pippiのおもちゃ箱

舞台大好き、落語大好き、映画大好き、小説大好き、猫大好き!なpippiのつれづれ日記です。

ベッジ・パードン@世田谷パブリックシアター2階B列センター

2011-06-28 22:10:11 | 観劇/コンサート

作演出: 三谷幸喜

出演: 野村萬斎/深津絵里/大泉 洋/浦井健治/浅野和之

 


<あらすじ>
文豪・夏目漱石が、明治政府からの命を受け、
文部省第1回給費留学生として、英国・ロンドンへと旅立ったのは、明治33年(1900年)のこと。
出発直前まで、熊本第五高等学校(現・熊本大学)で教鞭をとっていた漱石(本名:金之助)は、
この時すでに33歳。
身重の妻・鏡子と幼子を残しての2年間の単身留学は、
大きなカルチャーギャップと生来の神経症的な性質もあいまって苛酷極まりないものであった・・・
という定説だが、彼がロンドンで綴った文章には、度々<ベッジ・パードン>なる女性が登場する。
下宿の使用人だっという実在の女性は、
孤独な留学生・漱石にとって、どんな存在だったのだろう?
(シアターガイドより)






年に一度の人間ドッグの後、(バリウム飲んだのに・・)せっかくのお休みを無駄にしてはならじと三軒茶屋へ。前にもこんなことあったなあ・・


シス・カンパニーのこの舞台のチケット先行が震災の直後だったことを思い出します。本当にいけるのかなあと思いつつ、いくつかのチケットは手放しながらもこの舞台は観たいと。


さて、<ベッジ・パードン>とは。コックニー訛りのひどい女中アニーの聞き返し『I beg your pardon』(「すいません、もう一回言って?」をあだ名にした呼び名でした。


この物語は、もちろん熟達した(と、思っていた)自分の英語が英国でまったく通じないことに焦りを感じる漱石、コックニー訛りで「H」の発音ができないアニー姉弟、日本人なのにわけあって日本語で喋りたがらないソータロー、いろんな人たちの「コンプレックス」が渦をまいています。本当はそこそこ喋れるのにアニー以外の人の前では緊張してうまくコミュニケーションをとれない漱石。何故アニーの前ではスラスラと言葉が出るのか。それは結構残酷な理由でした。そういうことって誰にもあるけれど、そういうことだったのか・・・・と、アニーがさらりと言ってのけたひと言が結構胸にささりました。差別をするもの、されるもの。無意識の差別、思いこみ。


 

三谷さん特有のウィットに富んだ笑いに溢れてはいるものの、鋭い批判精神のようなものも感じる舞台でした。笑わせられながも「言葉」に対する三谷さんのこだわりを強く感じます。そう。大事なことは、きちんと「言葉」で伝えなければいけない。当初はもっとシリアス路線で考えていたらしいのですが、震災を受けて、とびきりのコメディにしてしまおう!と決意されたそうです。そういえば、前作「国民の映画」は余震で中止になった日もありましたっけ。ポスターのイメージそのままなのは萬斎さんと大泉洋さんだけなので、このポスター撮影の後、いろいろなことが変更されたんだろうなあと思います。

 


野村萬斎さんはもう、本当に気品に満ちて完璧な立ち居振る舞いに、張りのあるすばらしい声。大泉洋さんはあてがきみたいな面白くてずるくて悲しいソータロー(彼のコンプレックスもかなり悲しい)だし、深津さんは可愛くて切なすぎ。浦井くんは今までみたこともないような浦井くん。見せ場もありますよ~ミュージカルファンへの粋なサービスもにくい。その中にあって、浅野和之さんの怪演11役凄過ぎます!いえ凄いなんてものじゃありません。3時間で11役!「叔母との旅」では10役でしたが、(あの時は衣装替えなかった)今回は老若男女、人間以外にも・・・・瞬間移動もあり、もう、それを観るだけでもチケット代以上のものがありました。


この劇場の2階最前列はちびな私には目の前のバーが邪魔になった記憶がありましたが、2階B列センターはこの作品的にはベスト・ポジションのように思いました。アニーのお部屋は2階なので、1階と2階の窓が一度に開く場面もばっちり。舞台美術も本当に素敵で、英国の下宿屋さんをのぞいている気分になれました。


