作|ワジディ・ムワワド
翻訳|藤井慎太郎
演出|上村聡史
出演|中島裕翔、岡本健一、岡本玲、那須佐代子
渡邊真砂珠、伊達暁、相島一之、麻実れい
あらすじ
ニューヨークの図書館。ベルリン出身で遺伝学・統計学を学ぶ青年エイタンは、イスラム史を学ぶワヒダに一目惚れして声をかけてしまう。二人は瞬く間に恋に落ちた。
ユダヤ人のエイタンは、アラブ人のワヒダとの婚姻を認めてもらうため、両親を呼び「過越祭」の食事をともにするが、敬虔なユダヤ教徒の父ダヴィッドは交際を認めようとしてくれない。
過剰なまでにワヒダを拒絶する父ダヴィッドの出生に疑念を抱いたエイタンは、ワヒダとともに祖母レアの住むイスラエルへと向かいそのルーツを解き明かそうとする。だが二人は、爆弾テロに巻き込まれてしまう。病院に運ばれたエイタンのもとに、父ダヴィッドと祖父エトガールが駆けつけてくる。二人は久しぶりに母であり妻であるレアと再会を果たすことになるのだが…。
いや、重い舞台でした。麻実れいさん、中島裕翔さんに惹かれてチケットとりましたが、ここまですごい内容とは。現在のパレスチナ問題を正面から扱っている感じがして、鳥肌がたちました。
コロンビア大で学ぶエイタンとワイダが図書館で出会い、ほとんど一目ぼれする胸キュンなプロローグから一転、ワヒダの出自をめぐり物語はドロドロに。そして爆弾テロに巻き込まれ生死をさまようエイタン。。さらにエイタン父の出生の秘密がからみ、アイデンティティー崩壊の嵐・・・まさに嵐のような物語でした。気が遠くなるほどに果てしなく根の深いこの紛争によって、恋人同士が、親子が、心も体も引き裂かれズタズタにされてゆく様を3時間息もつかずに観てしまいました。夫の出自を義父によって明かされた妻、那須佐代子さんの慟哭に圧倒され、息子の秘密を飲み込み、隠し通してきた父の感情の爆発に圧倒され、恋人が自分の本当の姿を見つけ、離れていくことを呆然と見つめるしかなかったエイタンに涙。この恋がなければこの家族の秘密が暴かれることはなかったのか、いや、暴かれることは必然だったのか。。重い秘密を抱えて生きてきた祖母、麻実れいさんの存在感にも物凄いものがありました。全てを失い、崩壊寸前になりながらも力強く立ち上がろうとするエイタン、中島裕翔さんの姿が焼き付いています。
中島さんファンで何度もこの舞台を見に来ているらしいコアなファンの方々が大勢いらっしゃいました。(私のお隣は、飲酒しながらギョーザを召し上がったとおぼしきおじ様で、その強烈な匂いといったら・・・長い観劇歴の中でも初めての苦行でしたなんかの罰ゲームか
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