別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

手が思うこと

2009-02-01 | こころ模様

   
  二月は強い風とともにやってきた。 冷たい空っ風が身にしみる。    
 
    二月の靴の片方は菫で、 もう片方は白い霜のクリスタルでできている… 

 
などと聴いた。 春らしい色やひかりを想像するだけでも麗らかになれる。 それでも手袋だけは外せない。 なぜって 防寒以外に手套こそ人生のたいせつな飾りだから。

      けもの臭き手袋呉れて行方知れず        三鬼

   おやおや… 

      冷笑をこらへ手袋はめゐたり            かな女
  

      手袋の十本の指を深く組めり            誓子

   どれも 意味深い。 

                       -☆-

  ことし朱い手袋をバーゲンで買った。  見栄を張って手にいれたものの、 ずっと黒できめてきたので、 何となくはずかしい。  派手すぎないか…  赤い口紅のそこだけが目立つように、 手袋だけが主張し過ぎないか。
  肝心なのは手そのものだ。 

  じょうずに字を書いたり、 よい絵が描けたり、 美味しいものを作ったり、 やさしく差しだしたり。  傷みを手あてするやわらかな手。  現実は、 マニキュアの変わりに絵の具が染みて、 荒れ放題の手である。 字もうまくない。 
  それならカバーをかけて 変身だ!
  
 着けただけで有能な手になれるのならば、 これをはめて大手を振って歩こう、 袋のなかの手は心底そう思っていた。 

  
          

 

 

コメント (2)
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