ル スコアール管弦楽団第30回演奏会@すみだトリフォニ‐ホール&JIN最終回

2011-06-27 21:28:22 | 観劇/コンサート

ワーグナー/舞台神聖祝典劇「パルジファル」第1幕への前奏曲

バルトーク/ヴィオラ協奏曲

マーラー/交響曲第10番(クック版)

指揮:高橋 勇太   ヴィオラ独奏:川崎 和憲


指揮者の高橋勇太くんとのご縁で、先輩たちと初めての錦糸町・すみだトリフォニ‐ホールへ。

いや、正直「錦糸町」というところは初めてで、あまり良いイメージは持っていなかったのですが、(キャ●レーとか・・・・)
なんのなんの、スカイツリーは目の前だし、駅前はファッションビルや東武ホテルなどが素敵に並んでいるわ、どうしてどうして洗練された町でした。

すみだトリフォニーホールもとてもすっきりした素敵なホールロビーには「永遠の子」の表紙を飾った舟越桂さんによる等身大のピアニストの彫刻

舞台正面にはパイプオルガンが設置されていました。

どの曲も素晴らしかったのですが、80分におよぶマーラーの交響曲第10番には圧倒される思いでした。クラッシックはその音のシャワーに身をゆだねる心地のよさに酔いしれるだけでほとんど知識のない私ですが、プログラムの解説を読み、この曲がマーラーの最愛の妻アルマとの生活、不貞を知った地獄のような苦悶、そしてやがて訪れる魂の平穏を表していて、しかもマーラー自身この曲の完成を見る前に最期を迎えるという、まさに自身の生きざまを表した遺言のような曲だと知って激しく心を揺さぶられた感じでした。絶叫のような弦楽、血の底から響くような鈍い太鼓。死への諦念、激情、憎悪、アルマへの愛、寛容・・・・

アルマという女性は物凄いまでの美しさとフェロモンの持ち主だったようで、マーラーの生前のみならず死後も次から次へと恋人だの愛人だのが現れたらしいです。そんな女に翻弄された天才の末路というにはあまりにも美しい静かで穏やかな旋律でしめくくられた曲で、なんだか「女ってすごいな」と、漠然と思いました。そんな風に男を振り回してみたいもんだ。無理だけど。

次回からは、クラッシックの場合ちゃんと予習をして客席に座ろうと心に決めました。今度の職場はクラッシックに縁があるので余計にね。

さて、東武ホテルでにぎやかにお茶して、夜はJIN~仁の最終回。

いや、凄かったです。全ての謎(10円玉の謎だけわかりませんでした)が解け、山本副長の見事なパラレルワールド解説も分かりやすかったし、何より咲さまの可愛いこと切ないこと。。。。胸がきゅーーーーんとしたでありんす。

先週斬られて亡くなった内野龍馬さんの深い声・・・・いや、不倫騒動だの離婚危機だの、そんなスキャンダルなどどうでもよくなるような素晴らしい演技。素晴らしい龍馬っぷり、素晴らしい感情表現に、本当に「まいりました!」って感じです。そういう雑音、本業の演技の凄さで、真っ向勝負で、すべて吹き飛ばしたよね。内野さん。これからも内野さんについて行きます。

・・・・・とかなんとか言いつつ、一番ほっとしたのは、恭太郎兄さんが上野のお山の彰義隊で玉砕しないですんだことでした。よかったね~仁先生が神田川を見下ろす屋上らしき場所は、順天堂病院ですかね。やはり。仁友堂のモデルだし。いや、本当に面白かった~原作では仁は2人に分かれて・・・という展開らしいです。ドラマでもそうして咲さまにも仁先生と幸せになってほしかったな。と、ちょっと思いました。

余談ですけど、この番組見てたおかげで山口祐一郎さんと堤真一さんのそれぞれの新作CMを立て続けに見ることができ、幸せ~な一日の〆となりました。


盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)@シアターコクーンG列上手(平場席)

