
返信する
日曜美術館 (boa !)
2007-10-15 21:57:58
最初にあげられた”コテージの室内”、日曜美術館でも紹介されていましたね。
蛙さんの憧憬の熱い視線を感じながら見ていました。
秋は優れた企画がぎっしりのようで、羨ましいを通り越して、妬ましいくらいです。日曜美術館で憂さ晴らしです。

ただ、仙和尚は博多に長く住んだ方、こちらでは仙さんと親しみをこめて呼んでいます。地元とあって、出光美術館に多くのコレクションがあります。お目にかかる機会は多いのですが、蛙さんのように、しっかり自分のものとして消化する努力が欠けているのに気づきました。言われてみれば、指月布袋や、堪忍柳のような代表作の他にも、洒脱な思わず噴き出す面白い絵があります。
あの境地は、理想であっても、あそこまでは悟れません。
凡夫の悲しさで、”上手”でありたい色気が抜けませんので、「いい絵」とは、縁が遠いことになります。
気に入らぬ風も、受け流すしなやかな強さが欲しいものです。
死に際までに、□△○が淀みなく引けるかどうか、円相よりも ごまかしがききませんようで。
いかがでしたか?余白に語らせる世界と、隙間を埋め尽くす世界との距離。こちらは、いまだに、癖が抜けず、さ迷い歩いています。
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本音 ()
2007-10-16 10:37:23
 丸ひとつに、これほど深い意味があろうとは。ある時は□、またある日は△で、今の心は○。いつも丸くはいられません。
 ほのぼのとした絵の奥深さ、見る眼もかわりましたが到底かなわぬ理想の境地です。 
 我を捨てて、しなやかにいきいきと生きる。理想です。余白に語らせようにも中味がないので、やはり隙間なく塗り込めて安心しています。
 boa!さんの絵に、微妙な均衡が見えました。蛙の揺れる眼に。
 
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モリゾ感動 ()
2007-11-02 00:42:23
蛙さんは早々とモリゾ展にいらしたのですね。

モリゾの時代には女性はプロの画家になれなかったと知って
驚きましたが、考えてみればどの国にもそういうことは
あったんですものね。
そういう時代の人なのに、優しい雰囲気を感じられる
ところが単純に好きです。
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共感! ()
2007-11-02 10:18:38
 京さん ありがとうございます。

 色彩もですが 何より筆致に惹かれます。 上のダイニングの、勢いのある筆遣い、なかなかこのようには描けないし、絵の具をこのようには置けない。窓辺からくる明るい日射し、逆光のなかの、あどけない仕事中のお手伝いさん。エプロンにこぼれる光り 床の反射、開け放した戸棚… わくわくしますね
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