別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

昇華する美

2009-02-07 | アートな時間

  6日の東京は、冷たい北風が吹き荒れてとても寒かったのですが、 春の陽につよく押されて出かけました。 

  ご招待をいただいてから、 蝦蟇もこの日を待ちわびていました。 暖かな落ちついた美術館で、 陶芸のせかいにゆっくり浸る。  いつしか 眼も心も忙しくなっていましたけれど。

  菊池寛実記念 智美術館(キクチカンジツキネン トモビジュツカン)
「加藤唐九郎・重・高宏-窯ぐれ三代」 展

 「やきもの」 について ほとんど知らないので いつも彫刻や絵をみるように楽しみます。 
 加藤唐九郎… これほど厳しいものとは…  知れば知るほど何も書けなくなってきましたが、 忘れないようにメモします。 

  二年まえの衝撃的な展観 も思い出され。 予習で 「やきもの」は、 土をつくるところから始まり轆轤をひき、 絵付けし、 釉をかけ、 不眠不休で(火入れから30時間、 ときには1週間も)焼き上げ」。 釉薬や炎の関係で思いがけない面白味がでる、 窯のなかで 何かが起る。 

  チケットの画像 上から
    唐九郎  志野茶盌  銘  貫道
    重    鼠志野茶碗  
    高宏    黄瀬戸花器
    

          -☆-

 意図するものと、 偶然がもたらす面白味、 窯変は物理や化学だと思える。                         神の手業も それを掬いあげる目やこころがなければ。 唐九郎は 何千も焼いたうちの、 これとおもう一点を残し、全てを壊してしまった。 
  いつか 絵を描くことは生きることに値する と読んだ。 鬼気迫る陶芸もおなじ。
 「古い窯の発掘調査をし、 膨大な資料を調べあげ、 権威も常識もくつがえした野人、 著した「陶器大辞典」のこと」 すべてが昇華される作品の群れ。 鳥肌が立ちました。 余計なことばはいりませんね。 どれをとるか 迷いますがご覧ください。  

    

  志野茶碗「鬼ヶ島」  唐九郎

 形、大きさ、厚み、肌合い、色。 縁の曲線。 量感。

  これを日本一の茶碗と言ったひとがあって 「桃太郎」 とつけたがった。 その銘は 既にほかにあったそうで 鬼ヶ島になる。「唐九郎のやきもの教室 新潮社」

  ほか 唐九郎の 唐津茶碗が好み。     「唐津片口水指 銘 緑野リョクヤ」 
「絵唐津向付」 

     

   志野茶碗 「氷柱」 
            唐九郎

  つらら… つかの間にきえてしまうもの。 禅の修行が一番厳しい季節である冬に、 形があってなきがごときもの…
  (銘をめぐって 唐九郎)


    「鼠志野茶碗」  重 

     藍と 寂朱のいろ 

     窓にぬける景色
              好きです。

 

 
  展示の中に  boa!さんの所蔵品をみつけました。 

  「志野水指」   重

 やさしい丸みのある姿、 近づいて 角度をかえて。ふわり、やわらかな乳白に貫入が走り、 錆朱が見えかくれ、 陶工のこころ模様を浮かべます。 身近におかれ、季節ごとに醸しだす羨ましき空間を想像しました。 愛らしい耳たぶ。 

      -☆-

柳や花、蕪などあしらう、 草木の素朴な線描、 勢いのある剛い線に託された想いを重ねます。こころに余裕がなければ生まれない遊びや形。 釉薬による変化を楽しみ、 無造作にみえる芸術の、 作家の葛藤の痕をたどりました。 篦で削り、 盛り上げたりする、 自然に走ったような線 …こころのうちを覗きます。 触れてみたいけれど…  しばらく、 観る力を蓄えていかないと。
  伝統を超え、父を超え、祖父を超え… 三代の響き合いが楽しみでした。 
どことなく似てると思ったりしながら。           

    
    黄瀬戸花器
   高宏

  これに 大きな枝ものを活けたい。
        裾に 野草など散らして

     モダン、 若いエネルギー 

           -☆-

 レストラン「ヴォワ・ラクテ」のランチも美味しく。 胃が小さいひとにも、 ほどよい量です。

 午後の庭園を眺めながら クロムツのソテーはサフランソースで香りよく、 その黄色は木漏れ陽にとても映えました。
  夜ともなれば 満天の星でしょうね。

  boa!さん

  素晴らしい 一日をありがとうございました。

 学習も blogのおつきあいも NETのおかげです。  帰りは 大使館の間を抜けて 鳥居坂をくだり中学校を垣間見て、 麻布十番稲荷神社まで吹き飛ばされる。 とても偉い蛙さんに遇いましたよ。

    

コメント (4)
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