2011-06-19 20:52:27 | 観劇/コンサート

四世鶴屋南北・作
串田和美 演出・美術              

薩摩源五兵衛実ハ不破数右衛門  中村 橋之助             
芸者妲妃の小万実ハ神谷召使お六  尾上 菊之助          
船頭笹野屋三五郎実ハ徳右衛門倅千太郎  中村 勘太郎                        
芸者菊野  坂東 新 悟                    
若党六七八右衛門  中村 国生                    
徳右衛門同心了心  笹野 高史                    
船頭お先の伊之助  片岡 亀蔵   
富森助右衛門/家主くり廻しの弥助実ハ神谷下部土手平  坂東 彌十郎

<あらすじ>
売れっ子芸者小万と夫の三五郎はある事情から大金が必要となり、仲間と共謀して小万に惚れ込んでいる浪人薩摩源五兵衛から百両を騙し取ります。裏切られたことを知った源五兵衛はその夜、三五郎の仲間五人を斬殺。三五郎夫婦は命からがら逃げ出して、復讐の影に怯えながら暮らしていましたが、ついに居場所をつきとめられ、小万は源五兵衛の手にかかり無残に殺されてしまいます。さらに三五郎が手に入れた百両は皮肉にも源五兵衛のもとへ。やがて、そもそもこの悲劇のはじまりは些細な行き違いだったことが明らかになります。
三五郎が金を必要としていたのは、父の旧主、塩冶の浪人不破数右衛門に討ち入りの資金として渡すためで、源五兵衛こそその数右衛門だったのです。お互いの顔を知らぬ不運からとはいえ主を騙し、復讐の鬼にしてしまったことの責めを負い、さらに源五兵衛の罪をも被ろうと三五郎は腹を切ります。源五兵衛は、巡り巡って自分のもとに届いた百両と、三五郎夫妻が手に入れていた高家の絵図面を携え、討ち入りへと向かうのでした―。(公式HPより)



ネタバレご注意

いや、この上 歌舞伎にまで手を出すと危険・・と思って控えていましたが、「たいこどんどん」で遭遇した先輩から「絶対みるべきよ。串田さんの歌舞伎面白いから!」とすっかりその気にさせられ、衝動的にチケットをとってしまいました。・・・・しかも平場席。おなかにはたっぷりの肉あれど、貧尻なためかなりキツイ体勢の体育座り3時間10分(休憩20分)でした。

先日このコクーンでちゃらキャラの若旦那を演じた橋之助 さんが、凄まじい色悪。最初は三五と小万にまんまと騙される人のいいお侍・・・かと思いきや、騙され裏切られたと知るや、怖ろしい復讐鬼となり・・・・まあ、こわいこと怖ろしいこと・・・絶対許してくれない非情の源吾兵衛。大量殺戮現場となる家がぐるぐる回って、どこまでも追いかけてくる源吾兵衛がマジ怖い。しかし、騙され奪われた百両が実は・・・というところから次第にこの話が忠臣蔵とつながっていくことが分かってくるのですが、そのぐるぐるめぐる因果の渦が切なくもあり悲しくもあり、そんなわけがあったのにあんなことまでしちゃったのか・・・と、雨にうたれ血だらけになり生首を懐に茫然と客席通路を行く橋之介さんは、本当に鬼気迫るものがありました。舞台に大雨が降るのは経験済みでしたが、通路にまでミストが降り注ぐのは初めて。私は通路近くの席だったので、いそいで配られていたビニールを使いました。

勘太郎さんと菊之助さんがきれいでした。最初からふたりともあんまり悪人には見えないのですが、「大義のため」なのでそれでいいのかも。(でも、小万さんはあそこまでひどい殺され方するとは・・・)小万さんの生首のそばでご飯を食べてる源吾兵衛さんが怖かったです。最後のシーンで、勘三郎さんが声の出演をしています。そして、串田さんのオリジナル演出と思われる幻想的な回想シーンが素晴らしかったです。笹野高史さんの時事ネタも笑いをとって、串田さんがどんなに笹野さんを信頼しているかがしのばれました。音楽もチェロを多用するなどステキな演出

ロビーは歌舞伎グッズやら人形焼き、そうめんにおだんごなど、縁日のようなにぎやかさでした。文化村地下ではドゥマゴパリ祭でワゴンがいっぱい出て、江戸とフランスが隣り合わせみたいで楽しかったです。

