《原作》 マヌエル・プイグ
《脚本》 テレンス・マクナリー
《作曲・作詞》 ジョン・カンダー&フレッド・エッブ
《振付》 名倉加代子 平山素子 《映像》 奥 秀太郎
○出演者 モリーナ / 石井一孝
蜘蛛女・オーロラ / 金 志賢
ヴァレンティン / 浦井健治
モリーナの母 / 初風 諄
刑務所長 / 今井朋彦
マルタ / 朝澄けい
ガブリエル・囚人カルロス / 縄田晋
看守マルコス / ひのあらた
看守エステバン / 田村雄一 アウレリオ・囚人ライモンド / 照井裕隆
囚人フェンテス / 笹木重人
囚人エミリオ / 長内正樹
囚人・ダンサー / 辻本知彦
Story
ファシズムが台頭する南米の刑務所。
ここで同房となった、若き政治犯ヴァレンティンと、映画を愛するゲイのモリーナ。
価値観も生き方もことごとく違う二人は激しく対立する。
が、極限状態の中で共に過ごすうち、二人は次第に打ち解けていく。
モリーナが大好きな映画の話しで、わずかな楽しみをわかちあう二人。
しかし、モリーナは刑務所長から、仮出獄と引き換えにある取引をもちかけられていた・・・
モリーナが心の支えとする憧れの映画スター“オーロラ/蜘蛛女”が妖しく冷たく彼の人生を繰っていく・・・・。
2007年の公演では、蜘蛛女を朝海ひかるさんが演じ、人間離れした美しさで魅了されましたが、今回はCATSのグリザベラで圧倒的な存在感を見せていた金 志賢 さんの蜘蛛女の糸にすっかりからめとられてグルグル巻きになってきました。
すーごかった~
南米の暗く恐ろしい刑務所でいたぶられ血だらけの政治犯ヴァレンティ・浦井くんと、悲しくはかないゲイのモリーナ・石井さんの切なすぎる愛。石井さんの歌はものすごく久しぶりでしたが、うまいな~・・・どうしようもないような悲しみが心が痛いほど伝わってきました。髪に赤いパッチン止めした石井さんのあまりの熱演に、(特に、おひざと肩の動きが女の子~)浦井君がちらっと素にもどって笑ってたとこ発見。
どうしようもない閉塞感、救いのない魂の前に浮かび上がる幻影は美しい映画スター・オーロラと、彼女が演じる蜘蛛女。蜘蛛女にキスされると死んじゃうのよね。
恐ろしい看守(こわすぎ~)と所長(今井朋彦さんマジ怖い)。ヴァレンティンの組織を一網打尽にするためにモリーナを利用するわけですが、最後にヴァレンティンがモリーナに託したのは組織への連絡なんかじゃなかったのですよ。そして、最期に倒れたヴァレンティンが見たものは、すべてが映画の中の出来事だったという夢の、そのまた夢という二重三重の仕掛け(’07公演ではあんまりすっきりしなかった)が今回ではっきりわかりました。切なくて苦しい結末。幻のようなモリーナの姿が輝いて見えました。そして蜘蛛女の怪しい美しさと圧倒的な歌声。こりゃもう、すごいとしか言いようがなかったです。金さんのダンスも歌もすごいと思ったら、韓国でも「シカゴ」とかで活躍されてたんですね。
そして、浦井君の成長ぶりにも圧倒されました。劇場中を支配する深い歌声。これからますます大きな役がつうんだろうなあ。。。って、次は劇団新感線「薔薇とサムライ」で謎の王子ですね。楽しみです。
前楽だったせいか、石井さんのご挨拶がありました。「明日は千秋楽で、決勝戦!って感じですね。今日は準決勝。『勝った!』って感じです。」と。ご本人も満足だったんだと思います。暗い作品だからなーと、スルーしようかと思ってましたが、行ってよかったです。また、かなり後方席でしたが、首から胸にかけてのすごい傷や手の甲の根性焼き、血だらけの顔や袋をかぶせられた囚人など、苦手な描写もあったので、遠目で全体を見通せてよかったかも。照井くんや辻本さんたち蜘蛛女ダンサーズも本当に見事でした。