・・・でもやっぱり私ダメ。血しぶきに生首ムリ。今夜のJIN最終章前編も手術シーンは半分目をつぶってしまいました。。。。でも、龍馬さんステキでした。。。。合掌。


GGR グレンギャリー・グレン・ロス@天王洲銀河劇場1階E列センター

2011-06-12 18:31:49 | 観劇/コンサート


 


作=デヴィッド・マメット 翻訳=常田景子 演出=青山真治

<CAST> 石丸幹二  坂東三津五郎 今井朋彦  大鷹明良  加藤虎ノ介 テイ龍進  坂東八大


とある中華料理店の一室。
不動産会社の崖っぷちセールスマン4人の男たちがそれぞれのやり方でピンチを打開しようと画策している。
レヴィーン(坂東三津五郎)は、支社長ウィリアムソン(今井朋彦)に取り入って契約のとれそうな顧客名簿を入手しようと交渉中。
かつてはセールス・マシーンの異名を持ち、トップセールスマンだったレヴィーンも今では落ち目。必死だ。
別室には、モス(加藤虎ノ介)とアーロナウ(大鷹明良)の二人。モスは会社の経営方針に強い不満を持っており、仕返ししてやろうと顧客名簿を盗む計画を企み、気の弱いアーロナウを巻き込もうとその計画をほのめかす。
また別の席では、ローマ(石丸幹二)が隣の席のおとなしそうな客リンク(テイ龍進)に狙いを定め、言葉巧みに相手の気を引き契約をとりつけるチャンスを伺っている。

一夜明けて、不動産会社の営業所。顧客名簿や契約書、電話までもが盗まれ、すっかり荒らされている。
別室で事情聴取が進む中も、彼らのセールス競争は続く。
そして、ひとつの真実が浮かび上がる。(公式HPより)




ネタバレご注意


休憩なしの1時間50分。
いや、すごかったです。どの役者さんも力のある方ばかりできっと見ごたえあるだろうと予想はしてましたが、のっけから長台詞の応酬。いるよね~中華屋さんでランチしながら声を荒げてる営業のおっさんたち。そんな感じの幕開き。要は悪徳不動産セールスマンたちの舞台裏みたいな話で、よく電話かかってくるあれです。「選ばれた方だけに、これからぐんぐん資産価値のあがる土地のご案内をしております。」というあれ。一番のお目当てだった石丸さんが、その天性の王子キャラをかなぐり捨て、下品なこと強引なこと・・・カモになる恐妻家のテイ龍進さん(この人のうつむきかげんがハートをくすぐりました)を言葉巧みに釣りあげ、食らいついたら絶対離さない執拗さをみせます。「日本人のへそ」のヤクザさんなんてもんじゃないブラックな石丸さんがいました。しかし、ブラックでもなお輝く美しさ声の良さデスクに乗っかって足くんで凄んでるヤーさんスタイルでさえかっこいい


そして、実力派揃いのこの舞台で、やはり一番際だっていたのは坂東三津五郎さん。いるよね~こういう不動産屋さん。暴走しすぎて窮地に立たされる悲しい悪者の悲壮感が痛いほど伝わってきました。先日の「雨」の亀治郎さんもそうでしたが、まさに歌舞伎役者おそるべし。・・・・が、しかし、やはり翻訳物の業界劇っていうのは私にはちょっと難解でした。「えここでおわるの?」という声が聞こえてきました。まあ、ストーリーよりも名優たちのガチンコ勝負の見学を楽しんできたという感じでした。今井朋彦さんの立ち位置がどんどん変わっていくのもみどころです。


あ、オープニングは下手通路使いあります。この登場シーンだけでも石丸ファンにはたまりませ~ん





クローディアの秘密  E.L.カニグズバーグ

2011-06-11 20:15:53 | 私の本棚

時々お邪魔しているぷ~さんのブログで岩波少年文庫の話題が出ていたので、本棚からこの本をひっぱりだし、久しぶりに読み返してみました。

優等生のクローディアが長女である自分ばかりが用事をいいつけられる不公平や退屈でつまらない日常から抜け出すために、しまりやでもらったおこづかいをほとんどそのまま貯めているという弟ジェイミーをひっぱりこんで一緒に家出をし、「どこか大きな場所、気持ちの良い場所、できれば美しい場所に住む」ことを決めてN.Y.のメトロポリタン美術館に隠れ住み、ひょんなことからその時評判になっていた「天使の像」の秘密の鍵を握るというお話。

クローディアの家出の動機は変化していきます。最初は退屈な上にしっかりしていると言われる自分ばかりにいろんなことを押しつけられることへの不満。次は天使の像の秘密への好奇心。そして誰も知らない秘密を持つことで今までの自分から脱却したいという衝動。

作者が主人公を12歳に設定することにこだわった気持ちがわかるような気がします。世界は自分の前に大きく開いていて、手を伸ばせば何にでもなれるように思えるのに、大人はなんだかんだとうるさく干渉して自由な暴走を押しとどめようとする(と感じる)、子どもの自分と大人になりかけの自分がごちゃごちゃになる世代の入り口。

この作品が素敵なのは、クローディアがまだ12歳なのに素晴らしくクールな頭脳を持ち緻密な計画をたてて実行していること、またかなり突拍子もない冒険なのに、この姉弟の失踪についての親のパニックぶりがほんのちょっぴり、さらっとしか描かれていないところです。無理くり連れてこられた弟ときたら彼女の完璧な会計係として逃走資金の管理までやってのけるのです。クローディアはホームシックにもならず、堂々とこの冒険にのめりこみ、存分に好奇心を満足させて人間的な成長を自分のものにします。作者のカニグズバーグは3人のこどもの母親で、ピッツバーグの大学院で化学を専攻していた女性だそうです。いかにも理系なクローディア。きっと作者の少女時代もそんな感じだったんでしょうね。

44年も前に出版されたこの作品、皿洗機やドラッグ・ストアやホット・チョコレートサンデーなどの単語があたりまえのようにでてきます。日本のこどもたちはとってもおしゃれに感じたんじゃないでしょうかねえ・・・久しぶりの岩波少年文庫。わくわくしながら読了しました。そういえば、「メトロボリタン・ミュージアム」という歌、ありましたよね~あれは、この作品がモチーフらしいです。


雨@新国立中劇場1階10列センター 初日

2011-06-09 23:28:30 | 観劇/コンサート

      
ロビーで売っていた遅筆堂文庫一筆箋と、無料で配られていたシベールのラスク。

作◇井上ひさし 演出◇栗山民也
出演◇市川亀治郎 永作博美 梅沢昌代 たかお鷹 他


<あらすじ>
行方不明となっている奥州平畠の紅花問屋の旦那になりすまし、大金を手に入れようとする主人公・徳。江戸から東北へ進むにつれ変貌していく方言に戸惑いながらも、懸命に生きようとする徳の前に、美しい女・おたかが現れる。しかし、彼を取り巻く人々との滑稽なやり取りの果てには、恐ろしい謀略が待っていた……。


以下、ネタバレご注意

井上ひさしさん原作、亀治郎さん出演、栗山民也さん演出では行かねば!とGETしたチケットは10列でしたが、最前列が6列なので、実質5列目。目の前は通路だったのでかなりお得感がありました。

職場から直行したせいか一幕最初はちょっと舟こいでしまいましたが次第にひきこまれ、二幕目はどんでん返しと亀治郎さんの物凄い熱演にぐいぐいひきつけられました。
他人の空似から東北の紅花問屋の旦那に間違えられ、よこしまな気持ちで他人になりすまそうとした主人公。次第にその「他人」の生き方に心を動かされ、新しい自分になるための必死の努力をします。そして、「新しい自分」になりきるために、非情な手段で「本当の自分」の証拠をすべて消そうとします。そして、ようやく全てが整ったと思った時、とんでもないどんでん返しが。主人公・徳は、たぶん、心の底から新しい人生を生きたいと思ったんでしょう。そのために焦って自分の行く手を阻もうとする人を手にかける。。。そのことが最後の悲劇の場面で自分をアリ地獄の中に落とし込む結果を生む・・・せつなく悲しくなんと怖ろしい話なんだろう。。。と感じました。最初に主人公見つけるたかお鷹さんの存在が怖いです。最後のシーンでたかおさんが登場した時は、そうだったの?!と愕然 。単純な二役なのか、どうなのか?そうではないと考えると本当に恐ろしいです。ひさびさにわくわくする上質なミステリーを観た感じがします。

初日とあって、ロビーには俳優さんがいっぱい。笹本玲奈さん、山崎一さんは「日本人のへそ」つながりか。、高橋惠子 さんと根岸季枝さんと浅利陽介くんは並んで座っていました。花組芝居の加納幸和さんに、松方弘樹さんの弟の目黒祐樹さん、扇田先生に小田島先生など演劇評論家の先生も。この作品、かなりお勧めです。

ロビーでは山形のお米「つや姫」や紅花の種、井上ひさしさんと関わりの深いお菓子メーカー「シベール」のラスクが無料で配られていました
そういえば一幕終わりに近づいた時ぐらっと揺れが来て、一瞬客席がざわめきました。すぐにおさまりましたが、茨城で震度4だったんですね。最近地震は少なくなっていましたが、やはり怖いですね。この劇場は逃げにくそうなので結構こわいです。

 


レ・ミゼラブルSPバージョン@帝国劇場2階E列上手

2011-06-05 22:27:12 | 観劇/コンサート

ジャン・バルジャン:今井清隆  ジャベール:鹿賀丈史 アンジョルラス:岡幸二郎  マリウス:石川禅 テナルディエ夫人:鳳蘭
テナルディエ:斉藤晴彦 エポニーヌ:島田歌穂 ファンティーヌ:岩崎宏美  司教:林アキラ ほか

私にとっては今期最後、現演出で観る最後のレミゼとなりました。2階のはじっこからの観劇でしたが、もう、司教様が出てきてから泣けて泣けて・・・・ずっとグシュグシュ状態になってしまいました。さすがにベテランのプリンシパル揃い(コゼットは別)とあって、安心してみていられるうえにどのキャストも皆とっても嬉しそう(特にアンジョの岡さん)で、本当に出演者もみんなこの作品が大好きなんだという感じが2階の果てまで響いてきました。林アキラさんの全てを包み込むような司教様、心の底から意地悪そうな鳳蘭・斉藤晴彦のテナ夫妻、善人のかたまりのような今井さんのバルジャン。喜びに満ち溢れた岡さんのアンジョルラス、この間までジャベールやってたとは思えない若々しい石川マリウス。。。。そういえば、この舞台には、ジャベール経験者が4人もいるんですね~バリケードの前で鹿賀さん、岡さん、石川さん、今井さんのジャベール4人がそろうとなんだか不思議今井さんは最近バルジャンに徹していますが、レミゼラブル青版CD,今井ジャベールの「ご~み~を!始末しろ!仕事に戻れ!」の迫力が好きなので、いつか歌ってくれないかな~と思っています。

今日のジャベール、鹿賀さん。どの角度からも正真正銘の、存在するだけで信念の鬼警部でした。ジャベール役者はみな上手い人ばかりですが、あの「存在感」は誰にも負けないですね。

特筆すべきは岡さん。工場の場面にいつもいるよね~と思いつつ見ていたら、とんでもないメイクの岡さん発見。ちょっと前のCMで速水もこみちさんが元気なくして「速水いまいち」になってるのがありましたが、まさにあんな感じ。「速水いまいちメイク」の岡さん。あの日本人離れした鼻の高さは、間違いなく岡さんだと思うのですが、あまりに衝撃的で、ファンテーヌとすけべな工場長のやりとりそっちのけで岡さんばかりをオペラで追いかけてしまいました。結婚式の場面(アンジョの死後なので給仕姿)でも、テナルディエに投げつけたお金をひろいあつめて懐に入れたりの小芝居が満載で、面白くて目が離せませんでした

エピローグでバルジャンが召される場面はまたまた号泣。。。この場面では、コゼットの神田沙也加さんのパパへの遠慮のないすがりつきっぷりに泣かされました。今井パパの胸にすとーんと飛び込んでいく感じが良かったです。今井パパも本当に愛娘って感じで抱きしめて。ここは本当に泣きのツボなので、私のまわりのお客さんたちもごーごーと気持ち良いほど泣いてました。もちろん私も。

次にレミゼを観る時は新演出になっているわけですね。それもまた楽しみです。


「パイレーツオブカリビアン~生命の泉」みてきました

2011-06-04 23:36:07 | 映画/DVD

今日は娘と国際展示場のオンワードバーゲンに行き、まあまあの収穫。組曲や23区、J.Pressなどのおなじみのブランドがほとんどが30~50%引きながら、なかには80%引きなどの商品もあり、父の日にちょうどいいJ.PressのブルドッグポロなどもGETしてきました。

時間が余ったので、そのまま映画でもみようか~ということになり、「パイレーツ・オブ・カリビアン~生命の泉」にGO!
今回はキーラのご出演はなく、女海賊としてペネロペ・クルスが登場。メイクや役柄のせいもありますが、彼女ジャック・スパロウに似てますね。

海、海賊、謎の地図、聖杯、生命の泉、永遠の命、黒ひげ、片足の船長に英国王にスペイン人軍隊、誠実でハンサムな宣教師、人魚、、もう、このラインナップだけでストーリー展開の無理とかはいいや。。という感じになってしまいます。

今回は宣教師と人魚の恋のようなスイートなアクセントもあり、ますます楽しめます。宣教師プィリップ役のサム・クラフリンさんは元サッカー選手だそうですがシンデレラの王子様のような素敵な方でした。陸に上がった人魚をお姫様だっこですよ。

次回作はジョニー・デップの盟友、ティム・バートンが監督するという噂です。次もみなくちゃ。

し・・・しかし、伝説の海賊黒ひげよりも、ゾンビよりも、人魚軍団の襲撃が一番こわい。
シャーーーーーッ


映画「プリンセス・トヨトミ」

2011-06-03 21:31:26 | 映画/DVD

原作:万城目学   製作:亀山千広
<キャスト>
松平 元 - 堤真一/幼少の元 - 岡部太夢
鳥居 忠子 - 綾瀬はるか
旭 ゲーンズブール - 岡田将生
真田 大輔 - 森永悠希
橋場 茶子 - 沢木ルカ
長曽我部 - 笹野高史
真田 竹子 - 和久井映見
真田 幸一 - 中井貴一

1615年の大阪夏の陣で断絶したはずの豊臣家の末裔(まつえい)が今も生きつづけ、大阪の男たちは400年もの間その秘密を守り続けていた。国家予算が正しく使われているかを調査する会計検査院の精鋭3人は、ふとしたことからその真実を知ってしまい、大阪の公共機関や商業活動など、あらゆる機能が停止する一大事件に巻き込まれていく・・・・



「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」で知られる人気作家・万城目学の直木賞候補になったベストセラーの映画化。

いや、映画SP野望編あたりから映画館で流れていた予告編を観た時からものすごーく気になっていた作品でした。(もちろん堤さんが主演ということもありますけど)まず、設定が面白いですね。会計検査院の人が活躍する映画なんて初めてなのでは?私の職場にも定期的に監査が入りますが、緊張する感じがこの映画のとおり。
予算が適正に使われているかを精査するのは堤さん、綾瀬はるかちゃんに岡田くん。原作では綾瀬さんの役が男性、岡田くんの役が女性だそうですが、フランス人ハーフの「旭 ゲーンズブール 」なんていう名前が岡田君にはよく似合います。

堤さんはアイス好きの「鬼の松平」ですが、出だしの頃はいつも目がとろんとして眠そうだし、義務的に監査をすすめるだけのように見えるのに、大阪の「秘密の扉」を発見したあたりから表情がどんどん鋭くなっていくのがめちゃくちゃ素敵。出だしからあちこちに張られた伏線が謎解きの鍵となり、わくわくします。歴史好き、推理小説好き、堤真一好きにはたまらないです。奇想天外なファンタジーといってしまえばそれまでですが、中井貴一さんの誠実な演技には説得力満載で結構泣かせるし、笹野高史さん、江守徹さんなど、脇を固める人たちも豪華なだけでなくとっても楽しそうに演じていて、「まぼろしの大阪国」に、私もひきこまれそうでした。何より、「大阪国最大の宝」が危機的な状況に陥った時の大阪人のものすご~い団結力がすごい!圧巻です。ヒントは「いざ!鎌倉」ですかね。その辺に放置された自転車のカゴにひょうたんが入っていたら要注意です。

「ほかの人には見えないものが見えてしまう」というのもキーワードです。赤く輝く大阪城、富士山の麓に見える白い十字架。。。続編あるかも。

これから観る方、最初の「大阪夏の陣」の場面と、この映画の最後の場面を見逃してはなりませんよ!
玉木宏さん、宅間孝行さんもカメオ出演してます。玉木さんは鹿男つながりですかね。久々のコミカルなちょい役です。

万城目さんの小説も読んでみようと思います。


立川志らく一門会 特別編@渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール11列センター

2011-06-01 21:19:03 | 落語・講談

「志らくと一門精鋭の真打トライアル!」と銘打った落語会。渋谷文化総合センター大和田のホールは、震災翌日予定されていた「SWA」落語会が中止になった会場でした。行きたかったな~

何故「大和田」かというと、渋谷区立大和田小学校の跡地だからだそうです。

さて、今回の落語会はいつもとは違い、サブタイトルどおり志らく一門の実力派といわれる4人の二つ目、こしら、志ら乃、志らら、らく朝が15分ずつ落語を披露し、観客の投票と志らく師匠の点数とで家元・談志へ真打の推薦をしてもらうというものです。別に、この場で決まるということでもないらしいですが、なんというか、客席にも4人の身内さんがたくさんいるようで結構緊張感がみなぎっていました。

4人対決の前には、3人の前座 らく兵・らく八・らく太さんが立川流の必須科目の講談を5分ずつ。お題は「三方ヶ原」。でも、これがものすごく難しい。出だしのらく兵さん、途中で止まってしまい、四苦八苦。隣りのらく太さんが助け舟を出そうとするのを押しとどめ、なんとかつなげる。。。が、引き継いだらく太さんも善戦ながらいっぱいいっぱい。最後のらく八さんに至ってはしどろもどろになり、ついに志ららさんから「師匠がもうやめてくれって。」と止めが入って幕となりました。

さて二つ目対決のトップバッターは現役のお医者さんにして最年長(60代?)のらく朝「替り目」らく朝さんは本業を生かして健康落語などの創作を得意としているらしいですが、古典は今ひとつキレがなかったかな。

二番手は、志らく一門で最も頼りにされているらしい志ら乃くん「粗忽長屋」。年に4回(かな?)4つずつネタおろしの会を開いているだけあってかなり面白かったのですが、志らく師匠からはちょっと辛めの講評でした。

三番目はこしらさん。いかにも今時の不思議ちゃんな感じの方でしたが、意外に良いお声で、完全に自分の世界をもっている今までみたことのないタイプの落語家さんでした。好きかも。こしらさんの「看板のピン」よかったです。彼は被災地にも行って頑張ってきたとか。今どき風でも誠実さが伺えて好感度高かったです。

最後は志ららくんの「ちりとてちん」。ちょっと早口すぎな感じはしましたが、スピード感と全然気取りのないお人柄がにじみでて、とってもおもしろかったです。知ったかぶりしたために腐った豆腐にとうがらしを混ぜたとんでもないしろものを食べるはめになって、それでもなお「好物だもん。」と言っちゃうアホさかげんに爆笑でした。

仲入後は志らく師匠「親子酒」。やっぱり面白いのなんの。一門をひっぱっているだけありますね。何より安心して笑っていられます。

うろ覚えなので正確ではありませんが、らく朝さん59票+志らく採点55点、志ら乃くん177票+70点、こしらさん159票+60点、志ららさん117票+55点。真打発表は持越しのようでしたが、やっぱりこの中では志ら乃くんかな。何より落語に対してとてもひたむきな感じがしました。

いや、落語家さんがステップアップするというのは、本当に大変なんだな~と、つくづく思いました。

枠にはまらず、なんとなく落語に新しい風を吹きこみそうなこしらさんの噺を今度じっくり聴いてみたいな、と思いました。